お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールで効果や副作用に違いはありますか? PMID: 38219278

Neuropsychopharmacol Rep. 2024 Jan 14. PMID: 38219278

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38219278/

【論文のPECO】
P:大うつ病 日本人
E:①ブレクスピプラゾール(BRE)②アリピプラゾール(ARI)
C:プラセボ
O:有効性、受容性、忍容性、安全性
T:SR&ネットワークメタアナリシス
【結果】
MADRS ①-0.224 (-0.378 to -0.070) ②-0.305 (-0.434 to -0.176)
差:-0.081 (-0.282 to 0.120)
アカシジア ①14.311 (4.177 to 49.024) ②5.948 (3.171 to 11.158)
比較:0.416 (0.104 to 1.657)
体重増加 ①3.198 (1.331 to 7.684) ②7.850 (2.748 to 22.426)
比較:2.455 (0.625 to 9.639)
 【コメント】
BRE と ARI はどちらもプラセボと比較して有効性を示したが、薬剤 2 剤間での明確な差は統計学的には示されなかった。
また、有害事象についてアカシジアと体重増加は 2 剤ともリスクがあったが、有効性同様に 2 剤間での差は示されなかった。 
日本では 2023 年 12 月に BRE によるうつ病への適応が追加となりました。 この結果だけでどちらが優れているという判断はし難く、今後の調査の結果を待たれたい。

SGLT-2阻害薬は、2型糖尿病患者さんの腎結石リスクを下げられますか? PMID: 38285598

JAMA Intern Med. 2024 Jan 29:e237660. PMID: 38285598

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38285598/

【論文のPECO】
P:2型糖尿病
E:SGLT-2i
C:①DPP4i/②GLP-1RA
O:腎結石の発生率
【結果】
①14.9 vs 21.3event  HR:0.69(0.67-0.72)
RD(発生率の差):-6.4(-7.1 to -5.7)
②14.6 vs 19.9event HR:0.74(0.71-0.77)
RD:-5.3(-6.0 to -4.6)
 70歳未満 vs 70歳以上 HR:0.85(0.79-0.91)RD:-3.46(-4.87 to -2.05)
【コメント】
SGLT2-i の使用が腎結石の発症リスクを下げる可能性が示唆された。
先行研究として PMID: 36349594 があり、こういった研究の結果が臨床的にも効果を示す可能性が見いだされたと考えられる。
治療に使うよりは、発症リスクの高い糖尿病患者において、僅かでもリスクを下げることが出来れば、結石による疼痛を避けることが出来、QOL向上に繋がる可能性を考えることが出来そうである。

参考:東北大学 2022年プレスリリース

腎結石の治療に新たな可能性 ~糖尿病治療薬(SGL... | プレスリリース・研究成果 | 東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY-

 

 

日本の統合失調症の死亡率はどのくらいですか? PMID: 38245575

Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol. 2024 Jan 20. PMID: 38245575
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38245575/
【論文のPECO】
P:日本の統合失調症患者(2013年1月1日~2017年12月31日までに山梨県立北病院で診断)
O:死亡率
【結果】
全てのSMR(標準化死亡率):2.18(1.76-2.60)
自然死SMR:2.06(1.62-2.50)
不自然死SMR:5.07(2.85-7.30)
男性 aOR:2.24(1.10-4.56)
年齢 aOR:1.12(1.09-1.16)
バルビツールの使用 aOR:8.17(2.07-32.32)

【コメント】

統合失調症の患者さんの死亡率が高い事が示唆された。また、性別においては男性、年齢が関連しており、薬剤ではバルビツールの使用があった。

現在の調剤薬局では、バルビツールを使用することは少ないため外的妥当性は小さいが、性別については特に注意して介入する必要があるのかもしれない。

 

HFrEF の慢性心不全患者に歩行を促すとどうなりますか? PMID: 37955615

Circulation. 2024 Jan 16;149(3):177-188.PMID: 37955615
The WATCHFUL Trial

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37955615/

【PECO】
P:HFrEF(EF>40%)・NYHAⅡ-Ⅲの慢性心不全患者 18歳以上
E:月に1回のTELカウンセリング+歩数を増やすように推奨 n=101
C:通常の治療 n=101
O:6ヵ月後の6MWT(6分間歩行テスト)中に歩行した距離のグループ間の差異
【Results】
歩行距離平均差 7.4メートル(-8.0 to 22.7)P= 0.345
歩数/日 1420歩(749-5091) 631.4歩vs790歩
身体活動時間 8.2min(3.0-13.3)0.4min vs 4.9min
【Background】
身体活動、つまりリハビリはHFrEFの管理の基本です。 
(JCS/JACR 2021 Guideline on Rehabilitation in Patients with Cardiovascular Disease)
心血管疾患を持っている患者に対して、身体活動によるフィードバックを活用することで、歩行活動や身体活動の増加に役立つという報告があります。(PMID:37433730)そのような介入をライフスタイル介入と言い、この介入がHFrEFの患者の歩数の増加などの変化が生じるのかどうか?またその増加が機能的能力の向上に関わるかどうかを調査した。
【comment】
ライフスタイル介入によって歩行距離が増加したが、統計学的な差は示されなかった。
この介入が直接的な心血管イベントリスクの改善につながったかどうかは不明ですが、HFrEFの患者に対する介入は、歩行や運動を習慣づけるきっかけとして十分に役立つと考えられる。 
このような運動習慣を保つことは、無理のない範囲のリハビリテーションに繋がる可能性があり、将来的な心血管イベントリスク減などのアウトカム評価に繋がる可能性が示唆される。 今後の更なる結果が待たれたい。

 

SGLT-2i の中止で多い中止理由はなんですか? PMID: 38002608

J Clin Med. 2023 Nov 9;12(22):6993.PMID: 38002608

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38002608/

【論文のPECO】
P:2型糖尿病患者 新規SGLT2-i 開始 (2014年1月から2021年9月)KAMOGAWA-A コホート n=766
O:中止の理由
・後ろ向きコホート研究
【結果】
頻尿:19人(19.6%)
性器感染症:11人(11.3%)
腎機能障害:8人(8.2%)
尿路感染症:7人(7.2%)
倦怠感:4人(4.1%)
消化器障害:4人(4.1%)
体重減少:5(5.2%)
糖尿病性ケトアシドーシス:3人(3.1%)
薬物アレルギー:3人(3.1%)
不明:23人(23.7%)
血糖コントロール改善:10人(10.6%)
【コメント】
SGLT-2i による中止は頻尿が多かったことが明らかになった。 
SGLT-2i は使用することで各心血管イベントを減らし、死亡率を減らすことが出来るが、中止してしまっては、それらによる恩恵を受けることが出来ない。 その為には頻尿による中止をいかに避けることが出来るかアプローチが必要と考えられる。 
本試験の筆者によると、SGLT-2i 開始前の頻尿や下部尿路状況を把握しておき、水分摂取、塩分摂取などを整理しておく必要があるかもしれないと論じている。

 

JAK 阻害薬は心血管イベントを減らしますか? PMID: 37910098

JAMA Dermatol. 2024 Jan 1;160(1):28-36. PMID: 37910098

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37910098/

【論文のPECO】
P:皮膚疾患(アトピー性皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、白斑 、円形脱毛症) 35件のRCT
E:JAK-i(トファシチニブ、アブロシチニブ、バリシチニブ、ウパダシチニブ、ライトレシチニブ、デルゴシチニブ、ルキソリチニブCr)
C:プラセボ
O:MACE+全死亡率(all mortality)
【結果】
OR:0.83(0.44-1.57)I^2=0%
VTE OR:0.52(0.26-1.04)I^2=0%
【背景】
IMID(皮膚の慢性免疫介在性炎症性疾患)は、重篤なMACEやVTE、重篤感染症、死亡リスクなどの増加に関連していると考えられている。
 乾癬とJAK-iについては(PMID: 33795041)、
アトピー性皮膚炎(以下、AD)とCVDリスクについてはこちらのマッチングコホート(PMID: 29792314)で、重度のADの脳卒中リスク HR:1.22(1.01-1.48)、HFリスク HR:1.69(1.38-2.06)、不安定狭心症リスク HR:1.48(1.08-2.03)などと関連性があった。
【コメント】
ADなどの皮膚疾患とCVDなどによる死亡リスクについて懸念があったが、そのADなどについてJAK-iで治療を行った場合、CVDを含めたMACE+ all mortality にどの様に影響を及ぼすのか調査をしたが、結果としてプライマリーエンドポイントに差が付かなかった。
またVTEについても差が示されなかった。 しかし、各リスクを増加させなかったと見ることも出来よう。(減少傾向だが、差が無かった)
今後の更なる試験結果を追っていく必要があると考えられる。

 

透析患者にデノスマブは低Ca血症が起こりやすいですか? PMID: 38241060

JAMA. 2024 Jan 19.PMID: 38241060

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38241060/

【論文のPECO】
P:透析を受けている骨粗鬆症の治療をしている65歳以上の女性
E:デノスマブ療法 60㎎
C:BP療法(アレンドロン酸、リセドロン酸、イバンドロン酸)
O:重度の低Ca血症発生率
【結果】
12週間加重累積発生率
41.1%(607/1523)vs2.0%(29/1501)
加重リスク差:39.1%(36.3%-41.9%)
加重リスク比:20.7%(13.2-41.2%)
RR:20.55
ARR=ー39.1
NNH=2.56
デノスマブ治療群:低カルシウム血症患者 65.8%(n = 361/549)
90日目までに正常(>8.5 mg/dL [>2.12 mmol/L])に戻った
透析の種類での差は見られなかった。HD 41.5%vs2.1%、PD:36.6%vs0%
【コメント】
透析と骨粗鬆症治療を受けている65歳以上の女性に対して、デノスマブを使用すると2人治療すると1人が重度低Ca血症になる可能性が示された。
デノスマブを使用する場合は、慎重な管理が必要となる可能性がある。