お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

シタグリプチンは心血管リスクのある2型糖尿病の心血管イベントを増やしますか?  PMID:26052984(TECOS試験)

PMID:26052984(TECOS試験)
N Engl J Med. 2015; 373: 232-42.
P:CVD+2DM(平均罹患歴:11.6±1年)(平均HbA1c:7.25±0.5%)N=14671
E:シタグリプチン 100㎎/日 N=7322
C:プラセボ N=7339
O:複合アウトカム(CVD死、非致死的MI、非致死的脳卒中、不安定狭心症による入院)
非劣性マージン:両側95%CIで1.3を超えないこと
【結果】
プライマリーアウトカム:11.4%vs11.6% 

【per-protocol解析】HR 0.98 (0.88-1.09) P<0.001
【ITT解析】HR 0.98 (0.89-1.20) P=0.65

セカンダリー:心不全入院 3.1%vs3.1% HR 1.00 (0.83-1.20) P=0.98
【背景】
本試験は,DPP-4阻害薬として,世界で最初に登場し,なおかつDPP-4阻害薬の全世界のシェアにおいて常に1位であるシタグリプチンorプラセボを心血管疾患の既往がある14,671名に無作為に投与し心血管疾患の発症を比較検討した。

https://www.ebm-library.jp/diabetes/trial/detail/51491.html 糖尿病トライアルデータベースより引用)


【コメント】
プラセボ群と比較してシタグリプチンの投与にて心血管イベントを増やすことは無かった。イベントを増やすことなく、またイベントの差もなかった。
DPP4阻害薬は心不全入院については、本解析では増やす結果は出なかった。増やすと結果もいくつかあるため注意が必要であるが、
DPP4阻害薬と心不全のメタ解析(PMID:26888822)にて現時点では、確実的なことは言えないとのとなので、更なる解析結果が待たれる。

 

注意したいのは、1つor2つ以上の他の経口糖尿病、インスリンの使用を許した状態での比較であり、群間差でのHbA1cが最小二乗平均差-0.29(-0.32 to -0.27)と僅かだったので、シタグリプチンを使用しなくてもHbA1cが安定していれば、心血管イベントは抑えられるのではないだろうか? 敢えてシタグリプチン導入する意味は何なのかもう一度考えるきっかけになるのかもしれない。
(ただし、過去にDPP4阻害薬やGLP-1作動薬、ピオグリダゾン以外のチアゾリジン薬の使用経験者は除外されている)