今週のクリニカル・クエスチョン
1:抗凝固薬の投与指標に使われる、CHADS2スコア1点の患者にDOACは本当に必要ですか?
2:CHADS2スコアが0~1(低い)ときにはどのDOACが良いですか?
3:胃カメラで潰瘍など所見が無いが、胸やけ症状が続く人にはH2ブロッカーとPPIのどちらがいいですか?
4:バクタ配合錠はプレドニゾロンをどの位使用している人に使いますか?
そもそもMTXに葉酸を補充することは有効なんですかね?
MTXに対する葉酸またはフォリン酸の補充に対する系統レビュー(安全性と有効性について)
PMID:18945303
P:関節リウマチに罹患している19~78歳n=648
E:プラセボ257人
E:葉酸(198人)、フォリン酸(193人)
O:明確でない(肝臓、粘膜皮膚、血液)
研究デザイン:RCT
6つのRCTを分析した系統レビュー
データベース:コクランとMEDLINEとEMBACE(1990年~2007年の登録内容)
葉酸の用量:1日あたり1mg〜5mg(週に5〜7日)および1週間に1mg〜5mgの範囲
結果
肝障害:全体ARR-0.467(95%CI -0.358~-0.248)
葉酸補充群ARR-0.309(95%CI -0.512〜-0.105)、フォリン酸補充群ARR -0.389(95%CI -0.568~-0.209)
血液学的副作用:調査された集団におけるこれらの事象の発生率が低いため、正確に評価することができなかった。
結論
メトトレキサート投与における葉酸投与は肝副作用を減少させた。
感想
このレビューにおいて葉酸の投与量が低用量でMTXによる肝副作用が減少できて有効と考えられる。1980年代後半の報告では20㎎(注1)や45㎎(注2)と高用量を使用していた時はMTXの治療効果までも減弱させてしまうという結果が出ていたことから葉酸補充の投与量を模索していたと考えられる。これらの結果が低用量摂取によってMTXの効果を減らすことなく副作用を減らすことが出来たことは費用対効果としても優れているのではないだろうか。
注1:PMID:3050087
Concurrent use of folinic acid and methotrexate in rheumatoid arthritis. - PubMed - NCBI
注2:PMID:3260783
関連記事
関節リウマチの治療でメトトレキサートを使う場合に葉酸(フォリアミン®)を使いますよね。なんであの間隔を開けないといけないんでしょうか?
葉酸の作用を振り返りながらガイドラインを読み、まとめてみました。
5mg/週以下をメトトレキサート(以降MTX)最終投与後24~48時間後に投与する。通常フォリアミン®を使用。重篤な副作用発現時には活性型葉酸製剤ロイコボリン®を投与する(ロイコボリン®レスキューという)
ロイコボリン®の投与について
症状を伴う血球減少のような重篤な副作用発現時は、ただちにMTXを中止してロイコボリン®を投与。
※ロイコボリン®の1日投与量はMTX投与量の3倍程度を目安とする。
葉酸(フォリアミン®)
ジヒドロ葉酸
テトラヒドロ葉酸
ロイコボリン®
<クリニカル・クエスチョン>
葉酸投与はなぜMTX投与24~48時間後なのか?
A.MTX投与後の半減期の分布相以内の時間で投与すると効果が減弱した症例あり
→このことからMTX投与後2~3時間以内に葉酸を投与するとMTXの効果が減弱するといえる。
【半減期について】 リウマトレックスのインタビューフォームよりp23
ただ葉酸製剤とMTXとの投与間隔についての明確な結論はでていない。
【引用論文】
PMID:3260783
関節リウマチ患者7人、無作為、MTX10㎎、フォリン酸15㎎/回×3回、MTXによる悪心が減少、関節リウマチ症状悪化(7人全員)
PMID:768158
2重盲検、プラセボ対照、
P:関節リウマチ患者27人
E:プラセボ群:14人
C:フォリン酸投与群:13人
O:関節リウマチ症状の変化
結果:E群:統計学的に有意に悪化、C群:著しく悪化
今年もあと数日で終わりですね。
年末でもありますが、月末でもあります。 月末といえば麻薬や向精神薬、毒薬、覚せい剤原料の締めを行うところもありますよね。
今年も沢山麻薬を払い出したなぁ、あの患者さんもいたなぁと今年一年に思いふけながら数えていました。
それにしても麻薬の30日投与制限しっかりと確認していなかったなと反省し、まとめてみました。
こうやって見ると30日処方のほとんどは鎮痛ラダーの強オピオイドがほとんどですね。鎮痛ラダーってなんですかね?
*****************引用***************
「鎮痛薬の使用法」は、治療にあたって守るべき「鎮痛薬使用の5原則」と、痛みの強さによる鎮痛薬の選択ならびに鎮痛薬の段階的な使用法を示した「三段階除痛ラダー」から成り立っている。
<5原則>
①経口的に(by mouth)
②時刻を決めて規則正しく(by the clock)
③ 除痛ラダーにそって効力の順に(by the ladder)
④ 患者ごとの個別的な量で(for the individual)
⑤その上で細かい配慮を(with attention to detail)
第一段階:軽度の痛みに対し非オピオイド鎮痛薬(NSAIDsやアセトアミノフェン)を開始する。
第二段階:軽度から中等度の痛みに対し、弱オピオイド(コデインやトラマドール)を追加する。
第三段階:中等度から高度の痛みに対し、弱オピオイドから強オピオイド(モルヒネ・フェンタニル・オキシコドン・タペンタドール)に切り替える。この4種類のオピオイドで管理が困難な症例にメサドンを考慮する。
***********引用終了**************
3段階に分けて使い分けているんですね。
ちなみにオピオイドを副作用など用量に合わせて、使い分けて切り替えていく方法を「オピオイドローテーション」=「オピオイドスイッチング」といいます。
それにしても、タペンタドールが唯一30日投与制限の中に入っていないですね。14日投与制限の方に入っています。どうせなら30日にそろえれば良いのにとは思いますが。
モルヒネとコデインの関係性って忘れがちですよね。どっちからどっちに代謝するのか
コデインについては小児科学会で中毒などについて話題になりました。
12歳未満の小児に対するコデイン類含有医薬品の使用についてコメントがありました
http://www.jpa-web.org/blog/2017/06/20/111
厚生労働省のコメント→
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000168848.pdf 平成29年6月22日
https://www.pmda.go.jp/files/000218747.pdf 平成29年7月4日
参考になれば幸いです。
今年買った書籍は色々なものを含めて60冊越え(まだ増えそう)です。
主に漫画。。。ばかりじゃないよ
今年は書籍を書いた先生方に会う機会もあり気持ちがホクホクでした。そんな中で気に入っている書籍を紹介しちゃいます!!
まずは
薬局で使える実践薬学
対話形式になっているので、話が分かりやすい。また添付文書だけじゃなくインタビューフォームも一緒に見ているので情報量がとても豊富。
どんぐり未来塾の薬物動態
薬物動態についてどんぐり未来塾などという単語を耳にしてから気になっていた一冊です。 個人的には副作用の添付文書の読み方考え方が非常に勉強になりました。
読んだときだけじゃなく、実践して対応していくためには訓練が必要ですが繰り返していかなければいけないところだなと肝に銘じています。
薬の比較と使い分け
いわずもがな、各学会で売り上げがすごい!!と噂の本です
児島先生はすごーく人あたりが良くて一緒にご飯食べましたね
おっと、本の紹介をしなくては
意外に比較ができているようで出来ていない薬だったり、普段何気なく切り替えを行っている薬たちの根拠って何なのだろうという疑問を紐解くきっかけになりうる本です。
現場の人も復職を控えている人にもオススメの一冊
患者指導のための剤形別外用剤
同じく日本薬剤師会学会in東京で目について購入したものです。
外用剤って普段触ったことのある薬ならささっと説明が出来るかもしれません。
普段触らないもの、久しぶりに触るもの、深く聞かれたときに意外と知らない使い方ありますよね、そういう時見てみるといいかも
レシピプラス よく出る漢方ABC
漢方はいろいろな意味で使い方があります。 適応上の部分、傷寒論、陰陽説
難しいですが、こんな使い方もあるという一例として読んでみても面白いのではないでしょうか
レシピプラス 妊娠期のマナートラブルとくすり
レシピプラス Vol.16 No.3 妊娠期のマイナートラブルとくすり
妊娠や生理について起こりうるトラブルに触れることができる一冊
Dr.徳田の診断推論講座
いや、薬剤師だし、こんなの読んでミニドクターやるんか?と思われますが、多職種が何を考えているのかこれからの多職種連携には必要です。
特に医師はどんなことを考えて処方せんを出しているのか?どのような部分を診ているのか触れることも患者とのコミュニケーションに必要ですよね
今年は様々な書籍が発売されました。薬剤師界隈が盛り上がってきたのではないでしょうか?
来年はどんな書籍がでるのか、どの先生に会えるのか楽しみです
スタチン系薬の相互作用がフワっとしたままでよくわかっていない&iPadProで絵を描いてみたかった この2点でやってみました
<疑問>
スタチン系薬の相互作用で血中濃度が変動するのは知っている。
グレープフルーツジュースと一緒に飲んではいけないのは知っている。
最近話題になっている?OATP(トランスポーター)って結局どこをどうしているのか分からない。
どの薬物との相互作用が吸収?代謝?に関与しているのかイマイチだ。
参考
シンバスタチン:CYP3A4、OATP1B1、グレープフルーツジュース(以下、GFJ)、アゾール系抗真菌薬、エリスロマイシン・・・添付文書より
アトルバスタチン:CYP3A4、シクロスポリン、エリスロマイシン、アゾール系抗真菌薬、GFJ・・・添付文書より OATP1B1・・・インタビューフォームより
ピタバスタチン:CYP2C9、シクロスポリン、エリスロマイシン、リファンピシン、OATP1B1・・・添付文書より
プラバスタチン:シクロスポリン・・・添付文書より OATP・・・インタビューフォームより
ロスバスタチン:シクロスポリン、アゾール系抗真菌薬、エリスロマイシン・・・添付文書より OATP・・・インタビューフォームより
ついに日本でもルパタジンが先日発売になりましたね。
抗ヒスタミン作用と抗PAF作用が売りらしいです へー
有効性はまぁ。。。あれでしょうと思って安全性を見た論文がありましたので読んでみました
***************
PMID:27632557
<論文のPECO>
P 27人の日本人、平均年齢27.67歳
E ルパタジン 10㎎と20㎎、40㎎
C プラセボ
O 安全性(有害事象)
一次アウトカムは明確か?
→不明
真のアウトカムか
→わからない
盲検化されているか
→されている double-blind(Methodsより)
追跡率
61人被験者→28人基準満たさない+6人拒否→27人全てを無作為に割り付けた
27人全員完了した=追跡率100%と判断
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重篤な有害事象(SAEs) 治療上の有害事象(TEAEs)
安全性評価ではすべての治療に関する副作用は軽度
10~40㎎にわたって用量依存的に増加する→何が?
◎10㎎投与群→①軽度の強迫感、②悪心(1日目)→腫脹(8日目):TEAEs
◎20㎎、40㎎投与群→なし
・最初AUCを見た時に40㎎群で一気に上がっているので、非線形を示す薬物なのかなと思いましたが、IFを見てもそのような記載はないので、線形性薬剤であると思われます。
・n数が少ない
・日本人データ
・プラセボと比較
以上です。 ここまで読んで頂いてありがとうございました。