お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

月経困難症に対する低用量ピル(低用量経口ホルモン薬)の評価 PMID: 27717552


Fertil Steril. 2016 Evaluation of an ultra-low-dose oral contraceptive for dysmenorrhea: a placebo-controlled, double-blind, randomized trial.Dec;106(7):1807-1814
PMID: 27717552

 

【論文のPECO】
P:月経困難症 n=215 
E:NPC-01(n=105)、IKH-01(n=47)
C:プラセボ(n=54)
O:疼痛スコア(VAS)、有効性、安全性

デザイン:RCT、double-blind、日本

NPC-01:エチニルエストラジオール0.02mg+ノルエチステロン1㎎ (例:ルナベル®ULD)
IKH-01:エチニルエストラジオール0.035mg+ノルエチステロン1㎎ (例:ルナベル®UD)

 

【結果】
<全ての月経困難症>
総月経困難症スコア減少:NPC-01(-2.3)vsプラセボ(-1.3) P<0.01
VASスコア減少:NPC-01(-30.6)vsプラセボ(-13.0) P<0.01

原発性月経困難症>
総月経困難症スコア減少:NPC-01(-2.3)vsプラセボ(-1.9)
VASスコア減少:NPC-01(-32.3)vsプラセボ(-21.9)

<二次性月経困難症>
総月経困難症スコア減少:NPC-01(-2.3)orIKH-01(-1.9) vs プラセボ(-0.7)
VASスコア減少:NPC-01(-28.7)orIKH-01(-22.4) vs プラセボ(-3.5)


<副作用>
NPC-01(89.7%) vs プラセボ(89.7%) 
不規則な子宮出血(NPC-01:70.1% vs プラセボ:37.0%)or多月経の発生率(NPC-01:8.4% vs プラセボ:0.0%)
腹部痛(10.3%および2.1%)悪心(9.3%および17.0%)、頭痛(12.1%および12.8%)、月経亢進(5.6%および10.6%)、非定型出血(70.1%および78.7%)、乏月経(22.4%および12.8%)、多月経(8.4%および10.6%)

(※NPC-1の人全員、以前にIKH-01を服用したことある人)
NPC-01グループの3人の被験者は、データが入手できなかったため、有効性分析から除外されました。

 

【感想】
主にNPC-01グループを中心に解析されている。
本邦で発売されているルナベルULDとして評価をすると、プラセボと比べVASスコアの減少が大きくP値で見ると有意差は出ている。
今回のVASは痛みを評価しているため、月経困難症による疼痛がNPC-01を服用することで有意に改善されたとみても良いだろう。

20190923薬ゼミ講習会 行ってきたよ②

ロールプレイを5回行いました。
そのうち1件気になったもので、調べたもの

 

Rp) クレストール2.5㎎ 1錠
1日1回 朝食後 28日分

今回の来局で2回目。
40代男性
LDLコレステロール:180(前回)→142(今回)
薬はあまり飲みたくない、その代わり黒烏龍茶でもいい?
この間、肩こりがあって、そういえば前回の薬剤師の説明で「なんとかユウカイショウ?」みたいな怖い副作用があるって言われて
寝て起きたら肩こりは治ったけど、またあるのかと思うと怖い。飲みたくない

 


初回の服薬指導から反省すること
①横紋筋融解症という言葉をそのまま患者さんに伝えてしまった。
②服薬によるメリット、服薬しないことのデメリットを上手く伝えきれていなかった。

①について。
専門用語で伝えず、「筋肉痛」などと伝えるべきだった。
「肩こり」「寝て起きたら治った」の情報からもっと引き出すべき
→横紋筋融解症の診断基準は主にCK。 
また筋症状は下肢近位筋の圧痛と筋力低下を認め、両側対称性(PMID:2406177)という情報もあることから、上肢は可能性が低いかも?(絶対とは言えない)
またミオグロビン尿(赤~オレンジ尿)の有無を聞けたらいいかもしれない。

②について「薬をあまり飲みたくない」は病識がない事が原因の可能性もある。


①家族に、心筋梗塞脳梗塞で倒れたor亡くなった方がいるのか?確認
今回40代で若いので、家族性高コレステロールも考慮してもいいいかも? 
薬剤師が、投薬時に見れるのは、眼瞼黄色腫やアキレス腱黄色腫などを観察してみる。

アキレス腱肥厚のレントゲン撮影⇒感度:64.1% 特異度:98.6%(家族性高コレステロール血症診療ガイドライン

<FH(家族性高コレステロールヘテロ接合体の診断>
①高LDL(未治療時;180㎎/dL以上)
②FHあるいは、早期冠動脈疾患の家族歴(2親等以内)
③腱黄色腫、皮膚結節性黄色腫
⇒2項目以上あてはまる場合⇒感度;94.5% 特異度:99.1%
PMID:23095241

服薬におけるリスク減少について⇒MEGAstudy PMID:17011942

Primary prevention of cardiovascular disease with pravastatin in Japan (MEGA Study): a prospective randomised controlled trial. - PubMed - NCBI

 

【論文のPECO】
P:n=7832 40~70歳の男性、閉経~70歳の女性 総コレステロール:220~270㎎/dL、日本人
(除外;家族性高コレステロール血症、CHD、脳卒中の既往歴あり)
E:食事療法+プラバスタチン
C:食事療法のみ
O:1次アウトカム⇒心筋梗塞、心突然死、狭心症、血行再建術
2次アウトカム⇒脳卒中脳梗塞、死亡率など

【結果】
<一次アウトカム>
HR:0.67 (0.49 to 0.91) P=0.01 NNT=119
心筋梗塞:HR:0.52 (0.29 to 0.94)P=0.03 NNT=255
心突然死:HR:0.51 (0.18 to 1.50)P=0.21
狭心症:HR:0.83 (0.56 to 1.23)P=0.35
血行再建術:HR:0.60 (0.41 to 0.89)P=0.01

※2次アウトカム割愛します

参考:MEGA_循環器トライアルデータベース

 

【感想】
冠動脈疾患のない人に対するプラバスタチンの投与で、心筋梗塞を減らすことが出来た→1次予防に使えるかも。
しかし、除外疾患で糖尿病がないので、真の高コレステロール血症の人だけの試験とはいいがたいのでは?
全死亡率が1次アウトカムに無いのは、真のアウトカムと言えないのかもしれない。

こういった文献もあるので、今回はプラバスタチンで、今症例はロスバスタチンなのでそのまま当てはめることは出来ないが、
スタチン系という(大きな)くくりでみると、服用にて将来的なリスクを減らすことができること(1次予防あり)もあるというニュアンスも含めて説明、服薬支援が必要だろう。と考えられる

 

 

黒烏龍茶については、また後日(予定・・・)

20190923薬ゼミ講習会 行ってきたよ①

2019年9月23日 薬ゼミ生涯学習  人の心を動かすコミュニケーション技法

 

コミュニケーション医療を提供する上で、患者の顧客満足度をあげるのを意識してみよう。
コミュニケーションにおいて、患者が望んでいる事と医療を提供する側のギャップがあると、ズレが生じたまま進んでしまう。
患者が何を望んでいるのか察するではなく、言葉にして確認すること。
また、「問診」と「医療面接」は異なるようでした。


医療面接法とは,従来「病歴聴取」,「問診」と呼ばれていた。主として情報収集を目的とした臨床技法に加えて、
「患者とのコミュニケーション」、「患者の思いを受け止めて対応する術」を含めた技法である
引用:日本内科学会雑誌 第103巻 第 3 号・平成26年 3 月10日 基本的臨床能力としての医療面接法再考 伴 信太郎

医師が患者と話をする行為は,単に病歴を聴取して診断をつけるだけでなく,患者自らの病への解釈や今後受ける医療に対する希望といったナラティブを明らかにし,
医師と患者のラポールを形成するために重要と考えられるようになった.
このようにして現在では,「問診」は「医療面接(medical interview)」と名を変え,診断を付けるための医学的側面としての病歴聴取にとどまらず,
患者のナラティブを引き出し,好ましい医師患者関係を構築することにより治療への動機付けをも目指したものとなっている.
引用:Clin Eval 40(2)2013 医療面接の基本と客観的臨床能力試験(OSCE)南郷 栄秀

ナラティブ=物語

※上の引用2つは今回の勉強会で使用されておらず、私が検索して引用したものです。


【思ったこと】
患者の思う事を抽出出来たとして、それを全て叶えていたら、
医療費の破綻が進むだけではないか?ロールプレイを通して薬剤師が聴きたいことだけを聴くのは楽だが、患者としては満足度が低い。
お互いに歩み寄るのが大切なのかもしれません。

【質問方法】
質問は、聴きたいことを聴く(=閉じた質問) ばかりではなく、開かれた質問から少しずつ狭めていくとよいらしい。

<開かれた質問>
①自由質問法
②重点的質問法:話のジャンルを絞って、その内容については自由に話せる質問法
③中立的質問法:考えや意見を入れずに、話を促す質問法

<閉じられた質問>
①直接質問法:「はい、いいえ」で答えられる質問法
②多項目質問法:選択肢の中から選んでもらう質問法

 

☆ネガティブな情報を伝えるときは、患者の不安に考慮して情報の範囲や伝え方の工夫をしよう。
薬剤師や医療関係者なら「横紋筋融解症」があるので注意して~と言われてもわかるが、
知らない単語を耳にした人間は「オウモンキンユウカイショウ」?? 
と漢字がまず頭に浮かばず、意味が分からない。そして「注意して」だけが頭に残り、怖い副作用があるんだ!!と怖くなってしまうとのこと。

なるべく平易な言葉、単語に変換してお伝えするように工夫しよう。

医療従事者のインフルエンザ予防のためにはN95マスクと医療用マスクどちらがいいですか? PMID: 31479137

N95 Respirators vs Medical Masks for Preventing Influenza Among Health Care Personnel: A Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2019 Sep 3;322(9):824-833. PMID: 31479137

【論文のPECO】

P:米国の医療センターで外来業務をする医療スタッフ n=2862(その内2371人が完遂) 平均年齢43歳
E:N95マスク 
C:通常の医療マスク
O:インフルエンザの発生率
2次アウトカム…急性呼吸器疾患の発生、検出、呼吸器疾患感染の確認、インフルエンザ様症状

ランダム化,無作為試験,アブストラクトのみ


【結果】
インフルエンザ発症
N95群:207人(8.2%)、医療用マスク:193人(7.2%) 
差1.0%(95%CI:-0.5% to 2.5%)
調節OR:1.18(95%CI:0.95 to 1.45)

<2次アウトカム>
急性呼吸器疾患の発生:N95マスク:1556 vs 医療用マスク:1711 差:-21.9(95%CI:-48.2 to 4.4)P=0.10
検査室で呼吸器疾患の検出された:N95マスク:679 vs 医療用マスク:745 差 -8.9/1000HCP-seasons (95%CI:-33.3 to 15.4)P=0.47
検査室で呼吸器疾患が確認された:N95マスク:371 vs医療用マスク:417 -8.6/1000HCP(95%CI:-28.2 to 10.9)P=0.39
インフルエンザ様症状:N95マスク:128 vs医療用マスク:166 -11.3/1000HCP(95%CI:-23.8 to 1.3)P=-0.08
N95マスクの人は89.4%が常に、時々使用。
医療用マスクの人は90.2%が常に、時々使用。

 

【感想】
N95マスクにこだわらなくても、インフルエンザ様症状の発生率は変わらないよう。
まずは、インフルエンザ流行時期はしっかりマスクをすることで感染予防していくのが良さそう。
今回の文献ではマスク無しとは比較していないので注意が必要。

E群とC群のn数が最初の2862人になるためどの人数で割り付けたのか、アブストのみだったため不明。

 

ED(勃起不全)はCAD(冠動脈疾患)の予測に使えますか? PMID: 16854949 

Association between erectile dysfunction and coronary artery disease. Role of coronary clinical presentation and extent of coronary vessels involvement: the COBRA trial.
Eur Heart J. 2006 Nov;27(22):2632-9. PMID: 16854949

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=16854949

ED(勃起不全)はCAD(冠動脈疾患)の予測に使えますか?

エビテン9月で紹介した論文です。

 

この文献を見つけるにあたって、

動脈の大きさ:陰茎動脈<冠動脈
陰茎動脈のアテローム血栓などが原因でEDが先行発生→CADやMI(心筋梗塞)、脳卒中イベント発生するかも。
といった報告です
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26558084

これを見て、予測を考えた試験は無いのか調べた結果今回の論文に当たりました。

 

【論文のPECO】
P:冠動脈疾患(+) n=285
E/C:グループ1→ACS、1つの血管疾患 n=95
グループ2→ACS、2or3つの血管疾患 n=95
グループ3→CCS n=95
対照群 n=95
O:EDの発生率、国際勃起機能指数(IIEF-EFD)

ACS=急性冠症候群
CCS=慢性冠症候群
CAD=冠動脈疾患
ED=勃起不全

【結果】
グルーブ2 vs グループ1→ OR:4.2(95%CI:2.26 to 8.00 P<0.0001)
重度のEDスコア(10未満):CADの26%(35/135)に存在。 1-VD:12.5% vs 2,3-VD:31% (P<0.01) Figure4参照
CAD発症前にEDを訴えた人(n=62)→58/62(93%)
ED発症からCAD発症までの平均時間:24(12-36)ヶ月
(1-VD:12(9.5-24)ヶ月 2-VD:24(16.5-36)ヶ月 3-VD33(21-36)ヶ月)

 

f:id:nitrotake8:20190922162911j:plain

【結論&感想】
陰茎動脈<冠動脈という解剖学的観や【PMID:26558084】をみても、特にCCSではED→CAD発症の予測に使ってもいいかも。
EDの重症率とCADの重症率は関連している可能性あり

また、EDが発症してから、1年前後は心筋梗塞などの発生に注意してとアナウンスしてもいいかもしれないが、不安をあおるだけになってしまうため、「こんな症状が出たら受診や相談をしてね」と伝えるのもありかもしれない。

 

PCIや心臓バイパス手術をしたことのある心房細動の人は、抗血小板薬を併用したほうがいいですか? PMID: 31475793

N Engl J Med. 2019 Sep 2.  PMID: 31475793
安定した冠動脈疾患を伴う心房細動に対する抗血栓療法。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=31475793

 

【論文のPECO】
P:1年以上前にPCI or CABG(バイパス手術)を受けた人で、血管造影検査で心房細動の人 n=2236
E:リバーロキサバン単剤
C:リバーロキサバン+抗血小板(単剤)
O:有効性(脳卒中、全身性塞栓症、心筋梗塞、血行再建を必要とする不安定狭心症、あらゆる原因による死亡の複合 
安全性=イベント発生率(大出血)

非劣性マージン:1.46 
ランダム化されている
アブストのみ

  効果 HR
リバーロキサバン 4.11% 0.72(0.55 to 0.95)
リバーロキサバン
+抗血小板薬
5.75%

 

  安全性 HR
リバーロキサバン 1.62% 0.59(0.39 to 0.89)
リバーロキサバン
+抗血小板薬
2.72%

 

【結論&感想】
・効果と安全性ともに1.46は超えていない 
・併用群の死亡率増加のため、試験は早期に中断した。
・リバーロキサバン単剤は、併用群ともに心房細動の有効性と安全性ともに劣らなかった。

併用群で死亡率が増えた事より、冠動脈疾患術歴ある人の心房細動にリバーロキサバン単剤で治療を行った方が良いのかもしれない。
その死亡率が出血によるものなのか、詳しくは本文を読めていないので、不明である。

 

PCIとバイパス手術を受けた人の10年後の死亡率は差がありますか? PMID: 31488373

Lancet. 2019 Sep 2. pii: S0140-6736(19)31997-X.  PMID: 31488373
多施設無作為化対照SYNTAX試験の10年間の追跡

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31488373

【論文のPECO】
P:PCI or 冠動脈バイパス手術をしたことのある人の10年後
E:PCI (パクリタキセル) n=903
C:バイパス手術 (CABG) n=897
O:死亡率

アブストのみ
SYNTAX Extended Survival(SYNTAXES)研究は、北米および欧州18か国の85の病院で行われた多施設無作為化比較試験である。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19228612 PMID: 19228612

 【結果】

  10年後の死亡率 HR
PCI n=903 244(27%) 1.17(0.97 to 1.41)
CABG n=897 211(24%)
  3血管疾患の死亡率 HR
PCI n=546 151(28%) 1.41(1.10 to 1.80)
CABG n=549 113(21%)

 

【結論&感想】
PCIとCABGで10年後の死亡率は変わらなかった。
3血管疾患死亡率はCABGの方が僅かに生存率が有意だった。
PCI薬剤溶出の薬剤がパクリタキセルだから死亡率は変わらなかったのか、どうかは不明。
CABGと同等の生存率があるならば、術後回復も早いPCIを選択しても良いのかもしれない。