お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

痛風発作時は高尿酸血症治療薬使っても大丈夫ですか? PMID: 38215627

痛風発作時の尿酸値低下療法開始の効果に関するランダム化比較試験の最新のシステマティックレビューとメタアナリシス

Semin Arthritis Rheum. 2024 ;65:152367. PMID: 38215627

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38215627/

 

【論文のPECO】

P:痛風発作中の成人(18歳以上)
E:痛風発作中の尿酸降下療法(ULT)の早期開始(アロプリノール、フェブキソスタット、プロベネシドを使用)
C:痛風発作中のプラセボまたはULTの遅延開始
O:患者が評価した疼痛スコア、痛風発作の期間、痛風発作の再発

【結果】

<疼痛スコア>
3-4日目 -0.01(-0.21 to 0.18)I2=0% p=0.88
7-8日目 0.07(-0.13 to 0.27)I2=0% p=0.50
10日目 -0.11(-0.49 to 0.28)I2=0% p=0.59
14-15日目 -0.08(-0.36 to 0.20)I2=0%  p=0.57
痛風発作の期間>
0.77日、(95%信頼区間 -0.26 to 1.79) I 2 =0%、p  = 0.14
痛風発作の再発>
1.06(0.59-1.92)I2=0% p =  0.84

 

【コメント】

痛風発作時は通常、尿酸値を下げることにより疼痛が増すことが考えられており尿酸降下療法(ULT)は中止とされている。
また、高尿酸血症痛風の治療ガイドラインでは、「痛風関節炎に対する治療を行い、十分鎮静した後、病型や合併症を勘案して、尿酸降下薬を選択する」と記載がある。ただ実際は疼痛時にもULTを行うことがあるようだ。そこで本研究は、痛風発作時のULT開始の効果を評価するために行われた。
結果として、疼痛時にNSAIDsなどと併用しても疼痛スコアが有意に上がることも下がる事もなかった。 また発作期間、再発率についても統計学的に有意な差はなかった。 このことから、疼痛時に併用することを推奨する程度のインパクトはなく、尿酸値のコントロールも重要視している場合は併用もありうると考えられる。

 

 

 

転倒リスクのないひとは安全ですか? PMID: 40139220

Age Ageing. 2025 Mar 3;54(3):afaf064.PMID: 40139220

リンク

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40139220/

【論文のPECO】

P:65歳以上の高齢者 n=403
E:転倒リスク無しと判断された人 n=120
C:転倒リスク有りと判断された人 n=283
O:転倒率と転倒後の負傷率


【結果】

転倒率:41.3% vs 64%
aIRR:3.91(95%CI,3.30-4.64)P<0.001
負傷率:59.7% vs 63.2%
aIRR:1.26(95%CI,0.93-1.71)P=0.11

(1年後追跡)
転倒率:31.1% vs 50%
aIRR:2.43(1.93-3.06)P<0.001
負傷率:50% vs 41.7%
aIRR:1.17(0.73-1.85)P=0.50
(2年後追跡)
転倒率:35% vs 55%
aIRR:2.98(2.44-3.65)P<0.001
負傷率:60.6% vs 57.6%
aIRR:1.31(0.92-1.86)P=0.13
E群は歩行速度が遅いと転倒発生率が約2倍高まった
aIRR:1.83(1.12-3.91)P=0.008


【背景】

平均年齢 73.9歳
女性:62.4%
STEADIアルゴリズムを用いたリスク層別化
平均歩行速度 1.1m/s
傷害を伴う転倒とは、裂傷、打撲、関節損傷(例:腫れ、関節脱臼)、骨折、頭部外傷など、目に見える皮膚損傷を伴う転倒、あるいは救急外来(ER)または外来治療を必要とするほど重篤な損傷を伴う転倒と定義

 

【コメント】

アルゴリズムで転倒リスクが無いと判断された人は、確かに転倒リスクは少ないが負傷リスクは変わらなかった。
転倒のアルゴリズムでは転倒回数や筋力、バランスなどでリスクを評価しているが、歩行速度は評価に含まれていなかった。
この歩行速度が遅いと、転倒リスクまたは転倒による負傷リスクが高まる可能性を考慮する必要がありそう。

高齢者の転倒の20%程度は怪我をしているというデータがあり、けがは歩行の障害や廃用症候群を引き起こすことが知られている。 そのため転倒に対するアプローチが必要となってくる。アプローチをかける対象は通常なにかしらのガイドラインなどのアルゴリズムで層別化され、高リスク(ここでは転倒リスク群)となった集団に対してアプローチをかけていくことになる。 
しかし、低リスク群はアプローチをかけなくてよいのかどうか? を考えてみるのに役に立ちそうである。

 

関節リウマチの治療に低用量プレドニゾロンを2年間続けても大丈夫ですか? PMID: 35641125

Ann Rheum Dis. 2022 Jul;81(7):925-936.PMID: 35641125

リンク

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35641125/

【論文のPICO】

P:65歳以上の活動性RA患者
I:プレドニゾロン5 mg/日を2年間 n=224
C:プラセボ n=225
O:疾患活動性(疾患活動性スコア、DAS28、コプライマリー)および関節損傷(Sharp/van der Heijde、セカンダリー)有害事象


【結果】

年齢72歳、罹病期間11年、DAS28 4.5の患者451名
DMARD:疾患修飾療法(79%)
生物学的製剤を服用(14%)
主要評価  DAS28:平均 -0.37(95%CL,0.23)
有害事象:60%vs49%
aRR:1.24(95%CL: 1.04)p = 0.02
AE の増加は感染症で最も顕著
28.9 vs 21.9/100人年


【コメント】

プレドニゾロンを2年間使用することで、疾患活動性は弱まる傾向にある。
有害事象では、感染症が最も多かった。 日常臨床では感染症の中で肺炎予防に焦点を当ててST合剤を併用することが多いくらい肺炎の発生率が高いと思われたが、肺炎の発生頻度は低かった。また、骨折は評価に含まれていなかった。
ベースラインでメトトレキサートに限らず、生物学的製剤やDMARDなど最新の治療法を行っていることもあり、ベースラインの治療効果もあり、プレドニゾロン 5㎎/日の純粋な効果とは判断が出来ず、過大評価に注意が必要だと考えられる。

DAS28(ダス28:Disease activity score 28)とは・・・
圧痛関節数、踵脹関節数 ※28関節
CRP (mg/dl) か ESR (mm/hr)
患者による全般的評価(VAS)
軽症になるにつれて数字は小さくなる

CKDなど高リスクの2型糖尿病の人に、経口セマグルチドはリスクを下げますか? PMID: 40162642

N Engl J Med. 2025 May 29;392(20):2001-2012.PMID: 40162642

【リンク】

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40162642/

【論文のPICO】

対象者 50歳以上/HbA1c6.5-10.0のT2DM/動脈硬化、CKD
介入 標準治療+経口セマグルチド
比較

標準治療のみ

評価項目 複合(心血管死亡率、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中

ランダム化→無作為化している
盲検化→している
1次アウトカム→明確
真/代用→真
ITT解析→してる

<ベースライン>

平均年齢 66.1±7.6歳
女性 28.90%
脂質低下薬 88%
抗血小板薬 77%
β遮断 64%

【結果】

  ハザード比 95%信頼区間
主要アウトカム 0.86 0.77-0.96
非致死性心筋梗塞 0.74 0.61-0.89
非致死性脳卒中 0.88 0.70-1.11
全死亡率 0.91 0.80-1.02
心血管死亡率 0.93 0.80-1.09

【コメント】

CKDや動脈硬化などの高リスク2型糖尿病患者に対する経口セマグルチドの効果について、死亡などを含めた複合主要評価項目は有意にリスクを下げる傾向がみられた。 その内訳は心筋梗塞のリスク減が主に牽引していた。

腹部肥満のある女性のヨガでダイエット出来る? PMID: 27776622

Dtsch Arztebl Int. 2016 ;113(39):645-652.PMID: 27776622

【リンク】

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27776622/

【論文のPICO】

対象者 腹部肥満のある女性
介入 ヨガプログラムの実施 n=40  (週2回90分)
比較 ヨガのプログラムに参加しない  n=20
評価項目 エスト周囲径の変化、および他の身体計測値や自己申告変数
期間 12週間


【評価】

RCTのデザインは適切か?: 本研究はランダム化比較試験(RCT)として設計、適切
無作為化の方法は適切に実施されているか?: されている
盲検化(マスキング)は適切に行われているか?: 盲検化されている
アウトカム評価者の盲検化はされているか?: 盲検化されている
ITT解析(intention-to-treat解析)が行われたか?: ITT解析されている

【background】

平均年齢:47.8±8.2歳
平均ウエスト周囲径:104.3±10.3cm
平均BMI:34.2±5.4

【Results】

平均ウエスト周囲径差:-3.8(-6.1 to -1.5) P=0.001
体重:-2.4(-4.0 to -0.9)P=0.003
BMI:-0.8(-1.4 to -0.2)P=0.008
研究期間中にカロリー制限ダイエットを始めた参加者はいなかった

【コメント】

12週間と短い期間の介入であるが、ウエスト周囲径や体重、BMIなど変化に有意な差が表れた。
令和5年国民健康・栄養調査報告にあげられている日本人の平均体重やBMIを参考に見ると、かけ離れた対象者であったため、日本人女性に対する外的妥当性は低いと考えられる。  
日本の(女性)40-49歳 平均体重: 55.5㎏、平均BMI: 22.27 
女性腹囲分布 <90cm: 86.5% ≧90cm:13.5%
(令和5年国民健康・栄養調査報告  https://www.mhlw.go.jp/content/001435374.pdf より)
しかし、ヨガの実施による有害事象が少ない事、体重やBMI減少は将来的な心血管疾患の緩和に繋がる可能性から、推奨しても良いと考えられる。

 

SGLT-2阻害薬を選ぶならどれがいい? PMID: 39836397

JAMA Intern Med. 2025 Jan 21. PMID: 39836397

【リンク】

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39836397/


【論文のPICO】

対象者 SGLT-2阻害薬を服用している患者
介入 エンパグリフロジン
比較 カナグリフロジン、ダパグリフロジン
評価項目 複合(心筋梗塞脳卒中心不全入院

2次アウトカム;
試験デザイン:TTE(target trial emulation) 


【結果】

カナグリフロジン:232890人
ダパグリフロジン:129881人
エンパグリフロジン:295043人

MI/stroke ハザード比 95%信頼区間
vsカナグリフロジン 0.98 0.91-1.05
vsダパグリフロジン 0.95 0.89-1.03
     
心不全入院 ハザード比 95%信頼区間
vsダパグリフロジン5㎎ 1.30 1.12-1.50

AE
性器感染症 vsカナグリフロジン HR:0.94(0.91-0.97)
重度の尿路感染症 HR:1.13(1.03-1.24)
vsダパグリフロジン 性器感染症 HR:0.92(0.89-0.95)、DKA HR:0.78(0.68-0.90)

【コメント】

アブストのみである。 

本研究の試験デザインは、TTE(target trial emulation)という観察研究を集めてRCTを模倣して因果推論を行う手法である。 
1次アウトカム評価では3剤のリスクは同等であった。
また心不全入院はダパグリフロジン5㎎が有意に高い傾向にあった。
性器感染症はダパグリフロジンが有意に減少した。
以上の事から、3剤の内投与計画を立てる段階では、どれを選択しても心血管リスク(今回はMI/stroke)を減らす目的としては達成する可能性が高いと考えられる。しかし、尿路感染症などトラブルがあれば、ダパグリフロジン以外を使っていればこちらに変更する提案を行っても良いかもしれない。 

服薬遵守の改善に行動ナッジは使えますか? PMID: 39621340

JAMA. 2025 Jan 7;333(1):49-59. PMID: 39621340

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39621340/


【論文のPICO】
P:対象:18歳~90歳未満患者、条件:心血管疾患、治療薬を処方(+)n=9501 人
I:テキストメッセージリフィルリマインダーの使用
①一般的なリマインダー
②行動的ナッジ
③行動的ナッジ + チャットボット
C:通常のケア
O:12か月後の服薬遵守率
【吟味point】
ランダム化しているか→している
盲検化しているか→不明(アブストのみ)
ITT解析しているか→不明(アブストのみ)
【結果】
平均年齢60歳、女性:47% 男性:53%
リマインダーのみ 2.2ポイント(95% CI, 0.3-4.2; P=0.02)
行動的ナッジ 2.0ポイント(95% CI, 0.1-3.9 P=0.04)
行動的ナッジ + チャットボット 2.3ポイント(95% CI, 0.4-4.2 P=0.02)
【コメント】
心血管疾患の服薬遵守については様々な報告がある。 例えば、高血圧の服薬遵守に関するSR&メタ分析(PMID:28121920)では、45.2%という報告があり約半分近くの人が服薬遵守が守られていないといった現状がある。 こういった現象に対してテキストマインドを使ったり、お薬カレンダーを使ったり、一包化したりと様々な取り組みが行われている。 今回は、患者の行動を変えるためのテキストメッセージが服薬遵守に影響を与えるのかどうかを調査された。 
今回は、アブストのみである。
対象となったのは18歳から90歳未満までと幅広い世代で、1つ以上の心血管疾患を有し、服薬を行っている患者さんが9501人 男女比はほぼ50:50。
介入方法として3つ。1つ目はテキストによるリマインダー 2つ目は行動ナッジを活用したリマインダー 3つ目は固定メッセージのチャットボット(つまり、AIみたいな感じ??)と行動ナッジの併用したリマインダー。比較は、通常のケア。
結果、 テキストによるリマインダーが2.2ポイント、行動的ナッジ 2.0ポイント、行動的ナッジ + チャットボット 2.3ポイントとなった。 点推定でみてみるとどれかが特別良いという感じはなくあまり変わりない、信頼区間を取ると、全て有意差が無いという結果であった。 

 

行動ナッジとは、行動経済学とかでも理論的に考えられた「ちょっと行動を促すのをヘルプする」くらいのやつだが、意外とそんなに影響を与えないかもしれない。
そもそも現代はテキストリマインダー=「溜まりまくっているメールやLINEの通知」「レセコンでの禁忌や併用注意のポップアップをクリックで飛ばす」感じで、見慣れすぎてくると「はいはい」って感じになるってしまうのでは。今の人は通知に麻痺/通知疲れが出てしまい、服薬遵守の改善には、もはやリマインダーが死語みたいな感じで機能しなくなっているというのが今回の結果で出たのかもしれない。とても2025年を生きている感じがして面白い気がする。