お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

心筋梗塞を起こしたあとの心房細動の治療には、抗血小板薬を併用したほうがいいですか?PMID: 31311662

Meta-Analysis of Oral Anticoagulant Monotherapy as an Antithrombotic Strategy in Patients With Stable Coronary Artery Disease and Nonvalvular Atrial Fibrillation.
Am J Cardiol. 2019 Sep 15;124(6):879-885. PMID: 31311662

アブストのみ、メタ分析、非ランダム化とランダム化

 

P:心筋梗塞orPCI後1年以上で安定した冠動脈疾患のある非弁膜症心房細動の患者 8855人
E:経口抗凝固薬+単独抗血小板薬(SAPT)

C:経口抗凝固薬療法(OAC)
O:有害な心血管イベント
2次アウトカム:大出血、脳卒中、全死亡率

【結果】
<1次>心血管イベント:OAC+SAPT vs OAC:HR:1.09(0.92 to 1.29)
大出血:OAC+SAPT vs OAC:HR:1.61(1.38 to 1.87)
純有害事象:OAC+SAPT vs OAC:HR:1.21(1.02 to 1.43)
また、脳卒中、全死亡率に差は無かった。

【感想】
併用療法は抗凝固療法単独と比べて死亡率は差がなかったが、出血を増やすよう。
心房細動の場合はDAPTなどを抗血小板療法よりも、DOAC(NOAC)など抗凝固療法を選択の方がいいかもしれない。
ただアブストのみだったので、何年?何か月の服用で出血が出たのか?何年以降は出血が出ないのか?その辺りを更に読めたらと思う。

急性疼痛にはアセトアミノフェン単独の方が痛みが取れますか? PMID: 31378383

急性筋骨格損傷に対する経口アセトアミノフェンと併用経口鎮痛薬

Ann Emerg Med. 2019 Aug 1.
PMID: 31378383
3次病院の救急部門にて、急性骨格損傷における48時間以内の急性疼痛に関する緩和

P:18-65歳、急性の軽度筋骨格損傷におけるスコアが3/10以上の48時間以内の急性疼痛
E:アセトアミノフェン1000㎎
C:アセトアミノフェンイブプロフェン400㎎ or コデイン60㎎ 
O:痛みの強さ(なんのスコア?)最小の痛みスコア差を1.3とした。
二重盲検、無作為化、並行群間試験

<60分での痛みのスコア>
アセトアミノフェン;-1.6(-2.2 to -1.1) n=59
併用群:-2.0(-2.5 to -1) n=59
差:-0.4(-1.1 to 0.29)P=0.26

<120分での痛みスコア>
アセトアミノフェン:-2.4(-3.2 to -1.6) n=30
併用群:-2.9(-3.7 to -2.2) n=35
差:-0.5(-1.6 to 0.5) P=0.32

【感想】
60分という急性の痛みに対して、結果を差で見ると、併用群はアセトアミノフェン単独に比べて痛みの緩和効果を上回ることは無かった。
下手に併用をするより、アセトアミノフェン1g単独投与で様子を見てもいいかもしれない。

心房細動の患者さんにレートコントロールや抗不整脈薬を使うと転倒しやすくなりますか?PMID: 31339174

Rate or Rhythm Control in Older Atrial Fibrillation Patients: Risk of Fall-Related Injuries and Syncope.

J Am Geriatr Soc. 2019 Jul 24

PMID: 31339174


P:65歳以上のAFの合計100935人の患者 年齢の中央値は78歳
E/C:レートコントロール薬単剤
レートコントロール薬2種類
不整脈薬単剤
レートコントロール薬+抗不整脈
レートコントロール薬→β遮断薬、ジルチアゼム、ベラパミル、ジゴキシン
不整脈薬→フレカイニド、プロパフェノン、アミオダロン
O:複合エンドポイント(失神と転倒に関連した負傷でどちらか早い方)
追跡中央値2.1年、後ろ向きコホート

 

【結果】
17132(17.0%)が転倒関連の傷害を経験 (転倒に関連した負傷の患者のうち、ほとんどが脆弱骨折であり n = 10 429 [60.9%])
5745(5.7%が失神を経験、
21093(20.9%)が転倒と失神のどちらかを経験

<複合エンドポイント>
レート単独vsレート2種類 0.90(0.87 to 0.93)
レート単独vs抗不整脈薬 1.29(1.17 to 1.43)
レート単独vs抗不整脈薬+レート薬 1.46 (1.34 to 1.58)

<転倒関連>
レート単独vsレート2種類 0.90(0.87 to 0.94)
レート単独vs抗不整脈薬 1.27(1.13 to 1.41)
レート単独vs抗不整脈薬+レート薬 1.36(1.24 to 1.50)

<失神>
レート単独vsレート2種類 0.91(0.85 to 0.98)
レート単独vs抗不整脈薬 1.44(1.22 to 1.71)
レート単独vs抗不整脈薬+レート薬 1.74(1.51 to 1.99)

<アミオダロン>
転倒関連:1.39(1.23 to 1.56)
失神:1.48(1.23 to 1.77)

<期間でみた転・失神による傷害リスク>
レートコントロール薬単独の14日以内:1.65(1.56 to 1.75)
不整脈薬単独の14日以内:2.33(1.87 to 2.91)

 

【感想】

こっちのサイトで全文見れる(2019.9.3現在)

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jgs.16062


レートコントロール薬は、転倒と失神どちらも増やす。その内失神の方が起こりやすい。
投与期間で見ると、抗不整脈薬の開始14日以内が(今回の比較の中で)一番転倒などのリスクが高かった。
もちろん、レートコントロール薬単独も開始14日以内が高いため、服薬初期の2週間はアフターフォローが必要である。
次の薬機法改定案の目玉でもある、「服用後フォロー」で積極的に介入する必要性を感じられた結果だった。

ESUSにはリバーロキサバンとアスピリンどっちがいいですか? PMID:29766772

<NAVIGATE ESUS試験>
N Engl J Med. 2018 Jun 7;378(23):2191-2201.
PMID: 29766772

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29766772

Rivaroxaban for Stroke Prevention after Embolic Stroke of Undetermined Source.

 

P:49歳以上 n=7213 スクリーング7日~6カ月間の間に画像で見られた脳梗塞患者(ラク脳梗塞除く)
50~59歳→高血圧などの血管リスク(+)の人を含めた
E:リバーロキサバン(15㎎1日1回)n=3609
C:アスピリン(100㎎1日1回)n=3604
O:有効性→脳卒中(虚血性、出血性、分類不明)、全身性塞栓症
安全性→大出血、致死的出血、頭蓋内出血

RCT,二重盲検、ITT解析

 

 

【結果】
<有効性>
リバーロキサバン:172人(5.1%/年)、アスピリン:160人(4.8%/年),HR:1.07(95%CI:0.87 to 1.33) P=0.52
脳梗塞→158人(4.7%/年)vs156例(4.7%/年),HR:1.01(95%CI:0.81 to 1.26)
出血性脳卒中→13人(0.4%/年)vs2人(0.1%/年), HR:6.50(95%CI:1.47 to 28.8)

<安全性>
大出血→62人(1.8%/年)vs23人(0.7%/年),HR:2.72(95%CI:1.68 to 4.39) P<0.001
生命に関わる/致死的出血→35人(1.0%/年)vs15人(0.4%/年),HR:2.34(1.28 to 4.29)
症候性頭蓋内出血:20人(0.6%/年),5人(0.1%/年),HR:4.02(1.51 to 10.7)

リバーロキサバンとアスピリンで有効性の差は無く、出血性はリバーロキサバンで多い
→ESUSは、心原性脳梗塞の割合は少ないかも。
またESUSを疑った場合は、初期はアスピリンの投与をして塞栓源を探る方が安全かもしれない

f:id:nitrotake8:20190826202430j:plain

 

参考
https://www.ebm-library.jp/att/trial/detail/62640.html

 

ESUSの過去の記事

 

http://nitro89314.hatenablog.com/entry/2019/03/03/004403

 

8月エビテンのスライド ~タムスロシンは白内障手術の影響を及ぼしますか?~

緑内障に抗コリンは使うか禁忌か?
この話題は、とても有名だが他にもタムスロシン辺りが眼科で注意した方がいいという話題を聞いたことがあったので、再度検索。

 

すると、こんなレビューが見つかりました。

α遮断薬の時代における10年間の術中フロッピー虹彩症候群

www.ncbi.nlm.nih.gov
PMID: 29732214

 

術中フロッピー虹彩症候群=術中虹彩緊張低下症候群(IFIS)
とはなにか?

白内障手術中に虹彩が柔らかすぎる状態になる」症候群
「手術中に虹彩がペナペナになる」症候群

手術中に虹彩の変化で炎症など様々な事が起こる事象をいくつかひっくるめたもの・・・ってことですね。

 

さて、
これをきっかけに、今回のエビテンでの論文を読んでみました。
J Cataract Refract Surg. 2007 Jul;33(7):1227-34.
PMID: 17586379

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=17586379

f:id:nitrotake8:20190825085655j:plain

結果として
n数が少ないのではないか?
オッズ比の幅が広すぎるのではないか? OR:32.15  95%CI:(2.74 to 377.11)
この文献だけで、白内障手術前の前立腺肥大症で、タムスロシン使用中の患者さんに対するアプローチをするには、根拠が薄いかもしれない。

 

しかし、
他にも、タムスロシンは
PMID:24314842  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubme 
E:タムスロシン(n=70)orアルフゾシン(n=43)内服中の、白内障手術予定の人
C:α遮断薬内服していない、白内障手術予定の人 n=113
O:IFISの発生率
【結果】
タムスロシン:34.3%(24/70)
アルフゾシン:16.3%(7/43)
対照:4.4%(5/113)
※タムスロシンよりアルフゾシンの方が多かった(P=0.036)

 

PMID:19454637 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=19454637

P:2002年から2007年の間に白内障手術を受けた66歳以上の男性をすべて n=96128
E:タムスロシン使用中 n=3550 他のα遮断薬 n=7426
C:α遮断薬なし
O:網膜剥離、水晶体または水晶体片の喪失、または眼内炎などのIFISの発生

【結果】
白内障手術14日前使用>
タムスロシン:7.5%対2.7%;OR:2.33(95%CI:1.22 to 4.43)
他α遮断薬:7.5%vs 8.0%;OR:0.91(95%CI、0.54 to 1.54)

白内障手術15~365日前使用>
タムスロシン:1.8%vs 1%;OR:0.94(95%CI:0.27 to 3.34)
他のアルファ遮断薬:2.9%vs2.1%、OR:1.08(95%CI:0.47 to 2.48)

白内障手術14日前のタムスロシン群は、有意にIFISの発生が高かった。

 

などで、

タムスロシンの使用でIFISの発生があり、注意喚起が必要と考えられる。
また、エビテンのキャス内でも教えていただいたのですが、ハルナール®の添付文書でも注意喚起が追加された模様です。

******
α1遮断薬を服用中または過去に服用経験のある患者において、α1遮断薬によると考えられる術中虹彩緊張低下症候群(IFIS)があらわれるとの報告がある。
(ハルナールD® 添付文書より)
******

このような記載があった事に全く気が付いていませんでした(汗)

 

今回も新しい発見がありました。 注意していこうと思います。

 

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【追記】 Twitterで、休薬が必要ないのかも?というつぶやきがあったので、本当なのか?調べてみました。

~2019/8/27~

①Curr Urol. 2012 May; 6(1): 1–7.  PMID:24917702 
BPHの人がタムスロシンを使っているとき、IFISを防ぐためには休薬提案が必要か?
→休薬が利点である事、休薬期間が確立されておらず、不明のまま

 

②Ophthalmology. 2007 May;114(5):957-64 PMID:17467530
BPHの人がタムスロシンを使っているとき、IFISを防ぐためには休薬提案が必要か?
→休薬提案よりも、タムスロシン使用中を眼科医に伝えればOK。 知っていれば合併症率は低いよう

 

【結論】

休薬を眼科医に提案をするよりも、白内障治療をしていると分かった時点で「この方タムスロシン服用中だよ」って情報提供をしておくといいのかもしれません。

また休薬の必要性を考えるにあたって、虹彩の変化はどうやら不可逆的変化のようで、「休薬したから一旦虹彩の柔らかさ戻ったぜ」って訳ではなさそうです。

その辺も考慮した更なる議論が必要なようです。

最上の明医~ザ・キング・オブ・ニート~を読んで

最上の明医ザ・キング・オブ・ニート~を読んで

根拠があるのか? どういった病態、疾患なのか?気になった部分を調べてみた

 

~第7巻 第54話より~

糖尿病の治療中は、痛み止めとの併用に注意が必要。
相互作用:SU剤とNSAIDアスピリン→血糖降下作用あり。
OTC販売時も注意が必要。
意識障害に注意

NSAIDSはATP感受性チャネル遮断において、インスリン分泌を促進させる。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2013967/

NSAIDS、アスピリンはSU剤と併用→血漿タンパク結合部位サイトⅠ(ワルファリンサイト部位)の競合にて、血糖降下作用を示す。
NSAIDS、アスピリン(結合強い)vs SU剤(結合弱い)→ SU剤遊離型増加→血糖降下作用up↑↑
http://ec.nikkeibp.co.jp/item/contents/brouse/t_212800.pdf
グリメピリド添付文書

 

~第6巻 第43話 蘆名の思い出~

PSVT(発作性上室頻拍)
WPW症候群などで生じることがある。 大半は元気な人が・・・
発作;突然。数年に1度~数カ月に1度
持続時間:数分~数時間
発作の回数を重ねていくと、発作の頻度と持続時間上昇が見られるよう。

迷走神経刺激で、落ち着かせる方法あり。
バルサルバ法
②頸動脈圧迫法
③冷水刺激
④眼球圧迫法

VOLUME 386, ISSUE 10005, P1747-1753, OCTOBER 31, 2015 動画あり。 
PMID:26314489
修正バルサルバ法;OR:3.7(2.3 to 5.8) P<0.0001

脳梗塞/50歳以上/動脈硬化疑いあり(高血圧・糖尿病・脂質異常症罹患)の場合は禁忌

 

~第3巻 22話 義明流信念~

門脈圧亢進症HVPG
①食道静脈瘤の発生→破裂したら吐血へ
脾臓の腫大→貧血症状(+)

門外門脈閉塞症
→新生児の時に臍カテーテル留置や臍炎の影響にて血栓生成の影響で、生じることあり。

<治療にβブロッカーorARB>
ARBはプロプラノロールとの群間差なし→(P=0.72)
→門脈圧亢進の症状に有効かもしれない
PMID:22333168

有意な変化なし→-0.63(-1.73 to 0.47)P=0.26
症候性低血圧 RR:4,13 (0.94 to 18.18)
門脈圧の変化は診られず、低血圧を増やすかもしれない
PMID:29470765

緑内障の治療に食事は関連がありますか?PMID: 29423897

8月のエビテンでネタを探しているときに出会ったレビューが気になって
緑内障と食事の関係性についてレビューを読んでみました。

www.ncbi.nlm.nih.gov

【出てくる略語】

IOP=眼圧
CAM=補完代替医療
POAG=原発性隅角緑内障

 

いきます!!!

BMI関連>
BMI上昇は、緑内障発症リスク上昇関連あり
横断研究+縦断研究ともに・・・。

ただ、POAGに関してはBMIとのはっきりした関係性のある結果は出ていない様子。

 

<DMとHTと脂質異常症との関連について>
DM単独のPOAG発症リスクHR:1.35(1.21 to 1.50)↑↑
HT単独のPOAG発症リスクHR:1.71(1.31 to 1.22)↑↑
DM+HTのPOAG発症リスクHR:1.48(1.39 to 1.58) ↑↑
脂質異常症のPOAG発症リスクHR:0.95(0.91 to 0.98)
脂質異常症+DMのPOAG発症リスクHR:1.13(1.05 to 1.21) ↑↑
脂質異常症+HTのPOAG発症リスクHR:1.09(1.15 to 1.12) ↑↑
PMID:21481477 (※コホート研究)

 

<アルコール>
アルコールの急性摂取は健常者or緑内障患者ともにIOP(眼圧)低下傾向
→視神経頭への血流上昇の影響かも?と言われている
PMID: 649922
PMID: 3714283

ただ、高アルコール摂取は緑内障発症リスクに正の相関が見られている
PMID: 7447769

 

<カフェイン>
カフェインの定期的な摂取→POAGの患者に対して、IOP(眼圧)が低い傾向あり
PMID:16276285

ただ、カフェインの摂取「量」とPOAG発症率をみた研究は少なく、エビデンス不足な様子

 

<お茶>
お茶→①ポリフェノール②カフェイン③ミネラル
そのうちポリフェノール緑内障に対してプラスの方向へ役割を働く様子。
PMID: 26340868
PMID: 26344732

またある横断研究でも示されていました。
PMID:29242183
E群;毎日熱いお茶を1杯摂取する
C群:摂取しない
O;緑内障発症率
OR;0.26(0.09 to 0.72) P=0.004 →緑内障発症率が74%下がった。

イチョウ葉エキス>
目の血流が上昇して→網膜神経節細胞の改善へ
PMID:10385132

一方、中国では軽度の視野欠損患者に対して投与してみた
→有効性は見られなかった
PMID:24282229


<まとめ>
現時点で、緑内障に対する治療において、食事が現在の薬物治療を始めとする標準療法を上回る効果の期待できず、補完代替治療として提供するには横断研究も多くエビデンス不足であると考えられる。