お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

レンボレキサントは高齢者の睡眠障害にどうですか? PMID:31880796

PMID:31880796
JAMA Netw Open. 2019 Dec 2;2(12):e1918254.
P:不眠障害のある高齢者 N=1006 女性:869人(86.4%) 平均年齢63歳
E:レンボレキサント 5㎎:N=266 10㎎:N=269
C:プラセボ N=208 ゾルピデム徐放 N=263
O:睡眠持続時間
【結果】
vsプラセボ
1-2日目:5㎎→0.85(0.75-0.96)P=0.009 10㎎→0.80(0.70-0.90)P<0.001
29-30日目:5㎎→0.77(0.67-0.89)P<0.001 10㎎→0.72(0.63-0.83)P<0.001

vsゾルピデム徐放
1-2日目:5㎎→0.87(0.78-0.98)P=0.02 10㎎→0.82(0.3-0.92)P<0.001
29-30日目:5㎎→0.63(0.56-0.72)P<0.001 10㎎→0.59(0.52-0.68)P<0.001

有害事象(AE)
頭痛:5㎎→6.4% 10㎎→4.9%
眠気:5㎎→4.1% 10㎎→7.1%
尿路感染症:5㎎→1.1% 10㎎→3.4%
死亡:5㎎→0 10㎎→0

【コメント】

今回の試験は、プラセボとの比較だけでなく既存薬のゾルピデムとも比較をしている。(ただしこの試験に使用しているゾルピデムは徐放性です。日本にはありません)
最初に設定した、試験で判定したい結果の1次アウトカムは、睡眠持続時間でした。その結果はプラセボと比べても、ゾルピデムと比べても統計学的な有意差がある、レンボレキサントは不眠に対して有効であると示されました。
しかし、個人的に吟味したうえで気になる点が2点ある。
①試験前の睡眠持続時間であるベースラインと比較した、レンボレキサントを飲み始めて1-2日目と早い段階で統計学的にレンボレキサントが睡眠持続時間の改善に効果があると出ている。
②今回の試験の対象患者さんは「高齢者の不眠」ですが、試験を受けた患者さんの平均年齢は63歳でした。日本は少子高齢化しており睡眠薬(または睡眠導入剤)を服用している高齢者が63歳よりも高い人が多い可能性がある。
※試験を受けた人の中で、一番年齢が高い人で80代の人も解析含まれていた。また試験を受けた人の年齢層を確認すると65歳以上の人が45%前後含まれていた。
①と②の点から、現時点(2020年7月)では、今回の論文だけでは普段接している患者さんにそのまま当てはめるのは難しく、危険かもしれないと考えました。
もう少しレンボレキサントに対する別の試験結果をみてから、医師に提案する必要があると判断しました。