お薬のこと

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SGLT-2 阻害薬は 高カリウム血症は起こしやすいですか? PMID: 35394821

Circulation. 2022 May 10;145(19):1460-1470. PMID: 35394821

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35394821/

【論文のPECO】
P:心血管リスクの高いT2D、K値が低下しているCKD
E:SGLT-2i(エンパグリフロジン/ダパグリフロジン/カナグリフロジン/エルツグロフロジン)

C:プラセボ
O:血清 K 値>6.0mmol/L になるまでの時間
T:メタ分析
評価者バイアス:不明
出版バイアス:PubMed and MedLine
元論文バイアス:不明
異質性:P不均一性=0.71→0.05より小さい為異質性無しと判断
【結果】
HR:0.84(0.76-0.93) I2=0.0%
P不均一性=0.71
糖尿病の有無に関わらない HFrEF:HR:0.82(0.75-0.90)

<解析に使用したRCT>
①EMPA-REG OUTCOM(エンパグリフロジン)
CANVAS-Program(カナグリフロジン)
③DECLARE-TIMI58(ダパグリフロジン)
④VERTIIS-CV(エルツグロフロジン)
⑤CREDENCE(カナグリフロジン)
⑥DAPA-HF(ダパグリフロジン)

<各試験の結果>
①0.83(0.67-1.04)
②0.89(0.67-117)
③0.67(0.47-0.95)
④0.90(0.74-1.09)
⑤0.77(0.61-0.98)
⑥0.88(0.71-1.09)

【コメント】
カリウム血症は糖尿病やCKDの患者に発生しやすいと言われています。(1)(2)
現在は、RAS 阻害剤や MRA(または、MRB)が CKD の進展を阻害することに有効であるとされていますが、これらの薬はいかんせん高カリウム血症を引き起こしやすいのです。実際に MRA のフィネレノンの発生率は、約2.1倍(3)約2.6倍(4)とされています。

本解析に含まれた 6 つの試験各々の結果を見ると、DECLARE-TIMI58 と CREDENCE だけが統計学的な有意差を示しているが、異質性は無いと判断が出来るため2つの結果に牽引された結果ではないだろうと推測します。
ただ…フィネレノンの高カリウム血症のリスクと直接を比較していないため判断が難しい。しかし、現在揃っている結果を引用するならば SGLT-2i の方が軍配が上がるであろう。
ここの部分がフィネレノンの2つの試験のイマイチパっとしない所かもしれない。

 

RAS 阻害薬、MRA と同様に CKD の進展を防ぐ効果があると注目されている薬が SGLT-2i です。SGLT-2i は MRA の様な高カリウム血症の発生率はあるのか?
また、あればどのくらいの発生率があるのか把握しておくことは、今後の服薬支援、薬の使い分けを考慮するときの判断材料になりそう。

 

参考:

1.Kidney Int Suppl (2011). 2016 Apr;6(1):3-6.PMID: 30675413

2.Kidney Int. 2020 Jan;97(1):42-61.PMID: 31706619

3.N Engl J Med. 2021 Dec 9;385(24):2252-2263.Epub 2021 Aug 28. PMID:34449181

4.N Engl J Med. 2020 Dec 3;383(23):2219-2229.PMID:33264825