お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

女性の陰部の除毛にはどのようなリスクがありますか? PMID: 38468306

BMC Womens Health. 2024 Mar 11;24(1):171.PMID: 38468306

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov


【論文のPECO】
P:カタールの女性(カタールコンピューティングベース)
E:陰毛の除去(以下、グルーミング)あり
C:グルーミングなし
O:感染症などの各リスク特徴
T:横断研究のSR&メタ分析
【結果】
淋病 OR:1.55(1.31-1.84)I2=50%
クラミジア OR:1.56(1.32-1.85)I2=0%
性器ヘルペス OR:1.40(0.56-3.50)I2=94%
尖圭コンジローマ OR:1.75(0.51-6.01)I2=75%
かゆみ 26.9%P<0.001
<背景>
非電気カミソリ:69.3%
白人:80.2%
黒人:12.2%
全てのグルーミング:50.3%
部分グルーミング:33.1%
【コメント】
カタールイスラム教が推奨されており、イスラム教は思春期から閉経時の陰部毛の除去(除毛)を行われることが多いという文化的、宗教的背景がある。またそのグルーミングは、皮膚粘膜バリアの損傷などを引き起こし、SITの危険因子ともなりうると考えられています。 本解析の結果、特に淋病が1.6倍、クラミジアが1.6倍と統計学的に有意にリスクを高めることが示唆された。
その反面、各結果の異質性は高く内的妥当性としては、結果の取り扱いに注意が必要かもしれない。 
グルーミングを行う場合は、皮膚粘膜を損傷しないように注意を払えば、感染症を予防しつつ美容を高めることに繋げられる可能性がある。

 

急性心筋梗塞の後にエンパグリフロジンを使うと死亡率は減りますか? EMPACT-MI試験 PMID: 38587237

N Engl J Med. 2024 Apr 6.PMID: 38587237.(EMPACT-MI)

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov


【論文のPICO】
P:無作為化前14日以内に急性心筋梗塞 LVEF<45%+うっ血  n=6522
I:エンパグリフロジン 10㎎/日 n=3260
C:プラセボ n=3262
O:心不全入院または、何らかの原因による死亡
【結果】
HR:0.9(0.76-1.06)P=0.21
心不全入院 HR:0.77(0.60-0.98)
全死亡 0.96(0.78-1.19)
<二次>
心血管死亡率 1.03(0.81-1.31)
<背景>
STEMI 74.3%
NSTEMI 25.7%
LVEF:35-45 52.7%
過去の心筋梗塞歴:13.0%
RR:0.90
ARR:0.9
NNT=1/0.009=111.1
【コメント】
主要評価項目は、イベントリスクを10%下げる傾向があるが、統計学的な有意差は得られなかった。
また個々のアウトカムを見てみると、ソフトエンドポイントである心不全入院は23%減(有意差あり)、ハードアウトカムである全死亡率は4%減(有意差無)とのことであり、心不全入院の方に主要アウトカムが引っ張られている印象を受ける。
本解析の集団は、平均年齢63.6歳、DAPTが84.6%のため過去にPCIを経験している可能性がある。更にスタチンは88.9%、基礎疾患は、DMが31.9%くらいちょっと、高血圧は半分以上(69.6%)の人 eGFRは60を切っている人が22.4%くらい。心機能的にはHFrEFっぽいひとが半分近くだろうか。でも血圧は極端に高くないし、脈拍も早くない印象であった。

過去に心血管イベントがあり、既に投薬を受けている60代以上の方が急性心筋梗塞を起こした場合にエンパグリフロジンを受けた場合に111.1人1人の割合で心不全入院を23%減らせることが出来るという感じだろうか。
本解析の結果では、あえてエンパグリフロジンを急性心筋梗塞後に積極的に投薬する理由には遠いのではないだろうか。ただ、目立った有害事象もなかったため、HFrEFの人であれば、導入を検討しても良いのかもしれない。

母親の抗てんかん薬の服用と子供のてんかんの関係 PMID: 38407908

JAMA Netw Open. 2024 Feb 5;7(2):e2356425. PMID: 38407908

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

【論文のPECO】
P:てんかんを患う母親
E:妊娠中の抗てんかん薬の使用(ASM)あり
C:なし
O:子供のてんかんリスクに関連しているか?
T:21年
・前向きコホート
・欧州(デンマークフィンランドアイスランドノルウェースウェーデン
【結果】
バルプロ酸:AHR:2.18(1.70-2.79)
ラモトリギン:AHR:1.18(0.95-1.47)
レベチラセタム AHR:1.28(0.77-2.14)
カルバマゼピン AHR:1.13(0.85-1.50)
トピラマート AHR:2.32(1.30-4.16)
クロナゼパム AHR:1.90(1.16-3.12)
妊娠前に中止vs継続 
バルプロ酸 1.69 (0.91-3.16)
ラモトリギン 0.65 (0.42-1.03)
トピラマート 1.19 (0.26-5.44)
【コメント】
バルプロ酸とトピラマートは出生前の使用が子供のてんかんリスクに関連している可能性がある。
感度分析では、母親がバルプロ酸の用量に依存したかてんかんのリスクに差はなかった(AHR:0.58 0.23-1.46))。更に、妊娠前のASM中止がてんかんリスクへの影響については、バルプロ酸を含めて差が無かった。
薬の服用によってリスクが高まるより、その他の遺伝的な要因などが関連している可能性が示唆された。 

日本の高血圧患者さんのアドヒランスはどうですか? PMID: 38230627

J Hypertens. 2024 Apr 1;42(4):718-726. PMID: 38230627

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov


【論文のPECO】
P:新規に高血圧診断された日本人31-74歳(LIFE Study データベース) n=112506
O:PDC(治療開始後 1 年間の降圧薬の不遵守率)
評価方法:PDC=所定日数の合計/観測期間365日
=0-0.8:アドヒアランス不良、0.8-1.0:アドヒアランス良好
【結果】
PDC≦80%:26.2%
若者(31-35歳) OR:0.15(0.12-019)/71-74歳の集団と比較して
男性/単剤療法/利尿薬使用 OR:0.87(0.82-0.91)
【コメント】
アブストラクトのみであり、詳細は不明だが、アドヒアランス不良の傾向に単剤療法が因子として含まれていることは興味深い。
診断1年間で若い男性は薬を飲まなくなる傾向があるのは、その属性に影響されている可能性が考えられる。
若い=高血圧以外の基礎疾患が少ない、高血圧=自覚症状に乏しい

妊娠中の抗てんかん薬の服用に対する影響についての調査 PMID: 35639399

JAMA Neurol. 2022;79:672-681 PMID: 35639399

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov


【論文のPECO】
P:妊娠中のてんかんのある女性から生まれた子供 n=4,494,926
E:抗てんかん薬あり 
C:抗てんかん薬なし
O:神経発達障害のリスクが増えるか
神経発達障害自閉症スペクトラム障害 (ASD)、知的障害 (ID)
コホート研究
【結果】
てんかん薬なし群:8歳までにASD診断:1.5%、ID診断:0.8%
トピラマート単独療法:ASD aHR:2.8(95%CI,1.4-5.7) ID aHR:3.5(1.4-8.6)
バルプロ酸単独療法:ASD aHR:2.4(1.7-3.3) ID aHR:2.5(1.7-3.7)
レベチラセタムとカルバマゼピン(8年間累積) aHR:3.5(1.5-8.2)
ラモトリギンとトピラマート(8年間累積) aHR:2.4(1.1-4.9)
レベチラセタムとラモトリギン (8年間累積) aHR:0.9(0.3-2.5)

【コメント】
トピラマートの妊婦または授乳婦への注意書きが追加されたきっかけの試験。
バルプロ酸は所謂催奇形性が知られている。トピラマートはバルプロ酸よりも頻度が高く、神経発達障害の発症リスクが高まると考えられる結果であった。 また、バルプロ酸同様に、用量依存でトピラマートは催奇形性を示したと示唆される。

喫煙すると口にしたくなる食品はなんですか? PMID: 38188940

Tob Induc Dis. 2024 Jan 5;22.PMID: 38188940

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

【論文のPECO】
P:日本人対象に調査機関でアンケートに回答した人
E:喫煙者
C:非喫煙者
O:食品との関連性はあるか?
・横断研究
【結果】
喫煙欲求が高いと回答
酒:74.9%
ウイスキー:66.0%
ブラックコーヒー:65.6%
日本酒:64.9%
ワイン:58.0%
コーヒー飲料:58.0%
焼肉:44%
ラーメン:33.3%
洋食:33.0%
喫煙欲求が低い(低下)
牛乳:22.2%
イチゴ、キウイフルーツ:21.8%
柑橘類:21.3%
その他の果物:20.4%
低脂肪乳製品:20.3%
通常および高乳製品:20.3%
【コメント】
身近にいる喫煙者の飲料を見ているとブラックコーヒーやコーヒー飲料を好んで飲んでいる人が多い。
感覚的に多いと感じていたものを横断調査であるが、調査結果で傾向的にも多い事が判明した。
この調査の限界は、喫煙歴や喫煙本数などについては調査されておらず、その関連性は不明である。

高齢の統合失調症患者における死亡率について (前向きコホート) PMID: 38294521

Eur Arch Psychiatry Clin Neurosci. 2024 Jan 31.PMID: 38294521

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38294521/

【論文のPECO】
P:高齢者 平均年齢 67.9 歳
E:統合失調症
C:双極性障害(BD)・大うつ病性障害(MDD)
O:5年死亡率(心血管障害(CVD)死亡率、非CVD疾患関連死亡率(感染症など)、自殺、および不慮の傷害)
T:前向きコホート
【結果】
29.4% vs 18.4% 
全死亡率:AOR:1.35(1.04-1.76)P=0.024
心血管死亡率 AOR:1.50(1.13-1.99)
抗うつ薬を服用中の場合
全死亡率 相互作用オッズ比 (IOR) : 0.42(0.22-0.79)P=0.008 
心血管死亡率 IOR:0.39(0.16-0.94)P=0.035
【コメント】
高齢者の統合失調症は、BDやMDDと比較すると全死亡率と心血管死亡率が有意に高い事が示された。その反面、抗うつ薬を使用しているとそれらの割合が減少傾向がある事が明らかになりました。 
高齢の統合失調症患者に対する抗うつ薬投与は、死亡率を減少させるのに役立つ可能性が考えられます。 ただし、abstract のみのためどの抗うつ薬の服用率が多いのかなど詳細については不明である。