お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

肝障害の人にアセトアミノフェンは使える?

ツイッターで挙げられていた

肝障害の人にアセトアミノフェンは投与できるのか?(PMID:26460177)より考える

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

アセトアミノフェン(以下AA)は肝障害を起こす。

AAが肝障害を起こす仕組みはいったい何だろうか。

 

AAは主にグルクロン酸抱合されることによって水溶性になり、排泄される。一部はP450によってNAPQI(N-アセチル-p-ベンゾキノンイミン)に代謝される。NAPQIは肝毒性が高いのです。このNAPQIが代謝されて解毒されるためにはグルタチオンが必要です。NAPQIが多く存在してグルタチオンが枯渇すると肝毒性は強く表れます。

そのグルタチオンが不足した時にAAによる肝毒性の時に解毒薬として用いられるのがアセチルシステインです。ほら「システイン」が含まれていますよね。グルタ「チオン」とアセチル「システイン」Sですよ。

 

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AAの過剰摂取はGSH枯渇させて、肝組織にタンパク質結合するNAPQIの形成を促す。(PMID:23462933)

AA肝毒性におけるタンパク結合が起こるのには肝GSHの約70%枯渇が必要である。グルタチオンはNAPQIによる求電子攻撃からの組織保護作用がある。(PMID:4746329)

 

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NAPQIは求電子攻撃性が高い。このことが肝毒性を高めている。

 

 <考察>

もしかして、肝機能低下と肝グルタチオン量低下は関連してこない?

肝機能低下する→P450による作用も低下

NAPQIの生成が低下

肝毒性が強く表れない

肝機能低下患者にもAAを投与すること可能?

AAは肝疾患病因にも関わらず、安全に有効な第一選択なのか?

ここで、

「慢性的なAAの摂取はUGT1A6を誘導する」

→グルクロン酸抱合能が増加→NAPQIの生成割合が相対的に少ない?→肝毒性の割合が少ない?

ならば、

肝毒性:慢性的なAA摂取<グルタチオン欠乏(不足)=栄養不足 

とすると、

多様な肝疾患患者において肝臓グルタチオン濃度が可変的に減少していないことは、肝疾患患者に「AA投与=肝毒性になる、肝障害になる」は崩れるだろう。

<参考>

PMID: 17963456
PMID: 3121344
PMID: 3732362
PMID: 3172971
PMID: 9625308
PMID: 11966508
PMID: 16252194
PMID: 17036398
PMID: 16404476
PMID: 17537264
PMID: 17706189
PMID: 18609067
PMID: 20398645

アルコールと肝毒性とAA

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AAからNAPQIを産生する時に用いるP450はCYP2E1である。

ここから、薬物相互作用も考えることが出来る。

たとえば、イソニアジドは2E1を誘導することが知られているが、その誘導によってAAに肝毒性が有意に増加するかは調べられていない。