お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

メトホルミンの歴史と今

メトホルミンに対する記事を見つけて興奮していたら、るるーしゅ先生から指示がww

メトホルミンについてまとめてみました。良ければ読んでいってください

ちょっと長くなってしまいました。

 

さぁ、フレンチライラックという花を検索してみよう。紫色でとても綺麗ですね。この綺麗な花(草)から有効成分を抽出するとグアニジンという物質が出てきます。グアニジンには血糖値を下げる作用があります。

 

人類が血糖降下作用を有する植物の存在に気が付いたのは、中世の頃。フレンチライラック多年草マメ科:ガレガソウ)使うと口の中が乾く症状や尿の回数が多い症状に効果的だと話題になっていました。口の中が乾くのは口渇。尿の回数が多いのは多尿。そう!高血糖になったときの症状です。

時は飛んで、1918年 C.K.ワタナベがフレンチライラックの抽出物であるグアニジンに血糖降下作用があることを報告したが、そのままでは毒性がとても高く薬として使う事が出来ませんでした。STUDIES IN THE METABOLISM CHANGES INDUCED BY ADMINISTRATION OF GUANIDINE BASES: I. INFLUENCE OF INJECTED GUANIDINE HYDROCHLORIDE UPON BLOOD SUGAR CONTENT J. Biol. Chem. 1918 33: 253-265.

その後、1922年にwenerとBellによるメトホルミン(ジメチルビグアナイド)の合成が報告された。 J Chem Soc Trans. 1922;121:1790–1794その当時はインスリンの発見もあって世間からあまり注目されず。1950年代から本格的に使用されたビグアナイド系は、1970年代に乳酸アシドーシスの死亡例の影響で一時期使用が制限されたがメトホルミンは乳酸アシドーシスのリスクは少ないと分かり(PMID:20091535)

UKPDS34(PMID:9742977)でメトホルミンの有用性が再確認され復権した。

 

 

ある記事で、レボビッツ氏は、メトホルミンはHbA1cの改善に有用であり、SU剤とメトホルミンは同等である研究を紹介(PMID:7623902)。更に、チアゾリジン系やSU剤、メトホルミンを比較した研究で単独投与失敗期間を比較したものは、チアゾリジン系に次いで短い(PMID:17145742)更に、UKPDSの結果から、体重増加や低血糖の発生はインスリンやSU剤よりも少ないことに関連しているため、第一選択肢として有効的ではないかと述べた。

また、HbA1cの低下は他の薬剤ほど効果は大きくなく、UKPDSの結果から対照群が食事のみで、彼らの死亡率の62%が過体重患者であり、心血管死亡を占めていることからメトホルミンの糖尿病関連死を減らすのに有効的ではないだろうかと。

 

しかし、UKPDS以降(2014年の記事時点では)メトホルミンの有効的なRCTが方向されていないことに懸念を抱いた。

HOMEtrialという前向きRCT(PMID:12453950)では、1次アウトカム(糖尿病の代謝制御の質と関連する変数(インスリンの毎日の投与量、体重))ではメトホルミンはプラセボと変わらず。2次アウトカムで大血管の発生率にに有意差が出た程度だった。

 

観察研究を用いてもSU剤と比較してメトホルミンの死亡率は減る HR:1.58 95%CI:1.483-1.684(PMID:24720708)と述べ、その他の糖尿病薬との比較をした上で包括的に見ていくと(2014年の記事)現時点では、安価でネガティブな印象が少ない。ただそれが影響でお金のかかる長期的な試験が行われていないのではと述べた。

https://www.medscape.com/viewarticle/832311#vp_3

循環器で注目しているのは、メトホルミンによる心不全に対する効果です(PMID:29455774 )。熱くなっている所にメトホルミンはSGLT-2阻害薬における心不全抑制効果を弱めるかもしれないという結果が出てきました。(DOI:https://doi.org/10.1016/j.amjmed.2020.01.016) 

 

今、超高齢化社会を迎えている今、日本では「心不全パンデミック」なんて声も上がってきています。緩和ケア領域でも心不全ケアが注目されています。

なんて面白いんだ。 これから目が離せないですね。

 

るるーしゅ先生、これで良いですか?