お薬のこと

お薬に関するメモやクリニカル・クエスチョンを中心に載せていきます。皆様の学習のヒントになれば幸いです。

論文検索を中心としたワークショップ

今回、論文検索方法を中心に行うワークショップに参加してきました。

今回の内容のポイントとして、論文検索データベースの特徴を知ることで、目的にあった論文にたどり着きましょう!という意図を感じました。

 

はい、質問!! “よく使うデータベースって何ですか?”

PubMedでしょ! と思っていたのですが、そこが根本的に間違っていました。

PubMed検索エンジンでした よく用いるのだとGoogle先生ですね

このように検索の入り口を「検索サービス」という表現。

 

じゃあPubMedはどこを探しているの?ってことになりますよね

探しているのは「MEDLINE」。これは言わば本です。論文が載っている分厚~い辞書

このMEDLINEを「データベース」と表現。

やっとたどり着いた!!

つまり“MEDLINEという本をPubMedという検索エンジンで探している”

これが普段行っている“パブる”“ググる”って行為

 

そうなると1つの本ばかりを捲っても同じ論文ばかりしか出てこない。目的にあった論文が出てこないことが起こることが考えられます。

そうしたらデータベース=本を変えればいいんです

例えば、よく用いられるのが「EMBASE」ですね。 基本有料なので個人では厳しいかも

 「EMBASE」の検索エンジンは「EMBASE」らしいです。分かりやすいような分かりにくいような。。。

 

で、英語!!!!

英語が読めないなら、Google翻訳しまくる

あとは①循環器②抗血小板療法③糖尿病にかかわる部分を調べたいならば、各トライアルデータというのがあります。 ここは大まかな導入としては日本語なので、ここから入っていくのも1つの手です。

 

また、最近は様々な先生方の手で翻訳されているコクランライブラリーもあります。ただ翻訳されている文献には限りがあるので、探しているものはやっぱり英語だったなんて経緯もあると思われます。

 

ざっくりと自分の備忘録も含めて書かせていただきました。

ここまで読んで頂いてありがとうございました。

NASH(非アルコール性脂肪肝炎)にビタミンEは有効ですか?

ウルソの事を調べていたら、NASHこと非アルコール性脂肪肝炎にたどり着きました。

そういえば国試の勉強でもちらっとしか触れていないなと思い出し、治療法って何だろう。。。

そう思い、まずはガイドライン検索

「NAFLD/NASHガイドライン20014」がヒット

治療法を見てみると、ビタミンEエビデンスレベルA、UDCA(ウルソ)がエビデンスレベルB、チアゾリジン系誘導体(ピオグリダゾン)がエビデンスレベルA

あれ?ここでもまたピオグリダゾン出てくるんですね

そしてビタミンEが意外な存在でした。本当にそうなんでしょうか?

少し疑問が湧いてきたので論文を検索。

 

Pioglitazone, vitamin E, or placebo for nonalcoholic steatohepatitis.

PMID:20427778

Pioglitazone, vitamin E, or placebo for nonalcoholic steatohepatitis. - PubMed - NCBI

【論文のPECO】

P:平均年齢46.3歳の2型糖尿病ではない非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を患っている人(n=247人)

E:①ビタミンE(800IU/日)を投与する場合と ②ピオグリダゾン(30mg/日)を投与する場合と

C:しない場合では(プラセボと比べて)

O:肝臓の組織学的改善はしますか?

 

ランダム化されているかーされている

1次アウトカムは明確化かー明確である  

真のアウトカムかー 真のアウトカム(ココ少し自信がありません)

盲検化されているかー二重盲検化されている

ITT解析されているかーされている

追跡率ー全員追跡とみられる(Figure1を見ると各薬剤最後まで追っているよう)

【結果】

Bonferroni法でP値0.00250.025未満を有意差とした

         0.05(有意水準)/2(検定数)=0.025

<primary outocome>

プラセボビタミンE=19%:43% (P=0.001)NNT=4.2

プラセボ:ピオグリダゾン=19%:34% (P=0.04)NNT=6.9

 

【感想】

主要なアウトカムだけ書き出してみました。

この結果では確かにビタミンEは有意差が出ています。

NASHの原因に酸化ストレスによって線維化が進むということがあるそうなので、抗酸化作用を狙ったと言ったところでしょうか

ユベラ®ってこういうところにも使われていたんですね。

 脂溶性ビタミンのためいくらビタミン製剤でも投与しとけば良いという考えにはなうりませんが、こういった有意差のある結果がエビデンスがあるならば、積極的に使用しても良いと思います。

 

 

ちなみにこういう論文もありました。

NASHにウルソデオキシコール酸(UDCA)+ビタミンE

Randomized placebo-controlled trial of ursodeoxycholic acid with vitamin e in nonalcoholic steatohepatitis.

Randomized placebo-controlled trial of ursodeoxycholic acid with vitamin e in nonalcoholic steatohepatitis. - PubMed - NCBI

 PMID:17162245

時間があれば読んでみます。

DPP4阻害薬は骨折リスクを増加させますか?

糖尿病トライアルデータベースで気になるものを見つけました。

ピオグリダゾン(チアゾリジン系)がPPARγを介して、腎尿細管の近位と遠位でNa再吸収を促進させて浮腫を増加させる

また女性にPPARγの発現が高いことが、女性にピオグリダゾン投与すると浮腫が多い原因になっているのかも?

 

ここまで調べていたら

チアゾリジン系のインスリン抵抗性改善薬は,骨折を増加させることが知られている。一方,GIPは骨芽細胞を活性化し,GLP-1は齧歯類の骨減少症を伴うモデルでは骨密度を増加させることが報告されており,DPP-4阻害薬は骨代謝を改善し骨折を減少させることが期待されている

Driessen JHM, et al. | 糖尿病トライアルデータベース より引用

と記載を見つけました。

そこにある論文がメタ分析でした。

メタ分析に挑戦してみようと!

 

PMID:27321347

P:EMBASE、MEDLINE、EMA、WHO ICTRPデータベースを用いたn=36402

E:DPP4阻害薬を服用するのと

C:服用しないのでは

O:骨折リスクは増えますか?

【結果】

DPP4阻害薬vsプラセボ→OR:0.82(0.57-1.16)

DPP4阻害薬vs活性型比較→OR:1.59(0.33-2.80)

 

PMID:22025784

P:n=9175のメタ解析

E:DPP4阻害薬を投与するのと

C:①プラセボと比べると ②SU剤投与と比べると

O:骨折リスクは増えますか?

【結果】

DPP4阻害薬vsプラセボ→OR:0.60(0.37-0.99)

DPP4阻害薬vsSU剤→OR:0.56(0.33-0.93)

 

PMID:27943565

P:インスリン以外の糖尿病治療薬が使用された18歳以上の2型糖尿病患者n=328254(DPP4阻害薬使用:46355例)

E:DPP4阻害薬を投与した糖尿病患者と比べて

C:他の治療薬を用いた糖尿病患者は

O:骨折リスクは高いか?

【結果】

DPP4阻害薬使用のすべての骨折リスク:HR:0.99(0.93-1.06)

DPP4阻害薬4.0~8.5年使用した患者の骨折リスク:HR:0.99(0.70-1.41)

4.0~8.5年使用した患者の骨粗しょう症の骨折リスク:HR:0.75(0.52-1.09)

4.0~8.5年使用した患者の股関節骨折のリスク:HR:1.24(0.85-1.79)

 

骨折リスクを真のアウトカムと判断するべきなのか迷いました。

骨密度やYAMとかならば代用アウトカムと判断しますが。。。

 

3つの結果を読むと、骨折リスクを上げることも下げることもないと思われます。

(有意差ないので)

インクレチンのうちGIPが骨芽細胞を刺激し骨形成を促進、またマウスレベルではGLP-1はカルシトニン分泌を促し骨吸収を抑制するそうですが、ヒト、サルでは血中カルシトニンを増やさないという話もあるようなので、

 

骨折リスクの高い糖尿病患者にDPP4阻害薬を積極的に使用してもよいのかもしれません。

 

 

 

ツールを使って服薬指導をしてみました。

臨床推論に記載されている「OPQRST」というツールを用いて患者に聞き取りを行ってみると薬歴が書きやすくなるのだろうか?

と疑問に思ったので実行してみました。

 

ある日、臨時で頭痛がするので受診をしたという患者さんが処方せんをもってやってきた。

処方内容は、SG顆粒 14回分

 

さて「OPQRST」ツールを使って症状の確認をしてみました。

O:急に?いつも?→最近痛む

P:どうしたら楽になる?→特にない

Q:どのような痛み?→ズキズキする痛み

R:その痛みは広がる?とどまる?→右側の頭だけ

S:どの位つらい?→今までもあった痛み

T:1日の中で変化ありますか?→痛いときとそうでない時がある

 

こんな感じでした。

これで考えていくと、その患者さんの頭痛は人生最悪の痛みではないようだし、今までに経験したことのある痛みでした。

頭痛で最悪の事を考えて鑑別に挙げられるものは

くも膜下出血

髄膜炎

脳出血

④高血圧緊急症

⑤高血圧切迫症

 

①は頭痛時に瞬間的なショックがあることが多いので、経験のある頭痛は当てはまらないだろう。

②は項部硬直が有名なサインだ。首が固くなって動かしにくい。今回はここを聞き取れていない。

③は原因の60%くらいが高血圧によるものだ。これが起こると片麻痺共同偏視、頭痛が起こるが、この患者さんにその所見は見られなかった。

④は脳浮腫や血圧の左右差、多臓器障害として背部痛、頸動脈怒張などがみられる。この症例に当てはまったときは降圧処置が必要なそうだ。

⑤は④と似ているがどうやら多臓器不全の(-)がサインのようです。急激な降圧処置を行うと脳梗塞を引き起こす可能性が高くなる。

 

①~⑤の症状に当てはまる部分はないので医師も緊張性頭痛あたりを考えたのだと思われる。

 

そこで服薬指導として患者に伝えられることとしては

「今までと違う頭痛がきたらすぐに医療機関を受診すること」

これが目の前の患者さんに必要な指導かなと思い伝えました。

 

SOPAにしてみると。。。

S:ズキズキとする右側の頭が痛いため受診。

O:SG配合顆粒 頓服 14回分

A:経験済みの頭痛(+)→くも膜下出血髄膜炎(-)。共同偏視片麻痺の所見(-)→脳出血(-)。以後の頭痛でくも膜下出血など起こる可能性ゼロでないため違う頭痛時、受診勧告必要。

P:1回1包頭痛時にお飲みください。継続する場合はは4~5時間開けて服用しましょう。今後の頭痛で、今までに経験したことのない頭痛や吐き気、呂律が回らないなどの症状があれば医療機関をすぐに受診してください。

 

たった1症例で1剤だけですが、考えて聞き取りして鑑別して次へ繋げていくことが出来ますね。

これは続けていきます。

 

参考書籍:ここからはじめる!薬剤師のための臨床推論p33-45

※患者さんの情報の一部分は付け足したものです。完全に同じものではありません。

 

 

NOAC(DOAC)をまとめてみました。

各薬剤がごっちゃになってしまっているので、これはいかんと思い一回自分の中で明確化するためにもまとめてみました。

抗血小板療法トライアルデータベースを参考にしました。

f:id:nitrotake8:20171201190603p:plain

更新h29.12.1

リバーロキサバンとダビガトランVSワルファリン 死亡率を比較してみた

P:心房細動を有する患者に

E:リバーロキサバンもしくはダビガトランを投与する場合

C:ワルファリンを投与する場合に比べて

O:死亡率は下がるのか

 

結果

  リバーロキサバン ワルファリン ダビガトラン ワルファリン
脳梗塞/全身性塞栓症

3.07%

5.62%

3.65% 5.71%
頭蓋内出血 0.77% 2.47% 1.00% 2.27%
全死亡率

3.30%

(2.31-4.28)

7.05%

(5.77-8.32)

2.65%

(2.30-3.28)

6.67%

(5.67-7.67)

(注)リバーロキサバンVSワルファリン、ダビガトランVSワルファリン

 

<全死亡率のハザード比>

ダビガトランVSワルファリン→0.40(95%CI:0.30-0.52)(P<0.0001)

リバーロキサバンVSワルファリン→0.47(95%CI:0.33-0.67)(P<0.0001)

 

上の2剤は、ワルファリンと比べて有意差があると言える。

 

感想

有意差のある論文が揃ってきましたね!!

ちなみにリバーロキサバンVSダビガトランの比較結果載っています。有意差は出ず同等という表現であっているのか不安ですが同じくらいと言えそうです。

 

PMID:27659460

新年一発目の論文読みました。ルビプロストン

慢性非がん性疼痛を有する患者におけるオピオイド誘発性便秘に対するルビプロストンのランダム化比較試験

 

腹部膨満感(P=0.047)

ひずみ(P<0.001)

便秘重症度(P=0.007)

便秘粘稠度(P<0.001)

これらの項目はプラセボと比較して有意に高かった。

 

有害事象 ルビプロストンvsプラセボ

悪心(16.8%vs5.8%)

下痢(9.6%vs2.9%)

腹部膨満感(18.2%vs2.4%)

 

ルビプロストンはOIC及びそれの関連する徴候や症状を効果的に緩和して、慢性非がん性疼痛を有する患者において十分な耐容性がある。

PMID:24716835

<感想>

がん性疼痛の論文だけでなく非がん性で調査をした論文があったのですね。

確か8週間と12週間で見ていまして、この位の期間で便秘症状の緩和が見られたら排便するのも億劫にはならないかもしれませんね。

ここの論文では出ていませんが、基本的に1日2回で出すところを軟便傾向の患者さんには1日1回でも十分効果出ているそうです。

個人的には、一包化出来ないのがたまに傷なのかな?

カマなどの今までの便秘薬では飲んだり飲まなかったりするためヒートで調剤するパターンを見てきましたが、ルビプロストンは継続して飲むことで効果を得ているんですよね。

既存薬よりも電解質と大腸メラノーシス気にしなくていいところ。選択肢に入れるべき

 

もっとエビデンス揃うといいですね。