お薬のこと

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ダパグリフロジンは動脈硬化など危険因子のある人の心血管イベントを減らしますか?(DECLARE-TIMI 58試験)

PMID: 30415602 (DECLARE-TIMI 58試験)
N Engl J Med. 2019 Jan 24;380(4):347-357.

Dapagliflozin and Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes


P:アテローム動脈硬化+2型DM
E:ダパグリフロジン N=8582
C:プラセボ N=8578
O:CVD死+MI+虚血性脳卒中(=MACE)
T:非劣性(上限マージン:1.3)
【結果】
1次:8.8%vs9.4% HR:0.93(0.84-1.03)P=0.17

CVD死+HF入院:HR:0.83(0.73-0.95)P=0.005
HF入院:HR:0.73(0.61-0.88)
CVD死:0.98(0.82-1.17)
不明死?:6.%vs6.6% HR:0.93(0.82-1.04)
腎イベント:HR:0.76(0.67-0.87)
<安全性>
DMケトアシドーシス 0.3%vs0.1% P=0.02
性器感染症 0.9%vs0.1% P<0.001
<背景>
高血圧
脂質異常症
喫煙
抗血小板薬:61%
ACE-I/ARB:81.3%
β遮断薬:52%
スタチン:75%
利尿薬:40.6%
【コメント】
EMPA-REG OUTCOME(PMID:26378978 N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):211)の影響を受けて実施した試験と思いましたが、既に試験中だったようです。
糖尿病における将来的なイベントとして心不全(heart failure)が多く報告されている。動脈硬化や高血圧などの危険因子がある人に対して投与することで、将来的なイベントを減らせる可能性はあるが、心不全徴候が出ていない者に対して、投与するのが果たして望ましいのか議論が必要ではないだろうか。(心不全の1次予防?として)

また本試験だけで「MACEで統計学的有意差なし、個々のアウトカムとして心不全入院のみ有意差あり」について、将来的な心不全イベントを見越した投与を判断するのは注意が必要であると考えられる。
同時に、DPAPA-HF(PMID:31535829 N Engl J Med. 2019 Nov 21;381(21))では、糖尿病なしで結果を出したが、やはり現時点では慢性心不全のみで使用するにはもう少しエビデンスを追う必要があると判断したい。
いずれにしても、ただの血糖降下薬ではない立ち位置になっている様であるため注目して追っていきたい。

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