お薬のこと

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クロルタリドンとヒドロクロロチアジド どっちが心血管イベントを減らしますか? PMID: 36516076.

N Engl J Med. 2022 Dec 29;387(26):2401-2410. PMID: 36516076.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36516076/


【論文のPECO】
P:退役軍人 65歳以上 高血圧 
E:クロルタリドン
C:ヒドロクロロチアジド
O:複合(致死的でない心筋梗塞脳卒中、入院に繋がる心不全、不安形狭心症に対する緊急の動脈血行再建術、非がん関連死亡)
T:非盲検、無作為
【結果】
HR:1.04(0.94-1.16)P=0.45
心筋梗塞 HR:1.01(0.80-1.28)
脳卒中 HR:1.00(0.74-1.36)
心不全による入院 HR:1.04(0.87-1.25)
不安形狭心症に対する緊急の動脈血行再建術 HR:1.54(0.77-3.10)
非がん関連死亡)HR:1.01(0.88-1.17)
総死亡率 HR:1.00(0.87-1.13)
カリウム血症 HR:1.38 (1.19–1.60)
【コメント】
本邦ではクロルタリドンは現在使用されていませんが、(2008年にノバルティスから発売されていたクロルタリドンは突如販売中止になっています。)
ALLHAT(JAMA. 2002 Dec 18;288(23):2981-97.PMID: 12479763)を始めとする様々な試験で心血管イベント抑制の結果が出ており海外では使用されています。
ヒドロクロロチアジドは、単独での使用頻度は少ないものの、配合剤として使用されているシーンは多々あります。代わりに単独で使用されているサイアザイド系利尿薬としては、インダパミドかと。

この2剤が今になって比較されたのは、クロルタリドンの方が優れていると考えられているのに対して、処方の現実は、ヒドロクロロチアジドの方が多かったという背景に基づいています。
つまりリアルワールドの世界との差がどこにあるのかを探るのが目的だったと考えられます。

クロルタリドン投与は低カリウム血症発生が主な懸念材料でしたが、その通りにクロルタリドン群の方が多かった。
しかしながら、クロルタリドン群は投与前既にヒドロクロロチアジドを使用している必要があり、その切り替えにより発生した可能性や
更にクロルタリドンに切り替えた集団は、カリウム値測定が頻回になりバイアスが発生した可能性も示唆されるでしょう。