お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

カルベジロールのまとめ。CQ1.何故カルベジロールは漸増療法をするの? CQ2.何故慢性心不全の場合は、分2なの?

Q。何故カルベジロールは漸増療法をするのか?


A。
元々心不全にβ遮断薬は禁忌だった。(PMID:5936664) 

古来より収縮力が下がった病態=心不全に対して、ジギタリスやPDE阻害薬を使用していました。
しかし、ACE阻害薬を用いた、CONSENUS 1987(PMID:2883575)やSOLVD 1991()による報告によって、ACE阻害薬が標準的と変化。
また、1975年以降のWaagsteinによる心不全に対するβ遮断薬のポジティブな報告もあった背景により、1993年頃からβ遮断薬の研究をするように。

 

血漿中のノルアドレナリンが高いと心機能に好ましくない。そこで交感神経の活性化は心不全の進行に関係していると仮説を立てた。
その(ノルアドレナリンの)作用を抑制することで、心不全の進行の妨げになる可能性があると考えた。(引用:US-Carvedilol 1996 より)

 

その結果、US-Carvedilol 1996(PMID:8614419)で、カルベジロールは心不全治療で(その当時既に)標準的となっていたACE阻害薬に上乗せすることで、死亡率が65%(P<0.001)に下がった報告がなされた。
更に、MERT-HF(PMID:10376614)のメトプロロールやCIBIS-2 1999(PMID:1002394)のビソプロロールで、慢性心不全に対する死亡率減少などのポジティブ報告がなされた。

 

日本では、日本人を対象とした臨床試験(MUCHA 試験(PMID:14760332))により有用性が認められて、本邦で初めて慢性心不全の適応を取得しました。(アーチストIFより)またMUCHA 試験の結果にて、用量設定は「5~20mg/日」と定められた。
欧米(推奨量50~100mg/日)よりはるかに少量であるのが注意。

低用量(1 回 1.25mg、1 日 2 回)から投与を開始し、継続投与することで慢性心不全の進展を抑制し、心不全悪化による入院を減少させた。


しかし、MUCHA試験で5㎎/日VS20㎎/日で効果に差は無かった

→低用量の方がいいのか?高用量の方がいいのか?決着つかず
→J-CHF試験 (当時の問題点)①β遮断薬の導入は入院での投与が原則。②漸増が一般的。③用法用量は施設、個人によって異なる あったため
2.5㎎/日、5㎎/日、20㎎/日 の3群に分けて試験をした。しかし、この結果は公表されていない。
https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr.cgi?function=brows&action=brows&recptno=R000000665&type=summary&language=J

 

<J-CHF試験>
【論文のPECO】
P:慢性心不全 NYHA心機能分類がII度またはIII度,かつEFが40%以下の患者
E:2.5㎎/日のカルベジロール N=118
C:5㎎/日(N=116)、20㎎/日(N=118)のカルベジロール
O:主要アウトカム評価項目:全死亡または全心血管系の原因による入院(複合エンドポイント)
【結果】
2,5mg/day→27/118 5mg/day→22/116 20mg/day→25/118
vs5mg/day HR:0.86(95%CI:0,491 to 1.514) P=0.606
vs20mg/day HR:1.00(95%CI:0.583 to 1.731) P=0.990

論文は発表されていないので参考程度で。

https://www.ebm-library.jp/circ/doc_html/aha2009/J-CHF.html

 

<US-Carvedilol 1996(PMID:8614419)>
【論文のPECO】
P:少なくとも3か月間心不全の症状があり、駆出率が0.35以下 N=1094
E:カルベジロール N=696→軽症心不全群、中等度心不全群、重症心不全群、用量設定群に運動耐容能力で割り付け。
6.25㎎(分2)→12.5㎎/日→(2w後)50mg/日(試験start)→100㎎/日(まで増量)
C:プラセボ N=398 6.25㎎(分2)→12.5㎎/日→(2w後)プラセボ(試験start)
(用量設定群:①プラセボ②12.5mg/日③25mg/日④50mg/日 の4群に割り付け)
O:死亡率

 

Q.何故慢性心不全の場合は、分2なのか?

 

US-Carvedilol HF 1996(分2)→MUCHA試験(分2)→J-CHF試験(分2)
だからだと考えられる。
また先行研究などでも1日2回のカルベジロールで試験されているので、そういうものだと思うしかないのかも。 

1日2回の別の理由をご存じであれば教えてください。