お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

心血管疾患を持つ2型糖尿病の高齢者は、ハイリスクですか? 2020年4月エビテン PMID: 28057693

Diabetes Care, 40 (4), 494-501 PMID: 28057693

TECOS試験のサブ解析


P:TECOS試験のCVD+2型DM N=14351
E:75歳以上 N=2004 平均年齢78.3歳
C:75歳未満 N=12347 平均年齢63.4歳
O:複合アウトカム(CVD死、非致死的MI、非致死的脳卒中、不安定狭心症による入院)
【結果】
6.4%vs3.67% HR 1.72 (1.52-1.94)
セカンドアウトカム
心不全入院 1.70vs1.00 HR 1.48 (1.18-1.87)
全死亡 5.09%vs2.03% HR 2.52 (2.20-2.89 )
重症低血糖 1.14%vs0.68% HR 1.53 (1.15-2.03)


P:TECOS試験の75歳以上のCVD+2DM N=2004
E:シタグリプチン N=970
C:プラセボ N=1034
O:複合アウトカム(CVD死、非致死的MI、非致死的脳卒中、不安定狭心症による入院)
【結果】
6.75%vs6.19 HR 1.10 (0.86-1.36)
セカンドアウトカム
心不全入院 1.60vs1.70 HR 0.99 (0.65-1.49)
全死亡 5.10%vs5.00 HR 1.05 (0.83-1.32)
【コメント】
①に対して、TECOS試験のCVD+2DMを持っている治療をしている群に年齢差でイベントの発生率を見たサブ解析である。
E群とC群にn数に差がありすぎないのだろうか?しかし、n数が多いC群に有意な差が出ていないので、偏った結果になってはいないと考えて良いのだろうか?
1次アウトカムは複合アウトカムである為、E群に差が出ても過大評価せずに、セカンダリーではあるが
個々のアウトカムにおいてもE群に有意差がついているので、
概ね、CVD+2DMの75歳以上の群はイベントを発生させやすいと考えて良さそうである。

②に対して、TECOS試験の75歳以上の群でシタグリプチンの有無でイベント発生率に差があるか見た
75歳以上では、シタグリプチンの介入有無で差は出なかった。 
①の事も併せて考察すると、75歳以上という事がイベント発生のハイリスクになりうるのかもしれない。
よって日常の診療でも高齢者にはよりイベント発生を念頭に置いたアセスメント、服薬指導を心がけるべきなのかもしれない。

 

①のセカンドアウトカムは、オマケの解析結果。
心不全入院、全死亡率、重症低血糖は75歳以上の方が多かった。

使用薬剤について補足
他の血糖降下薬は、①メトホルミン②SU剤③インスリン
メトホルミン→75歳以上:72.3%、75歳未満:83.1%
SU剤→47.2%、45.1%
その他、アスピリン、抗血小板薬、スタチン

罹患歴の補足→75歳以上:12年。75歳未満:9年

低血糖が誘発されやすいSU剤ですが、使用率は年齢で比較するとほぼ差は無いように見えます。

また、DPP4阻害薬は心不全の増加を問題視されています。本解析の方では増えず、サブ解析では増えた。
シタグリプチンの心不全増加関連の報告は少ない。(PMID:25499347、PMID:24998080)


いくつかの関連文献を当たったところ、恐らくシタグリプチンは腎排泄型の薬剤であることが原因の可能性があります。
シタグリプチンは、近位尿細管でNHE3(ナトリウム-水素交換体)とDPP4との複合体形成を抑制させることで、Naの再吸収抑えることで浮腫を抑え、心不全の発生が少ないのではないか? (近医尿細管の文献・PMID:30318179)

または心臓でのNHEが抑制させることか?などと推測されています。

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文献より、筆者作成