お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

アセトアミノフェンのめも。 

PMID: 26294195
特定された68症例のうち28(41%)が肝毒性を発症した(ピークASTまたはALT> 1000 IU / L)
最終的に6人(8.8%)が死亡
N-AC(アセチルシステイン)中止の基準は、ALTではなくASTの低下に基づいており潜在的な利益は数日で測定される

 

PMID: 26175095 (コホート研究)
P:イギリスの病院で2005年2月~2013年3月までのAA過剰摂取を検索 N=3823錠
O:ピークALT>1000IU/Lを肝毒性と定義。
【結果】
N=34人が肝毒性を発生させた。
<急性単回摂取によるALT活性>
ALT活性>10000mg/L×IU/L 感度80% (95%CI:44% to 96%)
ALT活性>10000mg/L×IU/L 特異度99.6%(95%CI:99.3% to 99.8%)
ALT活性>1500mg/L×IU/L 感度100%(95%CI:66% to 100%)
ALT活性>10000mg/L×IU/L での肝毒性発生の尤度比250(95%CI:130-480)
【コメント】
abstractのみ。アブストのN数が人数でない。
AAの急性過量投与を疑ったときには、1時間後及び2時間後のALTを測定を行うことで解毒薬アセチルシステイン投与を判定するのに使えるかもしれない

 

PMID: 28421844
P:N=73 パラセタモール過剰摂取の内アセチルシステインで治療された人
O:肝毒性の発生 N=
肝毒性→ALT≥1000IU/Lとして定義
急性肝障害→ALT=50IU/Lの2倍以上と定義

<10,000mg/L×IU/L→肝毒性発生無し 
感度:100%(95%CI:48%-100%)、特異度97%(95%CI:90%-100%)
<1500㎎/L×IU/L→特異性54%(95%CI:34%-59%)

「●●㎎/L×IU/L」は何の量か?
アセトアミノフェン×ALT

→「the paracetamol-aminotransferase multiplication product」=パラセタモール中毒における肝毒性のリスク予測に使用されている指標の1つ(PMID:28447858 )

 

アセトアミノフェン製剤 特定使用成績調査 昭和薬品化工株式会社(本調査代表会社)
http://www.nihon-generic.co.jp/medical/search/files/ACEPO_GPSP_1411.pdf
N=703
肝機能異常は76/703例(11%)に認められた。そのうち30例(4%)は本罪との因果関係は否定されなかった。
臨床症状の発現→13/703例(2%)、
重篤な臨床症状→6/703例(0.9%)→6例7件(肝酵素上昇:2件、下肢浮腫:2件、肝機能障害:1件、閉塞性黄疸:1件、肝障害悪化:1件)
施設基準値上限の3倍を超えるALT値の上昇は22/703例(3%)→そのうち7例(1%)は、本剤との因果関係は否定されなかった。
入院・外来の区分:p=0.0117
身長:p=0.0590
合併症(肝障害)p=0.0074
(本剤投与開始からの日数)症例数が多かった期間→4週間<≦12週間:8/22例(1.21)この内因果関係が否定出来なかったもの→6例
<平均1日投与量別の発現率>
17/586例(3%)が2400mg-3000mg以下
3/85例(4%)が3000mg-3600mg以下
2/32例(6%)が3600mg-4000mg以下

【コメント】

がん性疼痛の解析が多いので、非がん性の場合とは違う解釈なりそうなので注意。

(一応、解説内容にがん性と非がん性で分けて載っているケド)

服用開始~の期間で4~12週はモニタリングする期間として設けてもいいかもしれない。また(1日投与)用量依存性で発現頻度は増えるかもしれない。が、断定は出来ないだろう 

 

血圧コントロールを厳格にすると、転倒が増えますか? PMID: 31778222

Berlowitz DR, Foy C, Conroy M, et al. Impact of Intensive Blood Pressure Therapy on Concern about Falling: Longitudinal Results from the Systolic Blood Pressure Intervention Trial (SPRINT).
J Am Geriatr Soc. 2019 Nov 28.
PMID: 31778222

【論文のPECO】
P:N=2313 50歳以上(平均年齢69歳)
E:血圧の厳格コントロール(SPB120mmHg)N=
C:標準コントロール(SPB140mmHg)N=
O:転倒しやすくなるか?
【結果】
E群とC群で、転倒の差はなし(P=0.95)
75歳以上で転倒スコア増加(P<0.0001)
年齢別ではE群とC群に差は見られなかった(P=0.55)
【コメント】
PMID:26551272 のサブ解析。
アブストのみ閲覧のため詳しい割り付け、解析方法が分からない。
またE群とC群のN数も不明、本試験の有害事象の人を抽出したものなのでしょうか?


●50代以上で見ると転倒の差はないようだが、75歳以上に限定すると増加する様子。
後者に対する厳格血圧コントロールは転倒リスクにて、廃用症候群などにならないように配慮が必要かもしれない。
本解析の方でも有害事象の中で、E群とC群での転倒負傷の差は無かったので概ね同じような結果なのかも。
QQ受診:1.00(P=0.97) 重篤→0.95(P=0.71)

死亡率というアウトカムで見ると、120mmHg にした方が良さそうですが、ある程度の年齢の場合はフレイルやサルコペニアといった筋、栄養状態も包括して考えていくと、厳格すぎるのは転倒リスクになるかもしれません。(そこからの寝たきりへ…)

個々のリスクに合わせた、良い塩梅を探していきたいですね。

市中肺炎にβラクタムとマクロライドの併用ってどうですか? ~12月エビテン~

エビテン12月

今回のテーマは抗菌薬でした。

例えば、

咳で受診→アジスロマイシン錠
数日後、症状悪化で再度受診→オグサワ+アジスロマイシンSR

などといった場合、抗菌薬の重ねは良いのだろうか?
推奨される使い方なのだろうか疑問に思い調べてみました。

 

【使用した文献】

Effect of Combined β-Lactam/Macrolide Therapy on Mortality According to the Microbial Etiology and Inflammatory Status of Patients With Community-Acquired Pneumonia.
Chest. 2019 Apr;155(4):795-804.
PMID: 30471269

【論文のPECO】
P:市中肺炎で原因菌が判明している N=1715
E:βラクタム+マクロライド(併用群)N=932
C:フルオロキノンorβラクタム単独 N=783
O:30日間の死亡率

【結果】
① 30日間の死亡P=0.015(5%vs8%)
② 肺炎球菌CAP OR:0.28(0.09-0.93)
CRP:>15㎎/dL

【コメント】
市中肺炎による死亡を防ぐために併用はありだと思います。
ただし今回の論文はアブストのみで、罹患年齢やどの程度の症状をみて併用を選択するなど分からない情報もあるので、解釈に注意。原因菌が分かっている状態での比較だったので、現実的なのは外来治療というより入院治療だと予測しました。または呼吸器専門の先生の内科外来ならあり得るのかもしれませんね!

 

今回もやっとしたのは(大切なこと)配信中に教えていただいた、
①成人肺炎診療ガイドライン2017
CQ07 CAPのエンピリック治療において、非定型病原体をカバーした抗菌薬の使用は推奨されるか? →A実施することを弱く推奨する

CQ08 CAPのエンピリック治療において、βラクタム系薬にマクロライド系薬を併用することは推奨されるか? →A実施しないことを弱く推奨する

 

ともあり、

細菌性肺炎か非定型性肺炎かが明らかでない場合は,高用量ペニシリン系薬+マクロライド系薬またはテトラサイクリン系薬の併用治療を第一とする
http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/guideline_jaid_jsc.pdf
JAID/JSC 感染症治療ガイドライン―呼吸器感染症

ともありましたので、まだ確立されてないんだなという印象を抱きました。


他にも調べたら、こんな文献もありました。
Antibiotic treatment strategies for community-acquired pneumonia in adults.
N Engl J Med. 2015 Apr 2;372(14):1312-23.
PMID: 25830421

【参考】
http://jja-contents.wdc-jp.com/pdf/JJA64/64-3/64-3_117-124.pdf
肺炎治療におけるマクロライド系薬の併用療法を考える

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20191124 薬ゼミ講習会 総合診療を学ぶ~対物から対人へ 

患者中心の医療
<「対物から対人へ」の影響とは・・・?>
「患者中心」とは何か,説明できますか?
https://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03125_05
このサイトの図にある狭意義の「患者中心」
1-2 じっくり話せること、十分な知識を得られること

に対して私が感じた事としては、現時点で「忙しい」「回すだけで精いっぱい」の調剤薬局でどの位の事が提供できるのだろうか?ということです。

患者側の需要として
①じっくり話したい人
②端的でOKな人

薬局側の供給として
③端的な事で済ませられる人(済ませる事が可能と考えられる処方)
④薬識周辺からしっかり話さなきゃいけない人
⑤継続的なアセスメントが必要な人

に大まかに分けられると考えた場合、①と②の振り分け、③と④と⑤の振り分けを行って業務をする必要がある。

①と④と⑤にどの位の時間をかけられるのか?
かける時間をどう捻出するのか? が焦点だと感じました。

 

次に、
「患者個人の理解」というものについて
疾患:病気がもたらす病歴、身体診察、検査など客観的な情報
病:病気に罹患したり体調不良を覚える1人の人間としての患者が受ける様々な影響
があるとおっしゃられていました。

特に後者の意味を引き出す方法として、
感情:どんな気持ち?
期待:何を望む?
解釈:思い当たる原因は?
影響:日常生活で困っている? とのこと。

(再掲載 https://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03125_05)の図の時にも疑問に感じたように、これら4つを行うのは今の現場で行うためにはすぐには無理だと感じた。
では、何が必要なのだろうか?

 

問題点:早く投薬しろ!端的に済ませろ!
→では、なぜ「早く」「端的に」?
→(理由)混んでいるから、時間がかかるから

→①なぜ混んでいるのか?
→①Ⅰ:季節的な繁忙期 Ⅱ:集中率が高いから(門前、マンツーマンだから)
→①(対策)分散させる? 門前からの撤退? 面調剤へ移行?
→①厚労省の言っていた、病院の前の景色を変えるという意味に繋がる?
→①約6万件⇒約3万件の意味はココ???

 

→②なぜ時間がかかるのか?
→②調剤(ピックング)に時間がかかるから、欠品が発生するから
→②(対策)AIなど機械化の導入? 調剤補助の導入?(いわゆる0402通知?)

 

こういった側面から「対物から対人へ」の影響により、現在より時間をかけるべき人が外来で増えてくる。
その業務の質が変化することをいかに「好機」として捉え、今の環境をどこまで変えることが出来るのか?が今回のキーワードだなと感じました。

 

EBMとは言わなかったが・・・>
「患者個人の理解」と「患者背景の理解」の共通を見出し、患者と医療者の間において現時点で
①何が問題なのか?
②何を目標とするのか?
③互いの役割は何か? 
を確認・合意する必要があるようです。

特に②について、
立てて良い目標と悪い目標があるだろう。 
その中で患者に選択してもらうためには、なるべく良い=標準的な医療を提供できる目標を提示したほうが良いだろうと感じた。


「標準的な医療」という選択肢カードを患者の目の前に並べるためには、医療者が現時点で最も「標準的だろう」と考えられるカードを手札として持っていなければならないのではないだろうか?
手札をなるべく多く提示できるためには、文献を読むや症例を学ぶなどが良さそうだと感じた。

今回の講習会で、「EBM」や「ナラティブ」、「エビデンス」といったワードは出てこなかったが、
いくつかの文献を目の前の患者背景に当てはめて・・・と考えてみると、いわゆるEBMっぽい話だったのかもしれない。

 

ずらっと並べたので、ぐちゃぐちゃですね(笑)

普段やっている学習の方向性は今後の調剤薬局には間違ってないかも?と感じることが出来たので、続けて学んでいこうと思います。

長期のメトホルミンは心不全を予防できますか? 

長期のメトホルミンは心不全を予防できますか?
Int J Cardiol. 2019 Nov 7. pii: S0167-5273(19)34047-1
PMID: 31711850
【PECO】
P:T2DM + HT 心不全症候の無い N=490
E:メトホルミン投与あり N=130
C:メトホルミン投与なし N=360
O:HFpEFの新規発症の割合
6年の追跡、abstractのみ
【結果】
新規発症のHFpEF E群:6/130 C群31/260 P=0.020
COXハザード比 HR:0.351 (0.145 to 0.846) P=0.020
LV拡張機能と肥大の改善あり

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【コメント】
アブストのみなので、年齢層、性差、HbA1cなどが分からないので一概には言えない。
またC群はどの位の糖尿病歴があり、6年の追跡でどの位駆出率が下がったのかにも注目しておくと、今後の糖尿病患者の息切れなどNYHA分類などからのアセスメント
に役立つと思われる。 SGLT-2阻害薬と同様に、これからの日本の高齢化社会において心不全パンデミックが注目されている中での治療薬選択として気になった1報だと思われる。

DPP4-阻害薬とSGLT-2阻害薬と心不全

ここ最近で糖尿病薬と心不全の関連が自分の中で熱い

気になった&検索出来たものをまとめてみた。

 

<DPP4-阻害薬と心不全

アログリプチンは心不全リスクを増やさなかった(PMID:25765696 )

シタグリプチンはプラセボと比べて有意に心不全を増やさなかった(PMID: 26052984 )

シタグリプチンは心不全リスクに関与しているかも(PMID: 25499347)

シタグリプチンは心不全死のイベントに差は無かった(PMID: 27437883 )

シタグリプチンの使用は心不全入院に関連していた(PMID: 24998080)

ビルダグリプチンはLVEFに影響は与えなかったが、更なる追跡が必要(PMID: 29032139 )

リナグリプチンは心不全による入院を有意に増やさなかった(PMID:29301579)

ビルダグリプチンは左心室容積の増加をもたらしましたが、臨床的意義はこの時点では不明(PMID: 29032139)

サキサグリプチンは心不全による入院を増やした(PMID:23992601)

 

<SGLT-2阻害と心不全

エンパグリフロジンは心不全入院を減らした(EMP^REG OUTCOME )(PMID:26378978)

イプラグロフロジンの使用で心不全入院を減らした(PMID: 29479047)

カナグリフロジンは心不全症状の改善につながった(日本の研究)(PMID:31167663)

ダパグリフロジンは心血管疾患は減らさなかったが、心不全入院を有意に減らした(DECLERE-TIMI58)(PMID: 30415602)

ダパグリフロジンは糖尿病の罹患有無を問わず、慢性心不全転帰を改善させた(DAPA-HF)(PMID: 30895697)

 

DPP4-阻害薬の「心不全リスクを増やさなかった」と「心不全による入院を増やさなかった」は別物な気がしてきました。今後も報告を追って見ていく必要がありそうです。

 

SGLT-2阻害は、心不全だけでなく、軽度CKDなど合併症例での効果期待が持たれそうなきがします。また衝撃的に感じたのはDAPA-HFで糖尿病罹患に関わらず結果が出た事。 

 

あの、

ググったら青島先生の所覗いてしまいました…。 お、オマージュして簡潔に

https://note.mu/syuichiao/n/n8fd7db0f5e74

DAPT3か月後に単剤(チカグレロル)に切り替えたら出血は増えますか? PMID: 31556978

Ticagrelor with or without Aspirin in High-Risk Patients after PCI.
N Engl J Med. 2019 Sep 26
PMID: 31556978

【論文のPECO】

P:PCI治療を受けた患者の3か月後(チカグレロル+アスピリン済み) N=7119
E:チカグレロル+プラセボ(実質;チカグレロル単剤)
C:チカグレロル+アスピリン
O:(primary endpoint)学術研究コンソーシアムが作成した出血基準(BARC出血基準)に基づいた割合
(secondary endpoint)致死的でない心筋梗塞、致死的でない脳卒中による死亡率
【結果】
<primary endpoint>
4.0% vs 7.1% HR:0.56(0.45 to 0.68) P<0.001
出血基準について(参考:https://www.ebm-library.jp/att/content/term.html#BARC)

【コメント】
3カ月のDAPT後にチカグレロル単剤に切り替えても出血リスクは、DAPT継続に比べて少なかった。