お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

10月始めのクリニカル・クエスチョン

友人と共有しあっているクリニカル・クエスチョンを本日は載せたいと思います。

私の現場とは違うところにいるので刺激的ですね?

 

ミルラクト細粒は何歳まで使いますか?

ミルラクト細粒を分2で出た時は本当に効いているのですか?

 

耳鼻科領域での耳鳴り治療にエスシタロプラムが出るが、他のSSRIは有効ですか?

 

不妊治療でレトロゾール2錠分2で服用して、排卵を狙う症例があるが、成功率はどの位ですか?

 

ケミカルコーピングでオピオイドの増量と抗不安の使い分けはどこで判断しますか?

 

過呼吸ロラゼパムの頓服は有効ですか?

化学療法におけるロラゼパム投与は予期性悪心の予防目的と不安感や不眠を目的とするのどちらですか?

 

声帯炎の治療に適したステロイド吸入薬の種類、デバイスが有効ですか?

 

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本日は以上です。

先生方の勉強のとっかかりの参考になれば幸いです。

足白癬について

足白癬=水虫

足底や趾間など皮膚の角質に皮膚糸状菌が寄生して生じる疾患。

必ず痒み・・・☓

 

①趾間型

②小水疱型

③角質増殖型

 

基本は外用薬

ラミシール、ルリコン、ゼフナート、アスタット

 

<足白癬の治療について>

CQ。どの薬剤を用いるのが良いの?

CQ。一番良いってなに? 

CQ。もしどれを選んでもそんなに効果が変わらないならば、どうして数種類も選択肢があるの?

CQ。菌種によってバラつきはありませんか?

CQ。足を水(お湯)で流して洗うだけ+外用薬使用群と石鹸で泡立てて洗う+外用薬使用群で差はありますか? その時のアウトカムは治療期間ですか? 一定の期間での菌種の減り方ですか?

 

今日のクリニカル・クエスチョン

<カルシウム拮抗薬やテオフィリンで歯肉増殖について>

CCBやテオフィリンによる歯肉異常の頻度はどの位ですか?

歯科医は薬物による副作用が疑われる歯肉異常の症例は見たことありますか?

その副作用の報告は処方元だけで良いですか?かかりつけの歯科医に伝えるべきですか?

その伝え方は医師への伝え方、文書でいいですか?

薬剤師からの歯科医への情報提供による歯科受診は医師でいう紹介状のようになりますか?

 

<抗コリン薬と口渇について>

口渇に対してうがいは副作用対策になりますか?

口渇に対してうがいは虫歯対策になりますか?

どの位の口渇で虫歯が増えますか? 口渇のスコアリングはありますか?

口渇と虫歯に対する論文や症例はありますか?

どのくらいの口腔内の潤いで虫歯は減りますか? 潤いで虫歯は増えませんか?

唾液が増えると口腔内は本当に潤いますか?

シェーングレーン症候群の口渇がある人は虫歯が増えましたか?

例えば、「抗コリン薬→口渇→虫歯」の流れがあったら歯科受診の時に抗コリン薬服用を伝えるべきですか?

歯科医は虫歯診療の時に抗コリン薬の服用有無を確認していますか?

 

アメナメビルの第Ⅲ相臨床試験を読んでみた

 

 

 

 

9月7日に発売された新薬 帯状疱疹の新作用機序のアメナメビルが気になったので探してみた。

 

アメナリーフ®(アメナメビル)200㎎錠

【用法用量】400㎎分1

ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬。(VZVが増殖する際の複製時にmRNA合成時に作用する複合体を阻害する)

今まで:プリン体構造→翻訳を阻害する

アメナリーフ:転写を阻害する+RNAプライマーの合成阻害

<第3相臨床試験結果 PMID:28681394>

論文のPECO

P:20~80歳、皮疹発現72時間以内の患者、帯状疱疹の患者

E:アメナメビル200㎎(250例、400㎎:502例)

C:VACV 3000㎎(249例)

O:1次アウトカム(主要的評価項目):試験薬投与開始4日目までの新皮疹形成停止率(新皮疹形成停止が認められた患者の割合)

副次的評価項目:新皮疹形成停止までの日数、完全痂皮化までの日数、治癒までの日数、疼痛消失までの日数、ウイルス消失までの日数

・有害事象(自覚症状及び他覚所見、臨床検査値の異常変動、バイタルサインの異常変動及び心電図の異常所見)、臨床検査値、バイタルサイン及び心電図

 

研究デザイン:RCT、double blind、非劣性試験(非劣性マージン△:10%)

【結果】1次アウトカム

アメナメビル(400㎎):197/243=81.1%

VACV(3000㎎):184/245=75.1%

95%CI 7.1%(-0.2%~14.4%)P<0.0001

-△(下限マージン)が-10%を超えていない+0を跨いでいる→非劣性と言える。

 

以上です

読んで頂きありがとうございました。

論文検索を中心としたワークショップ

今回、論文検索方法を中心に行うワークショップに参加してきました。

今回の内容のポイントとして、論文検索データベースの特徴を知ることで、目的にあった論文にたどり着きましょう!という意図を感じました。

 

はい、質問!! “よく使うデータベースって何ですか?”

PubMedでしょ! と思っていたのですが、そこが根本的に間違っていました。

PubMed検索エンジンでした よく用いるのだとGoogle先生ですね

このように検索の入り口を「検索サービス」という表現。

 

じゃあPubMedはどこを探しているの?ってことになりますよね

探しているのは「MEDLINE」。これは言わば本です。論文が載っている分厚~い辞書

このMEDLINEを「データベース」と表現。

やっとたどり着いた!!

つまり“MEDLINEという本をPubMedという検索エンジンで探している”

これが普段行っている“パブる”“ググる”って行為

 

そうなると1つの本ばかりを捲っても同じ論文ばかりしか出てこない。目的にあった論文が出てこないことが起こることが考えられます。

そうしたらデータベース=本を変えればいいんです

例えば、よく用いられるのが「EMBASE」ですね。 基本有料なので個人では厳しいかも

 「EMBASE」の検索エンジンは「EMBASE」らしいです。分かりやすいような分かりにくいような。。。

 

で、英語!!!!

英語が読めないなら、Google翻訳しまくる

あとは①循環器②抗血小板療法③糖尿病にかかわる部分を調べたいならば、各トライアルデータというのがあります。 ここは大まかな導入としては日本語なので、ここから入っていくのも1つの手です。

 

また、最近は様々な先生方の手で翻訳されているコクランライブラリーもあります。ただ翻訳されている文献には限りがあるので、探しているものはやっぱり英語だったなんて経緯もあると思われます。

 

ざっくりと自分の備忘録も含めて書かせていただきました。

ここまで読んで頂いてありがとうございました。

NASH(非アルコール性脂肪肝炎)にビタミンEは有効ですか?

ウルソの事を調べていたら、NASHこと非アルコール性脂肪肝炎にたどり着きました。

そういえば国試の勉強でもちらっとしか触れていないなと思い出し、治療法って何だろう。。。

そう思い、まずはガイドライン検索

「NAFLD/NASHガイドライン20014」がヒット

治療法を見てみると、ビタミンEエビデンスレベルA、UDCA(ウルソ)がエビデンスレベルB、チアゾリジン系誘導体(ピオグリダゾン)がエビデンスレベルA

あれ?ここでもまたピオグリダゾン出てくるんですね

そしてビタミンEが意外な存在でした。本当にそうなんでしょうか?

少し疑問が湧いてきたので論文を検索。

 

Pioglitazone, vitamin E, or placebo for nonalcoholic steatohepatitis.

PMID:20427778

Pioglitazone, vitamin E, or placebo for nonalcoholic steatohepatitis. - PubMed - NCBI

【論文のPECO】

P:平均年齢46.3歳の2型糖尿病ではない非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を患っている人(n=247人)

E:①ビタミンE(800IU/日)を投与する場合と ②ピオグリダゾン(30mg/日)を投与する場合と

C:しない場合では(プラセボと比べて)

O:肝臓の組織学的改善はしますか?

 

ランダム化されているかーされている

1次アウトカムは明確化かー明確である  

真のアウトカムかー 真のアウトカム(ココ少し自信がありません)

盲検化されているかー二重盲検化されている

ITT解析されているかーされている

追跡率ー全員追跡とみられる(Figure1を見ると各薬剤最後まで追っているよう)

【結果】

Bonferroni法でP値0.00250.025未満を有意差とした

         0.05(有意水準)/2(検定数)=0.025

<primary outocome>

プラセボビタミンE=19%:43% (P=0.001)NNT=4.2

プラセボ:ピオグリダゾン=19%:34% (P=0.04)NNT=6.9

 

【感想】

主要なアウトカムだけ書き出してみました。

この結果では確かにビタミンEは有意差が出ています。

NASHの原因に酸化ストレスによって線維化が進むということがあるそうなので、抗酸化作用を狙ったと言ったところでしょうか

ユベラ®ってこういうところにも使われていたんですね。

 脂溶性ビタミンのためいくらビタミン製剤でも投与しとけば良いという考えにはなうりませんが、こういった有意差のある結果がエビデンスがあるならば、積極的に使用しても良いと思います。

 

 

ちなみにこういう論文もありました。

NASHにウルソデオキシコール酸(UDCA)+ビタミンE

Randomized placebo-controlled trial of ursodeoxycholic acid with vitamin e in nonalcoholic steatohepatitis.

Randomized placebo-controlled trial of ursodeoxycholic acid with vitamin e in nonalcoholic steatohepatitis. - PubMed - NCBI

 PMID:17162245

時間があれば読んでみます。

DPP4阻害薬は骨折リスクを増加させますか?

糖尿病トライアルデータベースで気になるものを見つけました。

ピオグリダゾン(チアゾリジン系)がPPARγを介して、腎尿細管の近位と遠位でNa再吸収を促進させて浮腫を増加させる

また女性にPPARγの発現が高いことが、女性にピオグリダゾン投与すると浮腫が多い原因になっているのかも?

 

ここまで調べていたら

チアゾリジン系のインスリン抵抗性改善薬は,骨折を増加させることが知られている。一方,GIPは骨芽細胞を活性化し,GLP-1は齧歯類の骨減少症を伴うモデルでは骨密度を増加させることが報告されており,DPP-4阻害薬は骨代謝を改善し骨折を減少させることが期待されている

Driessen JHM, et al. | 糖尿病トライアルデータベース より引用

と記載を見つけました。

そこにある論文がメタ分析でした。

メタ分析に挑戦してみようと!

 

PMID:27321347

P:EMBASE、MEDLINE、EMA、WHO ICTRPデータベースを用いたn=36402

E:DPP4阻害薬を服用するのと

C:服用しないのでは

O:骨折リスクは増えますか?

【結果】

DPP4阻害薬vsプラセボ→OR:0.82(0.57-1.16)

DPP4阻害薬vs活性型比較→OR:1.59(0.33-2.80)

 

PMID:22025784

P:n=9175のメタ解析

E:DPP4阻害薬を投与するのと

C:①プラセボと比べると ②SU剤投与と比べると

O:骨折リスクは増えますか?

【結果】

DPP4阻害薬vsプラセボ→OR:0.60(0.37-0.99)

DPP4阻害薬vsSU剤→OR:0.56(0.33-0.93)

 

PMID:27943565

P:インスリン以外の糖尿病治療薬が使用された18歳以上の2型糖尿病患者n=328254(DPP4阻害薬使用:46355例)

E:DPP4阻害薬を投与した糖尿病患者と比べて

C:他の治療薬を用いた糖尿病患者は

O:骨折リスクは高いか?

【結果】

DPP4阻害薬使用のすべての骨折リスク:HR:0.99(0.93-1.06)

DPP4阻害薬4.0~8.5年使用した患者の骨折リスク:HR:0.99(0.70-1.41)

4.0~8.5年使用した患者の骨粗しょう症の骨折リスク:HR:0.75(0.52-1.09)

4.0~8.5年使用した患者の股関節骨折のリスク:HR:1.24(0.85-1.79)

 

骨折リスクを真のアウトカムと判断するべきなのか迷いました。

骨密度やYAMとかならば代用アウトカムと判断しますが。。。

 

3つの結果を読むと、骨折リスクを上げることも下げることもないと思われます。

(有意差ないので)

インクレチンのうちGIPが骨芽細胞を刺激し骨形成を促進、またマウスレベルではGLP-1はカルシトニン分泌を促し骨吸収を抑制するそうですが、ヒト、サルでは血中カルシトニンを増やさないという話もあるようなので、

 

骨折リスクの高い糖尿病患者にDPP4阻害薬を積極的に使用してもよいのかもしれません。