お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

まとめてみたシリーズ 麻薬

今年もあと数日で終わりですね。

年末でもありますが、月末でもあります。 月末といえば麻薬や向精神薬、毒薬、覚せい剤原料の締めを行うところもありますよね。

今年も沢山麻薬を払い出したなぁ、あの患者さんもいたなぁと今年一年に思いふけながら数えていました。

それにしても麻薬の30日投与制限しっかりと確認していなかったなと反省し、まとめてみました。

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こうやって見ると30日処方のほとんどは鎮痛ラダーの強オピオイドがほとんどですね。鎮痛ラダーってなんですかね?

*****************引用***************

「鎮痛薬の使用法」は、治療にあたって守るべき「鎮痛薬使用の5原則」と、痛みの強さによる鎮痛薬の選択ならびに鎮痛薬の段階的な使用法を示した「三段階除痛ラダー」から成り立っている。

<5原則>

①経口的に(by mouth)

②時刻を決めて規則正しく(by the clock)

③ 除痛ラダーにそって効力の順に(by the ladder)

④ 患者ごとの個別的な量で(for the individual)

⑤その上で細かい配慮を(with attention to detail)

www.jspm.ne.jp

第一段階:軽度の痛みに対し非オピオイド鎮痛薬(NSAIDsやアセトアミノフェン)を開始する。
第二段階:軽度から中等度の痛みに対し、弱オピオイドコデインやトラマドール)を追加する。
第三段階:中等度から高度の痛みに対し、弱オピオイドから強オピオイドモルヒネフェンタニルオキシコドン・タペンタドール)に切り替える。この4種類のオピオイドで管理が困難な症例にメサドンを考慮する。

日本ペインクリニック学会

***********引用終了**************

3段階に分けて使い分けているんですね。

ちなみにオピオイドを副作用など用量に合わせて、使い分けて切り替えていく方法を「オピオイドローテーション」=「オピオイドスイッチング」といいます。

それにしても、タペンタドールが唯一30日投与制限の中に入っていないですね。14日投与制限の方に入っています。どうせなら30日にそろえれば良いのにとは思いますが。


モルヒネコデインの関係性って忘れがちですよね。どっちからどっちに代謝するのか

コデインについては小児科学会で中毒などについて話題になりました。

12歳未満の小児に対するコデイン類含有医薬品の使用についてコメントがありました

http://www.jpa-web.org/blog/2017/06/20/111

厚生労働省のコメント→

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000168848.pdf 平成29年6月22日

https://www.pmda.go.jp/files/000218747.pdf 平成29年7月4日

この代謝図をみればモルヒネ中毒への懸念が分かりますね。

 

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参考になれば幸いです。

 

 

 

 

今年買った本を大公開!!

今年買った書籍は色々なものを含めて60冊越え(まだ増えそう)です。

主に漫画。。。ばかりじゃないよ

今年は書籍を書いた先生方に会う機会もあり気持ちがホクホクでした。そんな中で気に入っている書籍を紹介しちゃいます!!

まずは

薬局で使える実践薬学

薬局で使える実践薬学

薬局で使える実践薬学

 

対話形式になっているので、話が分かりやすい。また添付文書だけじゃなくインタビューフォームも一緒に見ているので情報量がとても豊富。

ソクラテス先生にも会いました!!日本薬剤師会学会in東京

 

どんぐり未来塾の薬物動態

 

どんぐり未来塾の薬物動態マスター術

どんぐり未来塾の薬物動態マスター術

 

薬物動態についてどんぐり未来塾などという単語を耳にしてから気になっていた一冊です。 個人的には副作用の添付文書の読み方考え方が非常に勉強になりました。

読んだときだけじゃなく、実践して対応していくためには訓練が必要ですが繰り返していかなければいけないところだなと肝に銘じています。

 

薬の比較と使い分け 

薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100

薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100

 

いわずもがな、各学会で売り上げがすごい!!と噂の本です

児島先生はすごーく人あたりが良くて一緒にご飯食べましたね

おっと、本の紹介をしなくては

意外に比較ができているようで出来ていない薬だったり、普段何気なく切り替えを行っている薬たちの根拠って何なのだろうという疑問を紐解くきっかけになりうる本です。

現場の人も復職を控えている人にもオススメの一冊

 

患者指導のための剤形別外用剤 

患者指導のための剤形別外用剤 Q&A

患者指導のための剤形別外用剤 Q&A

 

同じく日本薬剤師会学会in東京で目について購入したものです。

外用剤って普段触ったことのある薬ならささっと説明が出来るかもしれません。

普段触らないもの、久しぶりに触るもの、深く聞かれたときに意外と知らない使い方ありますよね、そういう時見てみるといいかも

 

レシピプラス よく出る漢方ABC

レシピプラス Vol.16 No.2 よく出る漢方薬ABC

レシピプラス Vol.16 No.2 よく出る漢方薬ABC

 

漢方はいろいろな意味で使い方があります。 適応上の部分、傷寒論、陰陽説

難しいですが、こんな使い方もあるという一例として読んでみても面白いのではないでしょうか

 

レシピプラス 妊娠期のマナートラブルとくすり 

レシピプラス Vol.16 No.3 妊娠期のマイナートラブルとくすり

レシピプラス Vol.16 No.3 妊娠期のマイナートラブルとくすり

 

妊娠や生理について起こりうるトラブルに触れることができる一冊 

 

Dr.徳田の診断推論講座 

Dr.徳田の診断推論講座

Dr.徳田の診断推論講座

 

いや、薬剤師だし、こんなの読んでミニドクターやるんか?と思われますが、多職種が何を考えているのかこれからの多職種連携には必要です。

特に医師はどんなことを考えて処方せんを出しているのか?どのような部分を診ているのか触れることも患者とのコミュニケーションに必要ですよね 

 

今年は様々な書籍が発売されました。薬剤師界隈が盛り上がってきたのではないでしょうか?

来年はどんな書籍がでるのか、どの先生に会えるのか楽しみです

スタチン系薬の相互作用、まとめたってよ

スタチン系薬の相互作用がフワっとしたままでよくわかっていない&iPadProで絵を描いてみたかった この2点でやってみました

 

<疑問>

スタチン系薬の相互作用で血中濃度が変動するのは知っている。

グレープフルーツジュースと一緒に飲んではいけないのは知っている。

最近話題になっている?OATP(トランスポーター)って結局どこをどうしているのか分からない。

どの薬物との相互作用が吸収?代謝?に関与しているのかイマイチだ。

 

 

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参考

シンバスタチン:CYP3A4、OATP1B1、グレープフルーツジュース(以下、GFJ)、アゾール系抗真菌薬、エリスロマイシン・・・添付文書より

アトルバスタチン:CYP3A4、シクロスポリン、エリスロマイシン、アゾール系抗真菌薬、GFJ・・・添付文書より OATP1B1・・・インタビューフォームより

ピタバスタチン:CYP2C9、シクロスポリン、エリスロマイシン、リファンピシン、OATP1B1・・・添付文書より

プラバスタチン:シクロスポリン・・・添付文書より OATP・・・インタビューフォームより

ロスバスタチン:シクロスポリン、アゾール系抗真菌薬、エリスロマイシン・・・添付文書より OATP・・・インタビューフォームより

 

ルパタジンは安全ですか?

ついに日本でもルパタジンが先日発売になりましたね。

ヒスタミン作用と抗PAF作用が売りらしいです へー

有効性はまぁ。。。あれでしょうと思って安全性を見た論文がありましたので読んでみました

***************

www.ncbi.nlm.nih.gov

PMID:27632557

<論文のPECO>

P 27人の日本人、平均年齢27.67歳

E ルパタジン 10㎎と20㎎、40㎎

C プラセボ

O 安全性(有害事象)

 

一次アウトカムは明確か?

 →不明

真のアウトカムか

 →わからない

盲検化されているか

→されている double-blind(Methodsより)

追跡率

61人被験者→28人基準満たさない+6人拒否→27人全てを無作為に割り付けた

27人全員完了した=追跡率100%と判断

 

********************* 

重篤な有害事象(SAEs) 治療上の有害事象(TEAEs)

安全性評価ではすべての治療に関する副作用は軽度

10~40㎎にわたって用量依存的に増加する→何が? 

◎10㎎投与群→①軽度の強迫感、②悪心(1日目)→腫脹(8日目):TEAEs

◎20㎎、40㎎投与群→なし

 

・最初AUCを見た時に40㎎群で一気に上がっているので、非線形を示す薬物なのかなと思いましたが、IFを見てもそのような記載はないので、線形性薬剤であると思われます。

・n数が少ない

・日本人データ

プラセボと比較

 

以上です。 ここまで読んで頂いてありがとうございました。

 

今週のクリニカル・クエスチョン

今週1週間で浮かんだクリニカル・クエスチョンです。

まだまだ分からないことが沢山あります 1つずつ勉強していきたいですね

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CQ.吸入薬を吸った後のうがいは本当にしなきゃだめですか?

CQ.1日2回吸っている内の1回うがいをさぼったら、口内炎嗄声がでますか?

CQ.めまいに柴苓湯は有効ですか?

CQ.吸入薬による口内炎嗄声の頻度はどのくらいですか?

CQ.フレイルとメタボどちらが健康寿命が長いですか?

CQ.フレイル予防の運動とメタボ改善(予防)の運動は違いますか?

CQ.めまいにアデホス(アデノシン三リン酸二ナトリウム)は有効ですか?どのくらい推奨されていますか?

 

参考になれば幸いです。

本日のクリニカル・クエスチョン

いつもと違う場所で仕事をすると、新しい処方や症例に出会って刺激を受けますね。

そんな刺激を受けて浮かんだ本日のクリニカル・クエスチョンです。

服薬指導で何気なく言っている指導の一言、本当ですか?根拠ってありますか?

新人時代は、先輩薬剤師が言っているのを真似してみたりしますが、それって本当なのでしょうか?

 

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マスクをすると感染症は防げますか?

関節リウマチ治療を始める人は感染症予防した方がいいですか?

外来で抗がん剤治療をしている人はマスクをしないといけませんか?

外来で抗がん剤治療をしている人は人混みの多い場所に行かないほうがいいですか?

喉の痛みが逆流性食道炎によるものである場合はありますか?

逆流性食道炎による喉の痛みにトラネキサム酸は有効ですか?

風邪の喉の痛みにトラネキサム酸は有効ですか?

 

参考になれば幸いです。

中耳炎のガイドラインってどんなの?

 

今回は小児急性中耳炎ガイドラインの勝手な読みこみです。

特に各医師の治療方針を否定したりするものではありません。

さぁいくね

 

目次

・反復性中耳炎ってなに?

・急性中耳炎ってなに?

・重症度を判定するときに用いる所見、スコア

・使用する薬剤

・各引用論文を抜き出してみた


反復性中耳炎ってなに?

  • 単純性の急性中耳炎を繰り返す
  • 滲出性中耳炎罹患児が急性中耳炎を繰り返す

<原因>

  • 起因性では多剤耐性
  • 鼻咽腔からの不十分な除菌
  • 低い免疫応答
  • その他:GERD(胃食道逆流症)→SR(システマッティクレビュー)ではPPIを用いたRCT(ランダム化比較試験)において有意差なし(Miura et al. 2011)PMID:22157391

<治療?予防?>

耐性化に対して→抗菌薬投与前には感受性菌の検査!!

欧米:肺炎球菌ワクチンの接種で予防しているんだって。

(オランダでのRCT7価蛋白結合型VS肺炎ワクチン多糖体ワクチン→有意差無しPMID:15687432)

漢方:十全大補湯 

アデノイド切除術:RCTでは反復性頻度の低下無し、予防効果なし というのもるようです。

鼓膜切開術:日本の症例対照研究→反復性中耳炎の発症頻度低下に対して有意差無し(PMID:)

鼓膜換気チューブ:1年or1ヶ月の短期間留置で罹患頻度低下(甲野2007a.b)

 

 

急性中耳炎ってなに?

急性に発症した中耳の感染症で耳痛、発熱、耳漏を伴うことがあるもの

<菌>

2012年ベスト3:肺炎球菌、インフルエンザ菌黄色ブドウ球菌

ここは国家試験の通りだね。

 多施設間臨床研究2005年2月~2008年2月

肺炎球菌:PSSP(ペニシリン感受性肺炎球菌):35.5%

     PISP(ペニシリン中等度耐性肺炎球菌):37.2%

     PRSP(ペニシリン耐性肺炎球菌):27.3%

耐性のあるものが、PISP+PRSPで65%もあるということか!!

 

インフルエンザ菌:BLNAS(βラクタマーゼ非産生ABPC感受性菌):29.8%

         BLNAR(βラクタマーゼ非産生ABPC耐性菌):69.3%

         BLPAR(βラクタマーゼ産生ABPC耐性菌):0.9%

BLNARって結構ありますな。。。耐性菌おおいですね

 

<治療>

①肺炎球菌

AMPC、CVA/AMPC > SBT/ABPC

AMPC、CVA/AMPC > CDTR-PI、FRPM

 ニューキノロン系:STFX、TFLX(小児適応これのみ)、MFLX

点耳、ネブライザー:CMX

 

インフルエンザ菌

AMPC、CVA/AMPC

 

【重症度を判定する時に用いる所見、スコア】

①耳痛

②発熱

③啼泣、不機嫌

④鼓膜の発赤

⑤鼓膜の膨隆

⑥耳漏

⑦年齢(24カ月未満)

 

【使用する薬剤】

AMPC常用量:20-40㎎/㎏/日

AMPC高用量:80㎎/㎏/日 10日間

CAV/AMPC(1:14)

CAV/AMPC高用量:90/64.4mg/kg/日 10日間

CDTP-PI常用量:9mg/kg/日

CDTP-PI高用量:

 

各引用論文を抜き出してみたよ 気になったものだけね

AMPC vs CVA/AMPC:AMPCが有意だって 前向き観察研究 PMID:11909846

CAV/AMPC vs CXM-AX PMID:11422249

SBT/AMPC vs CAV/AMPC:RCT一重盲検→有意差なし PMID:16061111

CAV/AMPC 1日2回vs1日3回:有意差なし どっちもいいのかな? PMID:10768519

CAC/AMPC(高用量) vs AZM:CAV/AMPCの方が有意みたいだ PMDI:15933563 でもインフルエンザ菌にはAZMがAMPCと同等っていうのもあるみたいだよ→PMID:8878242  

 

<あるメタアナリシス>PMID:12529165→2歳児未満、保育園児、鼓膜穿孔済→投与期間長い方が有効で、2歳児以上→短期間の方が有効なんだって

<35編のシステマッティク・レビュー RCT>

4日以上vs4日未満:4日未満は治療不成功のリスクが増加するようです

https://www.researchgate.net/publication/236087983_Panel_7_Treatment_and_Comparative_Effectiveness_Research

これは抗菌薬投与期間4日以上の根拠かな?

 

ざっと読んでみました。 

ガイドラインってなんとなくの経験で作っているのかな?なんて以前は思っていたけれど、各論文の有意差などを考慮して作っているのですね。

【クリニカル・クエスチョン】なんで軽症の急性中耳炎は3日間経過観察なのだろう?どうしてこういうアルゴリズムになっているのだろう?

こういうのガイドラインは便利だけれど、一次資料を追えるときは追って一緒に批判的吟味をした方が、自分の考え方のに根拠がつくきっかけになるかもしれないね。

 

今回も読んで頂いてありがとうございました。

ただのガイドラインななめ読み?でした。 最初にも言ったけれど正しい診察診療治療は医師の指示に従ってね。とくに批判するものではありません。

 

 参考:小児急性中耳炎診療ガイドライン2013年版 より