お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

エロビキシバット(グーフィス®)の承認審査資料を読んでみた。

今日はグーフィスの併売MRさん2社とも同日にいらっしゃいました。

下剤とは聞いていたが中身を読んでいなかったので、この機会にメモとして記録を残しておく。

 

承認審査資料ななめよみ

 

<用法用量>

通常、成人にはエロビキシバットとして10㎎を1日1回食前に経口投与する。症状により適宜増減するが、最高投与量は1日15㎎とする。

 

<製剤設計>

製剤は1錠中に原薬5.13㎎(エロビキシバットとして5㎎)を含有するフィルムコーティング錠である。

素錠:結晶セルロース(賦形剤)、ヒプロメロース(結合剤)、クロスカルメロースナトリウム(崩壊剤)、軽質無水ケイ酸(賦形剤)、ステアリン酸マグネシウム(滑沢剤)

フィルムコーティング層:ヒプロメロース(フィルムコーティング剤=胃溶性コーティング)、マクロゴール6000(滑沢剤)、酸化チタン(着色剤)、黄色三二酸化鉄(着色剤)、カルナウバロウ

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<作用機序>

回腸末端部の上皮細胞に発現する胆汁酸トランスポーター(IBAT)を阻害して、胆汁酸再吸収を抑制することで、大腸管腔内に流入する胆汁酸量の増加。胆汁酸は1:大腸管腔に水分増大、2:消化管運動促進

<国内第Ⅱ相試験> 

Determining an optimal clinical dose of elobixibat, a novel inhibitor of the ileal bile acid transporter, in Japanese patients with chronic constip... - PubMed - NCBI

~薬学用語解説より引用~

第Ⅱ相試験とは・・・主に治験薬の安全性および有効性・用法・用量を調べるための試験。第Ⅲ相試験を実施する際の、安全性、用法(投与の仕方:投与回数、投与期間、投与間隔など)、用量(最も効果的な投与量)を設定する目的が多い。

【PECO】

P:20歳~75歳未満の慢性便秘患者n=163、

C:エロビキシバット5㎎群(43例)、10㎎群(39例)、15㎎群(41例)を1日1回14日間朝食前服用

E:プラセボ(40例)

O:投与期間第1週におけるSBM回数の観察期間第2週からの変化量(SMB=下剤、浣腸または摘便なしに発現する排便(救済薬24時間以内の排便はSBMとしない))

無作為化二重盲検群間比較試験

脱落:9例(プラセボ1例、5㎎4例、10㎎1例、15㎎3例)

【結果】

SBM回数の変化量の最小二乗平均値の群間差

本薬5㎎:0.91(95%CI:-0.38~2.20)p=0.1629 →有意差なし

10㎎:3.00(1.36-4.64)p=0.0005 →有意差あり

15㎎:3.00(1.54-4.45)p=0.0001 →有意差あり

【副作用】

f:id:nitrotake8:20180208233037p:plain

f:id:nitrotake8:20180208233108p:plain
 承認審査資料より作成 ():症例数

有意差が10㎎で出たことより、1日1回10㎎が決定したと考えられる。


<第3相試験> 

~薬学用語解説より引用~

第III相・・・それまでに得られた有効性・安全性を大勢の患者によって確認する検証的試験

【PECO】

P:20歳以上の慢性便秘患者n=132、

E:エロビキシバット10㎎69例(1日1回朝食前14日間)

C:プラセボ63例

O:自発排便回数、2次アウトカム:自発排便までの時間、ブリストール便形状スケール

無作為二重盲検並行比較試験

多施設共同(16施設)

脱落:4名

~ここから追加~

2名(解析は67名→投与5日未満の中止2例は除外した)→観察期間第2週:投与期間第1週=プラセボ63例vs69例:63例vs67例 これで解析している。

 ~ここまで追加~

【結果】

SBM回数の変化量の最小二乗平均値の群間差

10㎎:4.69(95%CI:3.45~5.93)→有意差あり

<副作用>

f:id:nitrotake8:20180208233140p:plain
 承認審査資料より作成 ():症例数

 ~ここから追加~

第Ⅲ相試験の論文を探しましたが、社内資料のようで公開はしていない様子。

~ここまで追加~

 

うーん、いろいろな下剤が出ているのにも関わらずプラセボとの比較で承認資料ですね。大腸運動促進を効果としてうたっているので、大腸刺激薬との比較しても良かったんじゃないですかね?

『Elobixibat』でPubmed検索してみると15件ヒット 

f:id:nitrotake8:20180208234900p:plain

 

フルテキスト に絞ると4件

f:id:nitrotake8:20180208235134p:plain

メタアナリシスありました。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27287486

が、特に優れた薬剤はなかった模様。

今のところ、エロビキシバットを他の薬剤と比べて優先的に推す理由は見つからなかった。

 

***********追加 h30.3.18*****

ネットワークメタ分析 PMID:27287486
P:n=9189 機能性便秘の人、21個のRCT
E/C:プルカロプリド、ルビプロストン、リナグリチド、テガセロド、エロビキシバット、ビサコジル、NaP、Velustrag
O:プライマリアウトカム:自発的排便 CSBM/週、セカンダリアウトカム:ベースラインからの変化 CSBM/週

【結果】
3CSBM/週 
デガセロド以外の薬剤でプラセボと比較して優れたが、各薬剤間での有意な差はなし

1CSBM/週
プラセボと比較して優れたが、各薬剤間での有意な差はなし 
(エロビキシバットはここに含まれている)

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