お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

ベルイシグアトはHFrEFを改善しますか? PMID:32222134

VICTORIA試験
Armstrong PW,et al. N Engl J Med.2020 May 14;382(20):1883-1893.

PMID:32222134
【論文のPECO】
P:NYHAⅡ-Ⅳ、EF≦45% N=5050
E:ベルイシグアト10㎎分1 N=2526
C:プラセボ N=2524
O:複合(CVD死+心不全による最初の入院)

random化しているか→している

1次アウトカムは明確か→「The primary outcome was 」:明確

真のアウトカムか→真である(CVD死や心不全入院だから)

ITT解析→している
【結果】
★1次アウトカム:35.5%vs38.5%(P=0.02)
HR:0.90(0.82-0.98)P=0.02
RR=897/2526÷972/2524=0.92
ARR=38.5-35.5=3.0
NNT=1/0.03=33.3
心不全入院:27.4%vs29.6%
HR:0.90(0.81-1.00)
RR=0.93、ARR=2.2、NNT=45.5
★CVD死亡率:16.4%vs17.5%
HR:0.93(0.81-1.06)
RR=0.94、ARR=1.1、NNT=90.9

<有害事象>
症候性低血圧:9.1%vs7.9%(P=0.12)
失神:4.0%vs3.5%(P=0.30)

【コメント】

β遮断薬やMRA、ARB/ACE-Iの標準治療に上乗せする形で試験が行われました。

プラセボに対して複合アウトカムで有意差は示されたが、個々のアウトカムでは、心血管死亡リスク及び心不全入院率を増やすことが無かった。ただ追跡期間は10.8か月であったため過大評価には注意したい。HFrEFに対する新薬が増えているこの状況で、ベルイシグアトは、どの症例に対して上乗せをする必要があるのか検討していく必要がありそうです。

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