お薬のこと

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脳卒中+心房細動 における早期DOAC療法は、出血を増やしますか? PMID: 37222476

Fischer U, et al. N Engl J Med. 2023 May 24. PMID: 37222476

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37222476/

【論文のPECO】
P:脳卒中を起こした、心房細動患者
E:初期(軽度/中等度の脳卒中後48時間以内 or 重度脳卒中6-7日目)の抗凝固療法 n=1006
C:後期(軽度脳卒中後3-4日目 or 中等度脳卒中6-7日目 or 重度脳卒中12-14日目)の抗凝固療法 n=1007
O:複合イベントの発生率(再発性脳卒中、全身性塞栓症、大規模な頭蓋出血、症候性頭蓋内出血、血管死)
【結果】
リスク差:30日 -1.18%POINT(-2.84 to 0.47)
リスク差:90日 -1.92%POINT(-3.82 to -0.02)
<30日>
OR:0.70(0.44-1.14)
再発性脳卒中発生率 OR:0.57(0.29-1.07)
<90日>
再発性脳卒中発生率 OR:0.60(0.33-06)
【研究の背景】
抗凝固薬(DOAC)は心房細動による虚血性脳卒中や全身性塞栓症を予防することは知られているが、DOACの早期開始が、頭蓋内出血リスクに影響を与えるかどうかは不明であった。
現在、ヨーロッパのガイドラインは、軽度の脳卒中後3日間、中等度の脳卒中後6日間、重度の脳卒中後12日間抗凝固療法を遅らせることを推奨。
米国では、虚血性脳梗塞の出血性変化のリスクが高い場合は抗凝固療法を14日以上、この合併症のリスクが低い場合は2日目~14日目の間に抗凝固療法を開始することを推奨されている。
【コメント】
試験の結果、早期でも後期でも出血や血管死のイベント発生率に対する統計学的差は無かったが、再発性脳卒中などのリスクは減少傾向であることが分かった。
試験デザインはランダム化はされているが、blind されていない。主要評価項目は5つの評価を複合としており、やや多い印象。
この結果だけでは、早期の開始が出血リスクを増やすとも減らすとも言えないが、背景から考えるリスクを回避できる可能性が示された。