お薬のこと

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日本の睡眠薬処方パータンはどんな感じですか? PMID: 37081408

Okuda S, et al. BMC Psychiatry. 2023 Apr 20;23(1):278. PMID: 37081408

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37081408/

【論文のPECO】
P:不眠症により1種類以上の睡眠薬を処方された患者
E:新規処方
C:長期処方
O:薬剤使用率、治療傾向
【結果】

薬剤処方率の傾向


<新規処方>
使用薬剤:Z-drug(40.2%)、BZD(32.1%)、ORA(18.7%)、MRA(6.1%)
併用パターン:BZD + z-drug (47.3%)、z-drug + ORA (18.4%)、BZD + ORA (12.7%)

<長期処方>
使用薬剤:BZD:50.8%(短時間型:44.2%、中間型:25.9%、長時間型:19.4%)、Z-drug:25.6%
併用パターン:BZD + z-drug (61.1%)、 BZD + ORA (14.2%) 

<略語>ORA:オレキシン、MOA:同じ作用機序、MRA:メラトニン受容体
【研究背景】
日本では、2011-2013 年にかけて他国よりも BZD や Z-drug の使用率が高いと報告されている。(International Narcotics Control Board, United Nations. Report of the International Narcotics Control Board for 2015 (E/INCB/2015/1). https://www.incb.org/documents/Publications/AnnualReports/AR2015/English/Supplement-AR15_availability_English.pdf.
しかし、それらの薬は、依存性や高齢者における転倒などのリスク増などの懸念材料があり、注意が必要だ。
現在は、MRAやORAなどの薬が登場し、睡眠薬のラインナップが変化している。
しかし、先行研究では、BZD や Z-drug に焦点が当てられており、MRA や ORA を含めた処方パターンに関する情報が少ない。
そこで日本のレセプトデータベースを利用し、不眠患者に対する催眠薬処方パターンと傾向を調査した。
【コメント】
BZDの不適切使用について、特に高齢者のガイドライン(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015)のような安全性の面から減薬などの意見や、エチゾラム向精神薬指定への区分変更などが行われた時期の調査であった。
BZDは処方減傾向にあったが、新規ユーザよりも長期ユーザーの方が処方頻度が多い事が分かった。服用に対するリスクと利益を秤にかけて患者共々理解した上での使用が望ましいだろう。