お薬のこと

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ナーシングホーム入居者による糖尿病治療薬の減量が及ぼす影響 PMID: 35621712

 

Diabetes Care. 2022 May 27:dc212116. PMID: 35621712
【論文のPECO】
P:進行性認知症(AD)/余命の限られた(LLE)集団、高齢者ナーシングホームに入居、HbA1c≦7.5%
E:厳格な血糖コントロール中止
C:厳格な血糖コントロール継続
O:救急訪問または入院、死亡率
T:後ろ向きコホート
【結果】
全救急訪問/入院 RR:0.99(0.84-1.18)
死亡率 RR:1.52(0.89-2.81)
【コメント】

進行性認知症(AD)/余命の限られた(LLE)人で、HbA1c≦7.5%の糖尿病がある高齢者ナーシングホーム
(日本で言うと、有料老人ホーム)に入居している方に対して、厳格な血糖コントロールを中止しても、
中止しない群と比較して、救急訪問率や入院率(HR:0.99(0.84-1.18))、死亡率(HR:1.15(0.89-2.81))
統計学的な有意差は示されなかった。


abstract のみであるため、平均年齢は確認できないが、AD/LLEという条件の集団に対する
血糖降下療法の厳格コントロールを中止しても、余命は伸びないのであろう。
この厳格療法を中止させた背景には ACCORD 試験( N Engl J Med. 2008 Jun 12;358(24):254 PMID:18539917 )らの結果で死亡率増加という結果を反映させていると思われる。
この集団に対して、血糖をどのようにコントロールしていくのが当人にとってQOLが向上するのか、個々の思いや家族の思いを組み合わせた上で、治療決定していくのが良いだろう。