お薬のこと

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非糖尿病者で肥満者にセマグルチドを使用しても心血管イベントを減らしますか?PMID: 37952131

N Engl J Med. 2023 Nov 11. PMID: 37952131

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37952131/

【論文のPECO】
P:糖尿病の無い肥満者 45歳以上 BMI27以上 心血管疾患あり
E:セマグルチド 
C:プラセボ
O:MACE(心血管死亡率、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中
【結果】
6.5%vs8.0% 
HR:0.80(0.72-0.90)
心血管死亡率 HR:0.85(0.71-1.01)
心不全複合 HR:0.82(0.71-0.96)
全死亡 HR:0.81(0.71-0.93)

【背景】
世界で肥満による死亡者は約400万人(2015年)程度いると推定されており、それらの原因は、心血管イベントによるものとされています。GLP-1作動薬は、体重減少という効果を示す事は幾つかのエビデンスが得られているが、その体重減少効果によって心血管イベントに対する効果は不明であった、そこで、非糖尿病者でセマグルチドにおける心血管イベントにどの様な影響を受けるのか調査した研究である。
【コメント】
心血管リスクのある集団に使用することで、イベント発生リスクが抑制されることが示された。NNTで計算すると66.7とやや大きいと思える。また、個々の評価項目をみても、全死亡率や心血管死亡率をも抑制する傾向がある事が分かった。
今回の試験でBMI≧27以上を対象にしたが、集まった被験者の平均BMIは33であった。日本人の平均BMIは男性23.80、女性22.50(国民健康・栄養調査 2019より引用)とされているので、これを超える集団がどのくらいいるのかによって日本での適正使用についての可否を考えることも出来るのではないでしょうか?

ただ、世界に目を向けてみると米国ではBMI≧30を超えている集団がいることは確かなようです。(参考:https://honkawa2.sakura.ne.jp/8802.html) 
また世界的にもBMIの上昇は見られているようです。(参考:Lancet. 2016 Apr 2;387(10026):1377-1396.PMID: 27115820) こういった集団の心血管イベントを抑制する目的としては、良い方法なのかもしれません。