お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

抗精神病薬の錐体外路症状(ESP)はどのくらいで出現しますか? PMID: 28049887

Kose E, et al. Yakugaku Zasshi. 2017;137(1):111-120.PMID: 28049887.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28049887/

【論文のPECO】

P:日本有害事象報告(JADER)データベース
E:抗精神病薬あり?
C:なし?
O:錐体外路症状(ESP)の発生頻度
【結果】
非定型抗精神病薬 ROR:12.37 (11.54-13.25) 
定型抗精神病薬 ROR:14.05 (12.95-15.23)

<非定型抗精神病薬各発生頻度>
リスペリドン ROR:14.65(13.03-16.47)
パリペリドン ROR:16.42(13.01-20.73)
ペロスピロン ROR:22.96(17.84-29.55)
ブロナンセリン ROR:19.64(15.63-24.68)
クロザピン ROR:3.55(2.58-4.89)
オランザピン ROR:8.78(7.42-10.39)
クエチアピン ROR:8.68(7.29-10.33)
アリピプラゾール ROR:8.51(7.16-10.10)

【発症期間の中央値】
リスペリドン:77日
パリペリドン:14日
ペロスピロン:10日
ブロナンセリン:21日
クロザピン:71日
オランザピン:148日
クエチアピン:67日
アリピプラゾール:29日

【コメント】

非定型抗精神病薬が好まれるのは、錐体外路症状=ESPの発生頻度が低い事にあります。しかし、一部では定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬間でのESPの発生頻度に差がないという報告もあるようです。そこで、日本有害事象報告(JADER)データベースに寄せられたデータを基に解析した論文がこちらです。

発生頻度は、やはり非定型抗精神病薬の方が発症頻度が低い傾向にありました。しかし、発症の期間については差が無かったようです。

調剤薬局で取り扱いのある薬では、オランザピン・クエチアピン・アリピプラゾール辺りの発症頻度が低く、発症までは服用開始から 1-2 か月くらいを目途に ESP の出現を評価していくと良いかもしれません。