お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

統合失調症の患者さんは、CVDのリスクはどうですか? PMID: 41008334

Brain Sci. 2025 ;15(9):974.  PMID: 41008334

The Association Between Schizophrenia and Cardiovascular Diseases: A Retrospective Cohort Study of Primary Care Routine Data in Germany


【論文のPECO】
P:データベースDisease Analyzer (IQVIA) にある18歳以上の集団 N=75,162
E:統合失調症患者 N=12,527
C:非統合失調症患者 N=62,635
O:心血管疾患(狭心症、心不全、急性心筋梗塞、慢性虚血性心疾患、心房細動)
試験デザイン:後ろ向きコホート
統計分析:傾向スコアマッチング、標準化平均差(SMD)、CVDの累積発生→ロングランク検定、特定のCV疾患と統合失調症の関連性→単変量COX回帰分析(ハザード比)
【結果】
狭心症:HR:0.78(0.63-0.96)
心不全:8.3%vs6.5%  HR:1.33(1.20-1.48)(P<0.001)
急性心筋梗塞:HR:0.97(0.76-1.25)P=0.832
慢性虚血性心疾患:HR:0.91(0.82-1.02)P=0.102
心房細動:4.5%vs5.8% HR:0.77(0.67-0.89)(P<0.001)
limitation:外来診療に限定されている、精神科診療所からのデータが欠落、重症統合失調症患者が過小評価されている可能性、喫煙や飲酒、食習慣、身体活動、家族構成などの交絡因子が含まれていない

【コメント】
心不全は男女ともにリスクが高まる可能性が示された。
統合失調症の患者は、糖尿病や高血圧など様々な病気が併存していることが多く、それらが重なり合ってリスクが高まっているだろう。

花粉症の点鼻薬、どれを選ぶ? PMID: 37288109

 

Front Pharmacol. 2023 ;14:1184552. PMID: 37288109

Comparative efficacy and acceptability of licensed dose intranasal corticosteroids for moderate-to-severe allergic rhinitis: a systematic review and network meta-analysis

【論文のPECO】
P : 中等症から重症のアレルギー性鼻炎患者(計26件のRCT、9,527名)
季節性アレルギー性鼻炎(SAR):13研究(5,134名)
通年性アレルギー性鼻炎(PAR):13研究(4,393名)


E: 各種点鼻ステロイド薬(INCS)の通常用量
モメタゾンフランカルボン酸エステル(MF)、フルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)、ブデソニド、シクレソニド(CIC)、フルチカゾンプロピオン酸エステル、トリアムシノロン(TAA)など


C : プラセボ、または他の点鼻ステロイド薬


O: 主要評価項目: 総鼻症状スコア(TNSS)の変化、および認容性(副作用等による試験脱落率)

 

試験デザイン:ネットワークメタアナリシス

 

【結果 】
SAR:MF>FF>CIC>FP>TAA
PAR:BUD>FF>TAA>CIC>FP>MF

limitation:結果は、患者さんの自己申告によるものなので思い出しバイアスや、過少評価などが考えられる。

実施期間が2~52週間と試験によって均一化されていません。 多分季節性と通年性の2つを見ているので、どうしてもそうなってしまいますね。

実施している地域がまばら。日本もありますが、アメリカやヨーロッパでは花粉はどのくらい飛散しているのか分かりません。地域差による症状の重症度も変わってくるかもしれないし、杉とかヒノキとか種類がどうなのか、この辺りが不明です。

 

【コメント】

日本でのステロイド点鼻薬の販売状況からみると、季節性アレルギーならMF(アラミスト®)、通年性アレルギーならFF(フルナーゼ®)がいいのかも。今の時期で点鼻がめんどくさい人ならこの論文から導くならFFがおススメかも。

ちなみに現在の販売(OTC)では、FFが売っていますので、使ってみてコントロール出来るなら忙しい合間を縫って受診しなくてもいいですよね。 スイッチOTC万歳!!

私も使っています(COIはありません)

 

ベムペド酸について めも PMID: 33514449 PMID: 36876740 PMID: 40159243 PMID: 36876740

Atherosclerosis. 2021;320:122-128.PMID: 33514449
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33514449/
P:高コレステロール血症患者
I:トリプル療法(ベムペド酸180㎎、エゼチミブ10㎎、アトルバスタチン20㎎)
C:プラセボ
O:6週間後のベースラインからのLDL-C変化
【結果】
-63.6% vs -3.1% 差:-60.5%(-68.0 to -53.0)P<0.001
【コメント】
差がありすぎ。ベムペド酸の純粋な効果の判断がつきにくい。

CLEAR Outcomes 
N Engl J Med. 2023 ;388(15):1353-1364.PMID: 36876740
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36876740/
P:スタチン不耐性(スタチンの許容できない有害作用のため服用不能または服用を拒否した患者)、心血管疾患を持つ、または高リスクの患者
I:ベムペド酸(180mg 1日1回経口投与)
C:プラセボ
O:主要な心血管有害事象(MACE)**の4要素複合(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、または冠動脈血行再建術)
【結果】
HR:0.87(0.79-0.96)
心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中(3-MACE)HR:0.85(0.76-0.96)
MI HR:0.77(0.66-0.91)
stroke HR:0.85(0.67-1.07)
心血管 HR:1.04(0.88-1.24)
全死亡 HR:1.03(0.90-1.18)
【コメント】
ベムペド酸で3つないし4つのMACEは有意に減少傾向だが、それは冠動脈血行再建術の件数に引っ張られている可能性もあり。
心筋梗塞はMACEでは、非致死的を組み入れているが、ここのアウトカムでは致死的と非致死的の両方のため評価に課題評価に注意を。 心血管死亡と全死亡は差が見られなかった。

Circ J. 2025 Jul ;89(8):1256-1265.PMID: 40159243
P:LDL-Cコントロール不十分な日本人患者 n=96
I:ベムペド酸180㎎ 1日1回
C:プラセボ
O:12週間後のベースラインからのLDL-C変化
【結果】
-25.25% vs -3.46% 差:-21.78(-26.71% to -16.85%)P<0.001
ベースライン:atorvastatin, pitavastatin, rosuvastatin(68.8%)
LDL:120以上140未満(36.5%)

【コメント】

アウトカムが代用のアウトカム。ベムペド酸の単独の効果というよりは、スタチンと併用した場合の効果とみてもいいのでは。
LDLが120-140の集団が最も多く含まれていたとこから、コントロール不良という定義がアブストからだと不明。 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版でみると、ハイリスク群(急性冠症候群や家族性高コレステロール血症など)の二次予防では100㎎/dLを目標としていることもあるため、120-140台でも十分に高いと判断されているのだろうと想定される。

 

N Engl J Med. 2023 ;388(15):1353-1364. PMID: 36876740
P:スタチン服用不可/希望しない人
I:ベムペド酸 
C:プラセボ
O:心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中(=3MACE)、冠動脈再建術(=4MACE)
【結果】
11.7%vs13.3%
HR:0.87(0.79-0.96)P=0.004
3MACE HR:0.85(0.76-0.96)P=0.006
MI HR:0.77(0.66-0.91)

2型糖尿病における GLP-1RA の全健康アウトカムにわたる有効性と安全性 PMID: 41255131

Diabetes Obes Metab. 2025 .PMID: 41255131

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41255131/


【論文のPECO/PICO】

P:2型糖尿病の患者
E/I:グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1RA)の使用
C:GLP-1RAを使用しない治療(例:プラセボ、または標準的な糖尿病治療薬)
O:全健康アウトカム(心血管、腎臓、代謝、腫瘍、消化器、その他を含む65の独自のアウトカム)


【結果】

心不全 eOR:0.71(0.64-0.79)
末梢動脈疾患eOR:0.75(0.67-0.84)
腎臓特有の複合eOR:0.76(0.66-0.87)
腎症eOR:0.74$(0.61-0.92)


【コメント】

おおむねGLP-1RAによる心・腎のリスク低下は示された。 
SGLT-2iのように包括的なケアとして利用される可能性もあるだろう。

如何せん設定アウトカムが多岐に渡っているため評価のブレがきになるところではある。

SGLT-2阻害薬は、術後のAKIを減らしてくれますか? PMID: 40980648

Kidney Int Rep. 2025 Jun 25;10(9):3181-3191.PMID: 40980648

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40980648/

【論文のPECO】

P:韓国の第三次医療機関で大手術を受けた糖尿病患者
E:SGLT-2iあり
I:SGLT-2iなし(DPP-4i)
O:術後AKIの発生頻度
後ろ向きコホート、傾向スコアマッチング

【結果】

術後AKI発生率 SGLT-2i群::11.9%、DPP-4i群:15.1%
調整OR:0.699(0.528-0.918)P=0.011
心不全患者の術後AKI 24.8% vs 35.3% OR:0.602(0.346-1.030)
心血管手術ありの術後AKI 29.3% vs 36.2% OR:0.729(0.528-0.999)
limitation:アジア人限定であること、糖尿病が無い集団(心不全やCKDのみの場合)、傾向スコアマッチングの為交絡因子の排除の限界

【コメント】

SGLT-2iの使用は初期にGFRの低下が起こる。その影響でAKIが起こる可能性について懸念がある。先行研究では、長期のSGLT-2iの使用者はDPP-4i使用者よりもAKI関連の入院や透析を必要とするAKIイベントが少ないという報告がある。そこで術後AKIの発生率について調査された。
結果としてSGLT-2iの使用は、術後AKIの発生率が約31%低下する可能性示された。またサブ解析では、心不全患者では約40%の低下がみられれるものの有意ではなかった。代わりに心血管手術の既往がある集団では有意に約28%程度低下する可能性が示された。 (心不全と心血管手術を統合すると約57%低下するかも)
ただし、この解析は韓国で行われておりアジア人限定の可能性や糖尿病が無くてSGLT-2iの使用をしている場合の術後AKIの効果は不明である。 また傾向スコアマッチングを利用しているため交絡因子の排除には限界があることが本研究のlimitationかと思われる。

2型糖尿病の人で、短期のNSAIDs使用は心不全の入院リスクを高めますか? PMID: 37045515

J Am Coll Cardiol. 2023 ;81(15):1459-1470. PMID: 37045515

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37045515/

【論文のPICO】

P:2型糖尿病 18-100歳 n=331189
I:初回心不全入院前に28日NSAIDs曝露あり
C:NSAIDs曝露無し
O:心不全入院発生率
除外:心不全、リウマチ性疾患、糖尿病診断120日未満、長期のNSAIDs曝露
イベント発生:(中央値)5.85年
後ろ向きコホート

【結果】

主要評価項目 28日間曝露OR:1.43(1.27-1.63)
セレコキシブ OR:1.71(0.91-3.31)
ジクロフェナク OR:1.48(1.10-2.00)
イブプロフェン OR:1.46(1.26-1.69)
ナプロキセン OR:0.97(0.59-1.60)

14日間曝露 OR:1.41(1.20-1.63)
42日間曝露 OR:1.36(1.22-1.53)
<サブグループ解析>
80歳以上 OR:1.78(1.38-2.28)
Triple Whammy OR:1.41(1.16-1.71)

【コメント】

2型糖尿病とNSAIDsの使用はそれぞれで独立した、心不全リスクを高める傾向がある。
このような基礎的疾患を持っている人が風邪などで思わずNSAIDsを使用した場合、心不全リスクとなりうるのだろうか。
新規に2型糖尿病と診断されて120日以上経過した集団をベースにデータベースを用いて解析をしている。
結果として、28日間(ほぼ1カ月)のNSAIDs使用で、心不全による入院リスクは高まる傾向がある事が明らかとなった。
また、14日間と42日間で解析しても同様に高まる可能性が示唆された。 
また、NSAIDsの種類別に解析した場合、ジクロフェナクとイブプロフェンが有意に、セレコキシブとナプロキセンでは有意でない結果となった。 そしてTriple Whammyは、ACE-阻害薬やARB(いわりゆるRAS系薬)と利尿薬とNSAIDsの3種を併用した時に腎機能に影響(ダメージ)を与えAKI(急性腎障害)を引き起こすとされている組み合わせについても、心不全による入院リスクは14日間曝露した時と同じくらいのリスクがあるのかもしれない。

 

GLP-1作動薬は腸閉塞リスクを高めますか? PMID: 40471297

Acta Diabetol. 2025 Jun 5.PMID: 40471297

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40471297/

 

【論文のPECO】

P:2型糖尿病患者
E:GLP-1作動薬
C:その他の糖尿病薬(SGLT2阻害薬、メトホルミン、スルホニル尿素薬、チアゾリジン系薬、DPP-4阻害薬、インスリン
O:腸閉塞リスク
5年間、多施設共同後ろ向きコホート

 

【結果】

5年フォロー後    
SGLT2 HR:1.01(0.91-1.13)
メトホルミン HR:1.02(0.89-1.17)
Su剤     HR:0.95    (0.86-1.05)
チアゾリジン系 HR:0.88(0.78-1)
DPP-4阻害薬 HR:0.91(0.83-0.99)
インスリン HR:0.66(0.59-0.74)

 

【コメント】

今回は、8月のDSU(医薬品安全対策情報)  において、GLP-1作動薬の腸閉塞リスクについて、【重要】として速やかに改訂することが掲載されています。
しかし、このリスクについては、リスクが高まるものと変わらないものの両方が報告されています。

 

GLP-1RAの腸閉塞リスク
差あり
PMID: 32418731
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32418731/
PMID: 34587280
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34587280/
差なし
PMID: 37716613
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37716613/
PMID: 40471297

医薬品・医療機器等安全性情報 No.422 を参考に見てみると、セマグルチド(遺伝子組換え)で7例の報告ありました。 こういった報告が増え、積み重なった結果改訂に繋がったのではないでしょうか。