お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

20191124 薬ゼミ講習会 総合診療を学ぶ~対物から対人へ 

患者中心の医療
<「対物から対人へ」の影響とは・・・?>
「患者中心」とは何か,説明できますか?
https://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03125_05
このサイトの図にある狭意義の「患者中心」
1-2 じっくり話せること、十分な知識を得られること

に対して私が感じた事としては、現時点で「忙しい」「回すだけで精いっぱい」の調剤薬局でどの位の事が提供できるのだろうか?ということです。

患者側の需要として
①じっくり話したい人
②端的でOKな人

薬局側の供給として
③端的な事で済ませられる人(済ませる事が可能と考えられる処方)
④薬識周辺からしっかり話さなきゃいけない人
⑤継続的なアセスメントが必要な人

に大まかに分けられると考えた場合、①と②の振り分け、③と④と⑤の振り分けを行って業務をする必要がある。

①と④と⑤にどの位の時間をかけられるのか?
かける時間をどう捻出するのか? が焦点だと感じました。

 

次に、
「患者個人の理解」というものについて
疾患:病気がもたらす病歴、身体診察、検査など客観的な情報
病:病気に罹患したり体調不良を覚える1人の人間としての患者が受ける様々な影響
があるとおっしゃられていました。

特に後者の意味を引き出す方法として、
感情:どんな気持ち?
期待:何を望む?
解釈:思い当たる原因は?
影響:日常生活で困っている? とのこと。

(再掲載 https://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03125_05)の図の時にも疑問に感じたように、これら4つを行うのは今の現場で行うためにはすぐには無理だと感じた。
では、何が必要なのだろうか?

 

問題点:早く投薬しろ!端的に済ませろ!
→では、なぜ「早く」「端的に」?
→(理由)混んでいるから、時間がかかるから

→①なぜ混んでいるのか?
→①Ⅰ:季節的な繁忙期 Ⅱ:集中率が高いから(門前、マンツーマンだから)
→①(対策)分散させる? 門前からの撤退? 面調剤へ移行?
→①厚労省の言っていた、病院の前の景色を変えるという意味に繋がる?
→①約6万件⇒約3万件の意味はココ???

 

→②なぜ時間がかかるのか?
→②調剤(ピックング)に時間がかかるから、欠品が発生するから
→②(対策)AIなど機械化の導入? 調剤補助の導入?(いわゆる0402通知?)

 

こういった側面から「対物から対人へ」の影響により、現在より時間をかけるべき人が外来で増えてくる。
その業務の質が変化することをいかに「好機」として捉え、今の環境をどこまで変えることが出来るのか?が今回のキーワードだなと感じました。

 

EBMとは言わなかったが・・・>
「患者個人の理解」と「患者背景の理解」の共通を見出し、患者と医療者の間において現時点で
①何が問題なのか?
②何を目標とするのか?
③互いの役割は何か? 
を確認・合意する必要があるようです。

特に②について、
立てて良い目標と悪い目標があるだろう。 
その中で患者に選択してもらうためには、なるべく良い=標準的な医療を提供できる目標を提示したほうが良いだろうと感じた。


「標準的な医療」という選択肢カードを患者の目の前に並べるためには、医療者が現時点で最も「標準的だろう」と考えられるカードを手札として持っていなければならないのではないだろうか?
手札をなるべく多く提示できるためには、文献を読むや症例を学ぶなどが良さそうだと感じた。

今回の講習会で、「EBM」や「ナラティブ」、「エビデンス」といったワードは出てこなかったが、
いくつかの文献を目の前の患者背景に当てはめて・・・と考えてみると、いわゆるEBMっぽい話だったのかもしれない。

 

ずらっと並べたので、ぐちゃぐちゃですね(笑)

普段やっている学習の方向性は今後の調剤薬局には間違ってないかも?と感じることが出来たので、続けて学んでいこうと思います。

長期のメトホルミンは心不全を予防できますか? 

長期のメトホルミンは心不全を予防できますか?
Int J Cardiol. 2019 Nov 7. pii: S0167-5273(19)34047-1
PMID: 31711850
【PECO】
P:T2DM + HT 心不全症候の無い N=490
E:メトホルミン投与あり N=130
C:メトホルミン投与なし N=360
O:HFpEFの新規発症の割合
6年の追跡、abstractのみ
【結果】
新規発症のHFpEF E群:6/130 C群31/260 P=0.020
COXハザード比 HR:0.351 (0.145 to 0.846) P=0.020
LV拡張機能と肥大の改善あり

f:id:nitrotake8:20191117233355j:plain

【コメント】
アブストのみなので、年齢層、性差、HbA1cなどが分からないので一概には言えない。
またC群はどの位の糖尿病歴があり、6年の追跡でどの位駆出率が下がったのかにも注目しておくと、今後の糖尿病患者の息切れなどNYHA分類などからのアセスメント
に役立つと思われる。 SGLT-2阻害薬と同様に、これからの日本の高齢化社会において心不全パンデミックが注目されている中での治療薬選択として気になった1報だと思われる。

DPP4-阻害薬とSGLT-2阻害薬と心不全

ここ最近で糖尿病薬と心不全の関連が自分の中で熱い

気になった&検索出来たものをまとめてみた。

 

<DPP4-阻害薬と心不全

アログリプチンは心不全リスクを増やさなかった(PMID:25765696 )

シタグリプチンはプラセボと比べて有意に心不全を増やさなかった(PMID: 26052984 )

シタグリプチンは心不全リスクに関与しているかも(PMID: 25499347)

シタグリプチンは心不全死のイベントに差は無かった(PMID: 27437883 )

シタグリプチンの使用は心不全入院に関連していた(PMID: 24998080)

ビルダグリプチンはLVEFに影響は与えなかったが、更なる追跡が必要(PMID: 29032139 )

リナグリプチンは心不全による入院を有意に増やさなかった(PMID:29301579)

ビルダグリプチンは左心室容積の増加をもたらしましたが、臨床的意義はこの時点では不明(PMID: 29032139)

サキサグリプチンは心不全による入院を増やした(PMID:23992601)

 

<SGLT-2阻害と心不全

エンパグリフロジンは心不全入院を減らした(EMP^REG OUTCOME )(PMID:26378978)

イプラグロフロジンの使用で心不全入院を減らした(PMID: 29479047)

カナグリフロジンは心不全症状の改善につながった(日本の研究)(PMID:31167663)

ダパグリフロジンは心血管疾患は減らさなかったが、心不全入院を有意に減らした(DECLERE-TIMI58)(PMID: 30415602)

ダパグリフロジンは糖尿病の罹患有無を問わず、慢性心不全転帰を改善させた(DAPA-HF)(PMID: 30895697)

 

DPP4-阻害薬の「心不全リスクを増やさなかった」と「心不全による入院を増やさなかった」は別物な気がしてきました。今後も報告を追って見ていく必要がありそうです。

 

SGLT-2阻害は、心不全だけでなく、軽度CKDなど合併症例での効果期待が持たれそうなきがします。また衝撃的に感じたのはDAPA-HFで糖尿病罹患に関わらず結果が出た事。 

 

あの、

ググったら青島先生の所覗いてしまいました…。 お、オマージュして簡潔に

https://note.mu/syuichiao/n/n8fd7db0f5e74

DAPT3か月後に単剤(チカグレロル)に切り替えたら出血は増えますか? PMID: 31556978

Ticagrelor with or without Aspirin in High-Risk Patients after PCI.
N Engl J Med. 2019 Sep 26
PMID: 31556978

【論文のPECO】

P:PCI治療を受けた患者の3か月後(チカグレロル+アスピリン済み) N=7119
E:チカグレロル+プラセボ(実質;チカグレロル単剤)
C:チカグレロル+アスピリン
O:(primary endpoint)学術研究コンソーシアムが作成した出血基準(BARC出血基準)に基づいた割合
(secondary endpoint)致死的でない心筋梗塞、致死的でない脳卒中による死亡率
【結果】
<primary endpoint>
4.0% vs 7.1% HR:0.56(0.45 to 0.68) P<0.001
出血基準について(参考:https://www.ebm-library.jp/att/content/term.html#BARC)

【コメント】
3カ月のDAPT後にチカグレロル単剤に切り替えても出血リスクは、DAPT継続に比べて少なかった。 

クラリスロマイシンやアジスロマイシンとCCBの併用は相互作用で副作用はありますか? PMID:24346990

Calcium-channel blocker-clarithromycin drug interactions and acute kidney injury.
JAMA. 2013 Dec 18;310(23):2544-53.

PMID:24346990
P:クラリスロマイシン(N=96226)とアジスロマイシン(N=94083)を新たに処方された高齢者 平均年齢=76歳
E:アムロジピン、フェロジピン、ニフェジピン、ジルチアゼム、またはベラパミルの併用
C:併用無し
O:急性腎障害(DKI)、低血圧および全死亡による入院
クラリスロマイシンとアジスロマイシン:CYP3A4の阻害薬
CCB:CYP3A4の基質

後ろ向きコホート試験
【結果】
クラリスロマイシン+アムロジピン
DKIによる入院リスク→2倍 OR:2.03(1.72 to 2.41)
低血圧による入院→1.6倍 OR:1.63(1.21 to 2.22)
総死亡率→1.7倍 OR:1.74(1.54 to 1.94)
<各薬剤間の違い>クラリスロマイシン併用vsアジスロマイシン併用
ニフェジピン⇒5.33倍 OR:5.33(3.39 to 8.38)
ジルチアゼム⇒OR:1.36(0.93 to 1.99)
フェロジピン⇒OR:2.97(1.09 to 8.06)
ベラパミル⇒OR:0.97(0.39 to 2.45)
【コメント】
クラリスロマイシンとCCBの組み合わせで、低血圧リスク1.6倍、DKIによる入院リスク2倍
そして、ニフェジピンとの併用でリスクが5.33倍になるのは要注意として覚えておきたい。

またNNH=160人ということで、160人に一人は副作用が発現する可能性があるのでモニタリング、組み合わせを注意しておいた方がいいと思われます。。
耳鼻科でこの時期(秋)は副鼻腔炎治療にクラリスロマイシンを良く使うので、血圧治療においてCCB(特にニフェジピン)を使っている症例があったら要チェックを!!

 

今回の文献は山本先生の書籍から学びを得ました。 

誰も教えてくれなかった実践薬歴

誰も教えてくれなかった実践薬歴

 

 

PCIをした後のDAPT療法は何カ月続ければいいですか? PMID: 25781440

Antiplatelet therapy duration following bare metal or drug-eluting coronary stents: the dual antiplatelet therapy randomized clinical trial.
PMID: 25781440
【論文のPECO】
P:N=11648 ステント留置後にDAPTが予定されている人 18歳以上
E:DAPT(=チエノピリジンアスピリン) BMS=842人 DES=5020人
C:プラセボ(=プラセボアスピリン) BMS=845人 DES=4941人
O:ステント血栓率、MACCE(総死亡, MI,脳卒中など)率
【結果】
ステント血栓症
0.41 vs 1.32 HR:0.31(0.19 to 0.50)P<0.001
総死亡率
1.87% vs 1.50% HR:1.31(0.97 to 1.75) p=0.07
MACCE
4.29% vs 5.74% HR:0.73(0.62 to 0.87)P<0.001


P:BMS後12カ月(1年)後の人達
E:(DAPT=チエノピリジンアスピリン)チエノピリジン(12カ月+18ヶ月=30カ月) N=842
C:(プラセボアスピリンプラセボ(DAPT12ヶ月後+プラセボ18ヶ月) N=845
O:ステント血栓率、MACCE(総死亡, MI,脳卒中など)率
【結果】
ステント血栓率:HR:0.49 (0.15 to 1.64) P=0.24
MACCE率:HR:0.92 (0.57 to 1.47) P=0.72

BMS=ベアメタルステント(金属性ステント)

DES=薬剤溶出ステント

DAPT=2重抗血小板療法

 

【結果】
BMSを使用した群で30カ月と12カ月に血栓やMACCE差は無かった。
しかし、DESを使った群では30カ月DAPTした群のほうが有意にイベントが減少した。
血栓 (0.4%対1.4% HR:0.29(95%CI 0.17-0.48))
MACCE (2.0%対1.5% HR 0.71(95%CI 0.59-0.85)) 

BMSなら患者負担等考慮して12カ月でもいいのかもしれないが、DESならば30カ月の方が良いかも。

この結果だけでDAPTの期間を判定をするのは厳しく、今回BMSのサンプルサイズ(母数)がDESに比べると少ないのは、結果に影響を与えている可能性もあるので、他の文献結果も併せて判断するのが良いだろう。

PCI後の抗血小板薬で、チクロピジンとクロピドグレルどっちが血栓を予防できますか? PMID:15988102

Randomized comparison of cilostazol vs ticlopidine for antiplatelet therapy after coronary stenting.

Circ J. 2005 Jul;69(7):780-5.

PMID:15988102
P:ステント留置術を受けたN=642
E:シロスタゾール+アスピリン
C:チクロピジンアスピリン
O:血栓症の発症率

【結果】
E群vsC群→2% vs 0.3% P=0.02
血管造影の特徴にベースラインからの差はなし
最小内腔直径有意差なし

【コメント】
PCI後の治療には再狭窄では有意差が無かったが、シロスタゾールはステント血栓症の発現率が高く、向いていないかもしれない。