お薬のこと

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エンパグリフロジンは駆出率が維持された心不全に有効ですか?

DOI:10.1056 / NEJMoa2107038
【論文のPECO】
P:心不全(NYHAⅡ-Ⅳ)の HFpEF N=5988
E:エンパグリフロジン 10㎎/日 N=2997
C:placebo N=2991
O:複合アウトカム(心血管死+HF入院)
ランダム化しているか→している
1次アウトカムは明確か→明確(ただし複合)
真のアウトカムか→真
ITT解析はされているか→している
【結果】
13.8%vs17.1% HR:0.79(0.69-0.90)P<0.001
心血管死 HR:0.91(0.76-1.09)
HF入院 HR:0.71(0.60-0.83)
<ベースライン>
NYHAⅡ:81%
NYHAⅢ:18%
BMI:30弱
EF:40-50%:33%
EF:50-60%:34%
EF>60%:32%

【コメント】

エンパグリフロジンが駆出率が維持された心不全(HFpEF)に対して、ポジティブな結果が出たと話題に。 過去に様々な試験が行われたものの有意な結果が出ていかなったので希望の光となるか?

今回の解析で気になる点を3つ挙げてみた

 

①ベースラインを見るとNYHAⅡが多い →クラスが重くなった場合の結果が欲しい。外来だとこの位のクラスが多いから外来で使えるかもしれない。

②我々アジア人への使用割合が少ない→解析に含まれていた多くが白人。アジア人が少ないので、今回の結果を元に日本での使用を拡大するのは、外的妥当性が十分ではない

③複合アウトカムで有意差あり→個々のアウトカムでは、心不全入院のみ有意差ありで、心血管死亡は有意差が付かなかった。拡大解釈に注意。