お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

イベニティ皮下注の資料を読んでみたよ。CTCAE (有害事象共通用語基準)ってなんだろう?

イベニティ皮下注 (ロモソズマブ)

[適応]
骨折の危険性の高い骨粗鬆症

[効能又は効果に関連する使用上の注意]
1.
本剤の適用にあたっては、低骨密度、既存骨折、加齢、大腿骨頸部骨折の家族歴等の骨折の危険因子を有する患者を対象とすること。
2.
海外で実施されたアレンドロン酸ナトリウムを対照とした比較試験において、心血管系事象(虚血性心疾患又は脳血管障害)の発現割合がアレンドロン酸ナトリウム群に比較して本剤群で高い傾向が認められている。本剤の投与にあたっては、本剤のベネフィットとリスクを十分に理解した上で、適用患者を選択すること。

[用法及び用量]
通常、成人にはロモソズマブ(遺伝子組換え)として210mgを1ヵ月に1回、12ヵ月皮下投与する。

重度の腎機能障害患者(eGFRが30mL/min/1.73m2未満)あるいは透析を受けている患者[低カルシウム血症が発現しやすい

投与前
(1)投与前30分程度、遮光した状態(外箱に入れた状態)で室温に戻してから投与すること。
(2)激しく振とうしないこと。
(3)内容物を目視により確認し、変色、にごり、浮遊物が認められる場合は使用しないこと。
2. 投与時
注射部位は上腕部、腹部又は大腿部とし、同一部位への反復投与は行わないこと。皮膚が敏感なところ、挫傷、発赤又は硬結している部位への注射は避けること。

投与初期に骨量の増加によって、骨形成に対する需要が大きくなり血中Ca濃度が減少する可能性がある
→重度の腎機能障害者(eGFRが30mL/min/1.73m2未満)又は末期腎不全患者

 

何故、腎機能患者さんには注意が必要なのか?
腎機能低下の患者さんは、1,25(OH)2 ビタミン D の産生能が低下しうること+ロモソズマブ投与による骨形成の需要増加による血中Ca濃度の低下リスクが高まることを踏まえて、特に腎機能低下患者については注意喚起が必要となったと思われます。

 

また、RMP(https://amn.astellas.jp/jp/di/list/evn/rmp/rmp.pdf) では
国内外の臨床試験データ(20070337 試験、20060326 試験及び 20101291 試験)での低カルシウム血症は、プラセボ群 0/3689 例、ロモソズマブ群 1/3695 例に認められ、アルブミン補正血清カルシウム値でグレード 1 以上の低下した患者の発現割合はロモソズマブ群 0.4%(14/3695 例)、プラセボ群 0.1%(5/3689 例)でグレード 3 又は 4 の血清カルシウム低下が認められた被験者はいなかった。

と記載がありました。

 

何故アルブミン補正血清カルシウム値を見るの?
「低アルブミン血症ではタンパク結合Caが減るため血清Ca値は見かけ上低くなるので補正が必要となる。」
補正Ca濃度(mg/dL)=血清Ca濃度+(4-(血清アルブミン値))

 

グレードってなに? どこの概念?
米国国立がん研究所(national cancer institute;NCI)が作成した「有害事象共通用語規準」を世界標準で用いているようです。
グレード1~5で、数字が大きくなるごとに重症度が上がります。主にがんで使われているようです。
今回のCa値で見るならば、

CTCAE (有害事象共通用語基準)
grade1 軽症:治療を要さない
補正血清カルシウム<LLN-8.0 mg/dL; <LLN-2.0 mmol/L; イオン化カルシウム<LLN-1.0 mmol/L

grade2 中等症:非侵襲的治療を要する
補正血清カルシウム
<8.0-7.0 mg/dL; <2.0-1.75 mmol/L ; イオン化カルシウム<1.0-0.9 mmol/L; 症状がある

grade3 重症:入院を要する
補正血清カルシウム
<7.0-6.0 mg/dL; <1.75-1.5 mmol/L; イオン化カルシウム<0.9-0.8 mmol/L; 入院を要する

grade4 生命を脅かす
補正血清カルシウム
<6.0 mg/dL; <1.5mmol/L; イオン化カルシウム<0.8mmol/L; 生命を脅かす

grade5 死亡


今回は、グレード3、4の被験者がいなかったというのは、入院を有する人と生命を脅かす人が出なかったということでしょうか。

 

腎機能障害患者における安全性に対しては、
臨床試験における重度腎機能障害患者及び末期腎不全患者への投与例数が少ないことから重要な不足情報とした。

とありました。


現時点で、重症腎機能低下患者に対するデータが少ないので、慎重に投与する必要がありますね。

適応が、骨折の危険性の高い骨粗鬆症患者さんのため、対象患者さんが高齢の患者さんの可能性はあります。
その患者さんが重症腎機能低下までなっているかは不明ですが、加齢とともに腎機能が低下していることは予測されます。

低Ca血症については十分に注意をして服薬支援時に、アセスメントをしていきたいですね。

【症状】

(軽度だと無症状が多い)
筋痙攣

(血清カルシウム7mg/dL未満[1.75mmol/L未満])
反射亢進
テタニー(口唇,舌,手指,および足の錯感覚,手足および/または顔面の痙攣,筋肉痛)
全身痙攣


【参考】

ptweb.jp

 PharmaTribuneさんのページより。

http://www.jcog.jp/doctor/tool/CTCAEv4J_20170912_v20_1.pdf

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【イベニティ皮下注のRMP】

低カルシウム血症 - 10. 内分泌疾患と代謝性疾患 - MSDマニュアル プロフェッショナル版 MSDマニュアル