お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

急性心筋梗塞の後にエンパグリフロジンを使うと死亡率は減りますか? EMPACT-MI試験 PMID: 38587237

N Engl J Med. 2024 Apr 6.PMID: 38587237.(EMPACT-MI)

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov


【論文のPICO】
P:無作為化前14日以内に急性心筋梗塞 LVEF<45%+うっ血  n=6522
I:エンパグリフロジン 10㎎/日 n=3260
C:プラセボ n=3262
O:心不全入院または、何らかの原因による死亡
【結果】
HR:0.9(0.76-1.06)P=0.21
心不全入院 HR:0.77(0.60-0.98)
全死亡 0.96(0.78-1.19)
<二次>
心血管死亡率 1.03(0.81-1.31)
<背景>
STEMI 74.3%
NSTEMI 25.7%
LVEF:35-45 52.7%
過去の心筋梗塞歴:13.0%
RR:0.90
ARR:0.9
NNT=1/0.009=111.1
【コメント】
主要評価項目は、イベントリスクを10%下げる傾向があるが、統計学的な有意差は得られなかった。
また個々のアウトカムを見てみると、ソフトエンドポイントである心不全入院は23%減(有意差あり)、ハードアウトカムである全死亡率は4%減(有意差無)とのことであり、心不全入院の方に主要アウトカムが引っ張られている印象を受ける。
本解析の集団は、平均年齢63.6歳、DAPTが84.6%のため過去にPCIを経験している可能性がある。更にスタチンは88.9%、基礎疾患は、DMが31.9%くらいちょっと、高血圧は半分以上(69.6%)の人 eGFRは60を切っている人が22.4%くらい。心機能的にはHFrEFっぽいひとが半分近くだろうか。でも血圧は極端に高くないし、脈拍も早くない印象であった。

過去に心血管イベントがあり、既に投薬を受けている60代以上の方が急性心筋梗塞を起こした場合にエンパグリフロジンを受けた場合に111.1人1人の割合で心不全入院を23%減らせることが出来るという感じだろうか。
本解析の結果では、あえてエンパグリフロジンを急性心筋梗塞後に積極的に投薬する理由には遠いのではないだろうか。ただ、目立った有害事象もなかったため、HFrEFの人であれば、導入を検討しても良いのかもしれない。