お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

市中肺炎にβラクタムとマクロライドの併用ってどうですか? ~12月エビテン~

エビテン12月

今回のテーマは抗菌薬でした。

例えば、

咳で受診→アジスロマイシン錠
数日後、症状悪化で再度受診→オグサワ+アジスロマイシンSR

などといった場合、抗菌薬の重ねは良いのだろうか?
推奨される使い方なのだろうか疑問に思い調べてみました。

 

【使用した文献】

Effect of Combined β-Lactam/Macrolide Therapy on Mortality According to the Microbial Etiology and Inflammatory Status of Patients With Community-Acquired Pneumonia.
Chest. 2019 Apr;155(4):795-804.
PMID: 30471269

【論文のPECO】
P:市中肺炎で原因菌が判明している N=1715
E:βラクタム+マクロライド(併用群)N=932
C:フルオロキノンorβラクタム単独 N=783
O:30日間の死亡率

【結果】
① 30日間の死亡P=0.015(5%vs8%)
② 肺炎球菌CAP OR:0.28(0.09-0.93)
CRP:>15㎎/dL

【コメント】
市中肺炎による死亡を防ぐために併用はありだと思います。
ただし今回の論文はアブストのみで、罹患年齢やどの程度の症状をみて併用を選択するなど分からない情報もあるので、解釈に注意。原因菌が分かっている状態での比較だったので、現実的なのは外来治療というより入院治療だと予測しました。または呼吸器専門の先生の内科外来ならあり得るのかもしれませんね!

 

今回もやっとしたのは(大切なこと)配信中に教えていただいた、
①成人肺炎診療ガイドライン2017
CQ07 CAPのエンピリック治療において、非定型病原体をカバーした抗菌薬の使用は推奨されるか? →A実施することを弱く推奨する

CQ08 CAPのエンピリック治療において、βラクタム系薬にマクロライド系薬を併用することは推奨されるか? →A実施しないことを弱く推奨する

 

ともあり、

細菌性肺炎か非定型性肺炎かが明らかでない場合は,高用量ペニシリン系薬+マクロライド系薬またはテトラサイクリン系薬の併用治療を第一とする
http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/guideline_jaid_jsc.pdf
JAID/JSC 感染症治療ガイドライン―呼吸器感染症

ともありましたので、まだ確立されてないんだなという印象を抱きました。


他にも調べたら、こんな文献もありました。
Antibiotic treatment strategies for community-acquired pneumonia in adults.
N Engl J Med. 2015 Apr 2;372(14):1312-23.
PMID: 25830421

【参考】
http://jja-contents.wdc-jp.com/pdf/JJA64/64-3/64-3_117-124.pdf
肺炎治療におけるマクロライド系薬の併用療法を考える

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