お薬のこと

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スタチン療法にエボロクマブは上乗せした方が心血管イベントは防げますか? PMID: 28304224

N Engl J Med. 2017 May 4;376(18):1713-1722.PMID: 28304224.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28304224/

【論文のPECO】
P:スタチン療法を受けているアテローム動脈硬化性心疾患患者
E:エボロクマブ
C:プラセボ
O:複合(心血管死、心筋梗塞脳卒中、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建術)
T:ランダム化プラセボ対照比較試験、二重盲検
【結果】
HR:0.85(0.79-0.92)P<0.001
<ベースライン>
心筋梗塞歴:81.8%
非出血性脳卒中歴:19.4%
高強度スタチン療法:69.3%
エゼチミブ使用:5.2%
LDL-C:92mg/dL
コレステロール:168mg/dL
HDL-C:44mg/dL
TG:134mg/dL
<結果の詳細>
心血管死亡率 1.05(0.88-1.25)
心筋梗塞死亡率:0.84(0.49-1.42)
脳卒中死亡率:0.94(0.58-1.54)
その他の心血管死亡率:1.10(0.90-1.35)
全死亡率 1.04(0.91-1.19)
心筋梗塞発生率 0.73(0.65-0.82)
脳卒中発生率 0.79(0.66-0.95)
【コメント】
ベースラインから、心筋梗塞歴のある人が多く、スタチン療法で既にLDL-Cが100以下に抑えられている集団に対して
エボロクマブを使用すると複合結果は有意に発生率を下げたが、
肝心の心血管死亡率を減らす事は出来なかった。
また日本人は、心筋梗塞よりも脳卒中の方が発生率が高い傾向があります。(Int J Cardiol. 2016 Nov 1;222:281-286.PMID: 27497111)
心血管イベント(脳卒中心筋梗塞)の発生率を減らす傾向がある事から、
2次予防として、スタチン療法にエボロクマブを上乗せするのは有効かもしれない。